星が紡いだこの世界で。

柊ひめこ

魂の樹

空より高くそびえる、この星に生まれた始まりの命。


枝は幾重にも分かれ、生い茂る葉は柔らかな光を纏い、溢れんばかりの生命力と圧倒的な存在感を放っていた。


この樹を、人々はと呼ぶ。


この星の全ての植物はこの樹の息吹から産まれ、星を包んだ木々の生命力はあらゆる命の源となった。

そんな星の生命力を自在に操り、不思議の術を使う者が魔法使いである。


遥か遠い昔、人間と魔法使いは手を取り合って暮らしていた。

命を尊び、恵みに感謝し、豊かな星を作り上げた。


しかし、いつからか、互いに憎み合い、殺し合い、争いの絶えぬ関係へと変わってしまった。

争いの中で文献は燃え、伝承は時に飲まれ、ねじ曲げられた歴史によってその原因はもうわからない。



そして訪れた絶望の日。

深く大きな亀裂が一本、大地と天を結ぶ魂の樹の幹に刻まれた日。


この日はちょうど人類と魔法使いの争いが始まって一千年目の日だった。


血のように溢れ出た闇は、これまでの長い争いで樹が抱えていたもの。


大地に巡らせた根から吸収し、溜め込み続けていたものが、使となり樹から溢れ出てこの世界を呑み込んだ。


星も、月も、太陽も遮られ、この世界は光の無い暗闇に閉ざされてしまった。魔法使いは次々と闇に呑まれ、呪いを振り撒きあらゆる命を奪うと化し、この星は破滅へと針を進め始めた。



       ◇◇◇ーーー◇◇◇



     星よ、私の生命を差し上げます。

        だから、どうか、

       ーーー生きて。ーーー




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