起死回生のユートピア

こきんてす君

第1羽:日常

毎朝、5:55分起床。高層ビル87階から見下ろした理想郷は清々しいほどの朝を迎えていた。


「躊躇うと、あなたも堕ちる」


政治家が謳うメッセージである。

今は理想郷とも呼ばれたカイロス社が送る真乃罪まことのつみという場所。

自分が生きていきた中で一番の罪の部分からやり直せるという場所である。


ある日の朝、アラームが部屋中に鳴り響く。


「5:55分か。起きなければ」


渋々ベッドから体を起こし、朝の朝食はトーストにコーヒーを1杯。

モーニングルーティーンが終わりだした7:00に部屋を出た。

アパート1階のポストを確認する。


「いつも通りのZoOMの宣伝と、不動産による土地価格関係。そして……宗教はもう捨てておくか」


しかし、いつもこの時間は優雅な新聞タイムのはずである。

人口減少のため新聞が今日から無くなってしまった。

なので、ずっと気になっていたポストの中を整理してみることにした。


「すみません、御宅のお家への郵便物がありまして……」


配達員が申し訳なさそうにこちらの様子を伺っている。


「今受け取りますよ?」

「あぁ、ではこれをどうぞ。あと、補足ですが人がいないとこで開けてくださいね」


私は、一度部屋に戻り封を切る。

そもそも、人がいないところの時点で、明らかに普通の手紙の内容ではないだろう。

しかし、長いな……読み上げるか。

 

「我々は貴方がZoOMを受けてないかつ、人間のサンプルや判断基準に適しているとしてあなたは真乃罪での人選び役員として働くことを強制します」


一般人として理想形であるから今の仕事は辞めてこっちに来いって言う事だよな?

はぁ、一気に環境変わると慣れないんだよな。でも、あのカイロスからの直々な話だもんな。

 

そういえば、なんでZoOMは受けなかったんだっけ?嫌いすぎて受けてないのもあるんだけど、どういう内容か忘れたな。


「ZoOMとは……人間の体から解き放たれ、Zomとして生きることになります。具体的な生き方は、好きな動物や好きな人の容姿になれることです」


自分の体に納得がいかないのなら精神離脱して、

好きな見た目の人や動物に精神として溶け込む。


ZoOMは、現在人口の4割を占める勢いで人気なんだよな。


しかし、真乃罪ではZoOMを受けてしまうともう過去には行けないのだとか。

 

まぁ、一度この説明をする前に身支度をしよう。職場になんて連絡すれば良いのやら

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