第4話 蝶
「痛い!」
驚いて思わず噛んだ尻を離してしまう。
生まれて初めて生き物から意味のわかる言葉を聞いた。
いわゆるコミュニケーションというやつだ。
わたしは集合意思が聞けないため、今まで誰かと会話などしたことがない。
誰かの声を聞いたり独り言すら呟いたことがないのだ。
それが目の前の異種族は喋ったのである。
まさに青天の霹靂である。
蝶はまだ喚いている。
「君たちに言っても聞かないんだろうけどね、僕だってでかい奴に掴まれたり閉じ込められたりしなければ地を這ってる奴らに食べられることなんてなかったんだ。今頃優雅にお前らの牙の届かないところにいただろうに……ちくしょう!」
勝手に蝶はみんな女だと思っていた。
いやいやそれよりも、わたしの言葉は通じるのだろうか。
そもそもわたしは喋れるのだろうか?
考える前に行動しそうになるが、この場にわたしだけでないことをすぐに思い出し、賢いわたしはリスクを考え話すことを躊躇した。
そうこうしているうちに足の近くの肉をもう一匹のアリに引きちぎられ、蝶は叫んでいる。
危ない、一歩間違えれば喋って殺されたのはわたしかもしれない。
しかし幸いなことに、すぐさまもう一匹は巣の方へ踵を返していく。
これは願いに願った単独で行動できるチャンスだ!
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