「京都府中埜宮市児童連続行方不明事件」に関するスクラップブック
むしやのこどくちゃん
はじめに
はしがき
これより掲載する文書はいずれも、わたしの叔父にあたる人物が作成していた、とあるスクラップブックより引用したものになります。先に、このスクラップブックを入手した経緯について説明し、それをはしがきとさせていただきます。
叔父の死後、彼の遺言により手つかずだったその一人住まいが、近隣の道路拡張による立ち退き要請により解体されることになりました。叔父は独り身で、彼の姉にあたるわたしの母が、彼の家に関わる権利の一切を有していましたから、その片付けについてわたしに白羽の矢が立ちました。
一人住まいである彼の一軒家(これは元々、母方の実家だったそうですが)、は酷く整然としていて、なにか居心地が悪かったのを覚えています。二階はほとんど使われておらず、物も多くありませんでした。残されていた多少の玩具は、母や叔父が子どもの頃に使っていたものとのことで、殆ど処分となりました。
問題―というか、つまり、件のスクラップブックを見つけたのは一階でした。利便性の問題からか、叔父の生活圏は殆ど一階だったようで、整えられてはいるものの強い生活感が残っていました。
スクラップブックを見つけたのは、一階の寝室として使われていたと思しき北側の部屋です。叔父は博聞の人と聞いていましたが、壁際に狭しと押し込められたその本棚を見つけたときは、すこし驚いたものです。
大半は彼が仕事のために集めた書籍であったように思えます。ただ、その一角に、例えば大衆的な雑誌であるとか、古い新聞の束であるとか、そういった少し風変わりな―というか要するにその場にそぐわないような―ものがまとめられている箇所がありました。
スクラップブックは、そこにありました。
母に何か知らないか聞いてみましたが、詳しいことは何も知らないようでした。母はあまり実家と折り合いのついていない人のようでしたから、仕方のないことかもしれませんが。
スクラップブックには、20年ほど前に起こったと思われる、とある事件に関する情報がまとめられていました。細かく、細かく。信憑性のなさそうな、くだらない内容まで丁寧に。
わたしは、その内容についてここに公開することにしました。叔父の執念が、解体に伴って完全に失われてしまうのは悲しいことですし、なにより、この事件は未解決だということですから、広く知られるべきだと思いました。
あの夏休みに、何が起きたんでしょうか?
何がきっかけで、こんなことになってしまったんでしょうか?
叔父のスクラップブックを手に取るほどに、それらの疑問が浮かんで、尽きません。
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