第19話 気持ちを確かめ合って

「どうだ、冒険者生活は? お忍びをしなくてよくなった分、昔を思い出さないか?」


「どうかな? 確かに不穏な気配は感じなくなったけど。まだわからないわよ?」


 もしあの噂が風間の罠だった場合、安心するのはまだ早いとオウナは言う。

 確かにな。

 けどずっとそんなことばかり考え続けるのも息が詰まってしまうだろう。そういうのに慣れている、と言っても巻き込まれるこっちの気持ちも考えてほしい。


「なんだよ、自分ばかり不幸の星の元に生まれてきたみたいな顔しちゃって」


 オウナはどこか不安そうにもじもじしている。


 対してリラは俺の背中からギュッと抱きついてくる。

 ここ最近ボディタッチが多い。

 そういう年頃なんだろうな。


「ウホーー(ボスー、ぎゅーー)」


「ははは」


 リラの戯れつきかたは、まるでオウナに見せつけるような形に変化してきている。


 一緒に行動して、ライバル心をむき出しにしているのか。

 それとも俺がおっぱい星人だと見越して、釘を刺しているのか。

 どちらにせよ、今の俺の稼ぎで二人を養うのは厳しい。

 それを言えばオウナもわかってくれた。


「なんだかこうやってみるとあなたたちって親子みたいよね」


「ウホ!?(なんで? 夫婦だよ!?)」


 オウナの言葉に、リラは怒りを露わにした。

 確かに背はちっちゃいけど、こう見えて立派に大人なんだぞ?


「それで、私はお母さんに見えないかなって……なんて」


 もじもじしながらオウナがそんなことを言ってくる。

 つまりはあれか、一緒に旅をするときに、そういう役割を求めているというのか。


 無理があるんじゃないか?

 人間の夫婦に子供がドワーフ。

 どう考えたって偽装夫婦だろ。


 それ以前にリラは俺のお嫁さんだ。

 オウナがその場所に割って入ればめちゃくちゃ怒ると思うぞ?


「ウホーーー(ボスはあたしのだよ! そんなこと言うお姉ちゃんなんて嫌い!)


 バシッバシッバシッバシッ

 拳で岩を砕くリラの殴打!

 買ったばかりのタワーシールドがみるみる拳の形に凹んでいく。

 これは相当にお怒りの様子だな。


「キャ! 痛いわ、リラちゃん! ごめん、冗談だって、樂くんは取らないから叩くのやめて!」


「ウホ?(本当? 取らない? 約束だよ?)」


「鬼柳さん、リラはこう見えて束縛系だから、あまり揶揄うようなことしちゃだめだぞ?」


「ウホ」


 オウナは反省のポーズをとった。

 特にウホ語を理解しているわけではないが、リラと一緒にいるときはなるべく俺の真似をするようになったらしい。

 彼女なりにコミュニケーションを取ろうと頑張ってくれているみたいだ。


 いい子なんだけどな、とにかく不器用なんだよ。

 モテてたけど、自分より強い男にしか興味ないとか全ての告白を突っぱねてきたから恋愛経験ゼロ。

 その上で、結婚適齢期を大幅に超過してアラサー最前線。


 魔力適性が高いおかげで、見た目こそ10代を名乗れるが。

 やはり息遅れという焦りもあるのだろう。

 俺と一緒にいるリラを時折羨ましそうに眺めていた。


「そんなにリラが羨ましいのか?」


「え?」


 ぼうっとしている彼女にそんな呼びかけをすると、びっくりしたように肩を振るわせる。

 後ろ盾がなくなった、という不安とは別のもののようだ。


「えーと、どういうのかな? 確かに不安は不安だけど。これはただの人肌寂しい気分というのかしら。ほら、騎士団では女同士くっついて眠っていたから」


「いや、それは……リラと一緒に食っつののじゃダメか?」


「別に樂くんとくっつきたいという申し出ではないのよ?」


「その割に俺の裸をチラチラ見てきてますけど?」


「そ、それはしょうがないじゃない! あまりにも無防備な男の裸なんて、目に毒なんだから! 私は魔力があるから、多少の我慢はできるけど、魔力のない子はそれこそ大変よ?」


 大変?

 なんの話だ?


「こっちの世界の女の子は、性欲がとても強いというお話は知ってるかしら?」


「まぁ、やたらとボディタッチは多いなという気はしてた」


 服に直接手を入れて腹をボリボリ掻く。

 たったそれだけで、オウナは太ももを擦り合わせて顔を両手で押さえてしまった。


 オイオイ、こんなことくらいでいちいち恥ずかしがらないでくれ。


「貴族が男を奴隷扱いしている本当の目的はね、その強すぎる制欲を一人じゃ満たせないから複数用いるということなの」


「男にとってはパラダイスなんじゃないか?」


「こっちの世界の女の子が、向こう基準でか弱ければ、そうなんでしょうけど。貴族って大概腹筋ムキムキよ?」


「あ」


「ウホ?(お姉ちゃんも?)」


 こら、失礼なことを聞くのはやめなさい!

 けど、まぁオウナもムキムキしてそうな気配はある。

 向こう基準のいい女のイメージでいると火傷するぞって言いたいのかもな。


「それで、優秀な男以外を奴隷として扱うのも、種を求める以外の理由があって……ゴニョゴニョ」


 オウナは俺に耳打ちし、とてもじゃないが聞くに耐えない発言をした。

 男にとっては恐怖でしかない。

 ナニを切り取って剥製にするのだとか。


 もはや人権すらないと聞いて背筋が凍った。

 これがこの世界の男の在り方なのかと、怖くなる。


「その切り取られた剥製を魔道具で動かしてるものが嘔吐で出回ってるらしいのよ」


「悪趣味もここまできたか。女社会の恐ろしさを今になって体験してるよ。で」


「で?」


「鬼柳さんもそれを使ったことがあるのかなって」


「そんなわけないでしょ」


「使いたいと思ったことは?」


「実はそれを買った騎士に誘われて使用直前まで行ったことなら」


「興味はあると?」


「ないとは言い切れないわ」


 とても真剣な表情だ。

 俺の顔を見ていた瞳が、途端に下がる。


「おい」


「ごめんなさい」


 晃かに俺の股間に視線移したろ。

 いくら男旱だからって、そういう目で見られたら困ってしまうからな?

 とはいえだ。


「俺も鬼じゃない。本番以外なら多少のボディタッチはゆるそう。もし妊娠てしまったら、俺には責任を取りきれないからな」


 この世界には避妊具もない。

 それ以前に男の種が女の土壌に芽吹くことすら叶わない可能性が高い。

 男が奴隷として売買されている理由がそこだ。

 剥製化してるのなんて、男の命が耐えきれない扱われ方をするのが本命だろうしな。


「いいの? その、お腹をさすらせていただいても」


「まぁそれくらいならな」


「ウホ(ボスを一緒に愛でようね!)」


「リラちゃんの樂くんを少しお借りするけどいいかしら?」


「ウホ(赤ちゃんを最初に産むのはあたしだからね?)」


「ええ、弁えているわよ」


 とりあえず、女の制欲を治めるために俺は身を挺した。

 その日の夜、俺は興奮しすぎて眠れない時間を過ごした。


「あー、心臓に悪い」

 

 オウナのオウナはとても柔らかでもちもちだった。

 やっぱり腹筋はバキバキだったけど、俺のもバキバキだったのでお互い様だ。


「おかげで、気持ちよく眠りにつくことができたわ」


「ウホ!(昨日は夫婦らしい夜活もできたよね)」


 それで子供は生まれないけど、確かにより一歩踏み込んだ中にはなれたな。

 リラは何をどうすれば子供ができるかを正確には理解していないみたいだし。

 俺もあんまりそういうことに夢中になる余裕もない。

 今は少しづつ稼いで、衣食住を整えるのが先決だろ。


 子供はその後だ。

 何につけても金はいる。

 そして役に立たないと判断されたら、それこそ剥製コースだ。


 なんとしてでも稼げるって他の奴らに認めさせねーとな。


「今日から俺もコインを稼ぐ。一緒に行動するぞ」


「また例の宝石商に?」


「まぁな。新しい話題はないが、騒ぎがないのは平和な証拠。軽い小銭稼ぎに付き合ってもらうさ。とはいえ、あまり目立てないので、クエストの受け取りはお前たち二人で行ってくれ」


「それは大丈夫だけど、本当にここで一人でお留守番できるの?」


「ああ、問題ない。むしろサバイバルの心得を誰が教えたと思っている?」


「愚問だったわね。では、行ってくるわ。いきましょう、リラちゃん」


「ウホ(ボス、またねー)」


「ああ、行ってこい」


 俺はコイン手帳を開いて、てっとろ早く入手すべきコインにチェックを入れた。

 リッチー『精神統一』

 ブルーオーク『精力増強』

 ライオエンプレス『心臓負荷耐性』

 ブラックコブラ『巻きつき耐性』

 

 これからの夜を迎えるための準備を、念入りに始めた。

 まだ二人。

 本番を始める前にこれなのだ。

 準備はしすぎるくらいでちょうどいいとはよく言ったものだった。



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※やってることはパパ活と同じです。


本番なしでタッチのみ10万円(この世界換算だと金貨1000枚相当)をなんと無料で


※本来は貴族が行う行事。

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