第11話 マイスイートハニー
俺が所属しているのは、都内にあるトレジャーキックボクシングジム。室町結衣ちゃんは、そこの会長の一人娘だ。
年相応というか柔和な顔立ちをしていて、綺麗な黒髪をフワリと結った美少女である。
彼女は小学生の頃からジムに遊びに来る娘だった。少しだけキックボクシングを教えて以来、俺の事を先生と呼んで慕ってくれている。
東京に越してきて以来、よく世話を焼いてくれるありがたい存在だ。
「私は
「私は美谷華恋……ダーリンの婚約者よ!」
仁王立ちの結衣ちゃん。対する美谷さんも胸を張ると、威風堂々としたいつもの態度で言葉を発した。
「ダーリン!いつも通り、マイスイートハニーって呼んでちょうだい」
「うん。記憶の捏造は止めようね。一度も呼んだことないから」
そんなやり取りを見た結衣ちゃんは、小さな手を口元に当てると、
「ぷーくすくす。先生のストーカーさんでしたかあ。怖いですねえ?家の中まで入ってきて」
全力で美谷さんを煽っていた。
「キイッ〜!」
顔を真っ赤に染め上げる美谷さん。効果は抜群みたいだ。地団駄を踏みながらメッチャ悔しそうにしている。
「そうでした!先生、お腹空いていますよね?直ぐに準備しますのでお席で待っていてくださいね」
「あ、うん。ありがとう」
「デザートには、先生が大好物のずんだ餅をご用意したんですよ」
「それは嬉しいなあ。誰かからのお土産かい?」
「いえ、私の手作りです。だだちゃ豆を戴いたので頑張って作ってみました」
「ええっ!凄いなあ。あれって家庭で作れるものなんだね」
「えへへ~。お口に合うといいんですが」
照れたように笑う結衣ちゃん。可愛い。
「ちょっと!私を無視しないでよ」
「ごめんなさい、美谷さん。私達二人分のお食事しか用意出来ていなくてえ……あっ!お茶漬けなら直ぐにご用意出来ますよ?」
「こ・ん・の!JCがあ〜っ!!」
ギリリ!と歯軋りする美谷さん。お茶漬けは苦手なのだろうか?
「ふんっ!あなたみたいな子供にダーリンの凄さが分かってたまるもんですか。子供はさっさと帰って寝なさい」
「分かりますう!……先生は凄いんです!結衣が攻めると、嬉しそうにガチガチに固くするし。『疲れてもう無理です』って言うと、硬くて太いのでグングン攻め立てて来んるですから!」
「ひいっ!中学生になんてことを」
「キックボクシング!練習での話だからね!固いのはガードで太いのは手足とかだよ!」
結衣ちゃん、絶対に狙って言ってるだろ!?
彼女を見ると、ベロベロバア!と美谷さんを煽ることに必至みたいだ。おかしいな?誰に対しても礼儀正しくて優しい女の子なのに。
「いいわよ!分かったわよ!」
ヒステリック系JKの美谷さんは、そう言うとポチポチとスマホを操作しだす。
「出口はあちらです。ほら!早く出ていってください」
「な、何すんのよ!?」
「ちょ、ちょっと結衣ちゃん。流石に可哀想じゃあ」
結衣ちゃんは顔を真っ赤にしながら、美谷さんの背中をギュウギュウと押して扉へと誘導しようとしていた。
そんな結衣ちゃんを宥める為に頭をポンポンする。
「ふにゃ〜」
可愛らしい声をあげながら、グリグリと俺の掌に頭を押し込んできた。
「落ち着いた?」
「は……まだです。もうちょっとです」
「そっか~。もうちょっとかあ〜」
「はい!」
結衣ちゃんの小動物のような可愛さに、俺の頬が緩むのは必然と言えるだろう。そんな時だった。
ピンポーン。とチャイムが鳴り俺は扉へと向かう。
「はーい。どちら様でしょうか?」
扉を開けるとそこには……真っ白なコックコートに身を包んだ男達がいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます