覚書 2025年8月26日
一昨日―つまり24日に、わたしは母に、聞かなくてはいけないであろうことを幾つか確認しました。母はかなり意図的に情報を伏せていたらしく、気まずそうに、それでもきちんとすべてを話してくれました。
第一に、叔父の死因です。これはある程度わたしの想像を裏切らない内容でした。自死です。異臭騒ぎにより2022年8月19日発見された叔父は、その後の鑑定を通じ2022年7月28日に死亡したものと判断されたようです。
わたしの予想と異なっていたのは叔父が発見された場所です。きっと一階の寝室だろうと思っていたのですけれど、叔父が見つかったのは二階の一番南の―ベランダと隣接している―部屋だったそうです。つまり、寝室からは最も離れた部屋です。
第二に、叔父と事件の繋がりです。母は当時の事件のことをよく知らないようでしたが、中埜宮小学校の名前を聞いた途端得心したように、教えてくれました。
叔父は、中埜宮小学校の教師―それも、事件当時の3年生の担任―をしていたそうです。これは想像の域を出ませんけれども、やはり、叔父は当時行方不明になった子どもたちの担任をしていたのだろうと思います。
そうやって、たっぷり話してくれたあと、母は些か沈んだ声色で、すぐ帰ってきてもいいからね、と言って、そうやって通話は終わりました。わたしはその時漸く、何故自分が―自分一人だけがこの家に寄越された理由を知りました。いや、別にそれに対する怒りなんかはありませんでした。父も母も仕事で忙しい身ですし、仮にほんとうに何もなかったとしても、わたしが優先的に駆り出されていたでしょうから。
―そうではなくて。わたしの感じている苦痛は、ここで叔父が死んだという事実に向かうものではありません。そうではなくて、自分の脳のどこか微かなところで描いていた妄想が、熱のある輪郭を帯び始めていたことが。そのことが、どうしようもない、不快感に満ちていました。
それで、もう流石に帰ろうかと諦めたのが昨日の夕方です。突発的な大雨が降りしきる中、寝室でぼんやりとスマートフォンを眺めていた最中です。一昨日の夜は、母から聞いた話もあってよく眠れなかったものですから、うつらうつらと転寝に至ったのだと思います。
夢を見ました。短い夢です。
子どもは、女の子は、「おーい」とは言いませんでした。
至極穏やかな声で言いました。
「あの日もこんな雨だったんだよ」
と。
目を覚ましました。こんなことを言われたら、もう、そうでしかありえないじゃないですか。
夏休みはあとひと月とありますけれど、もう、帰ることにしました。
そうして今日、つい先ほど、自分の荷物をまとめて。スクラップブックは破棄しました。あれは、今思えば、ながいながい、強迫と、いいわけと、懺悔のためのスクラップブックでした。もう、必要ないと思いましたから。
愈々空っぽになった部屋の中で、最後にと、この文章を書きました。それで、少しの間、これまでの出来事を振り返ってみました。
―あの夏休みに何が起きたのか、酷く不明瞭で、もしかしたら人知を超えた現象がそこにはあったのかもしれません。―でも、その発端は何だったのか、何がきっかけだったのかは、もうわかっています。
ただ、だとして、わたしはそれを告発しようとか、どこかへ訴え出ようとか、そういうことは考えていません。
大丈夫だと思うんです。
なんとなく、わたしが何をせずとも、まあ、きっともうすぐ、なにがあったかは明らかになると。そう思っています。
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