追放された最弱スキル〈保存庫〉で世界の秘宝を独占しました ~気づけば誰も勝てない最強冒険者に~
妙原奇天/KITEN Myohara
第1話 追放された荷物持ち
「ルーク、お前は今日限りでパーティを抜けろ」
焚き火のはぜる音とともに、その言葉は無慈悲に放たれた。
目の前に立つのは勇者パーティのリーダー、煌々たる剣を腰に下げた男――エドガー。彼の青い瞳は冷たく、かつて同じ夢を語った仲間への情の欠片すら映していなかった。
「ど、どうして……? 俺は、荷物持ちとして――」
「それだけだ。荷物をしまうだけ。戦闘では役立たず。補助もできない。お前のスキル〈保存庫〉は無意味だ」
突きつけられた言葉に、ルークは唇を噛んだ。
確かに、彼のスキル〈保存庫〉は“物をしまう”だけ。それ以上の力はない。だからこそ、これまでは必死に雑務をこなし、みんなの後ろで泥にまみれてきたのだ。
「でも、俺がいたからこそ物資が運べたし、戦いに集中でき――」
「黙れ!」
エドガーの怒声が夜気を震わせる。隣で腕を組む魔法使いのセリナも、鼻で笑って付け加えた。
「正直、あんたがいなくても荷物は小分けにすれば済む話よ。ずっと思ってたの、無駄飯ぐらいだって」
焚き火の炎に照らされた仲間たちの顔――そこに庇う者はいなかった。
僧侶も、斥候も、みな目を逸らし沈黙している。それが答えだった。
「……わかったよ」
ルークは震える声でそれだけを告げる。荷物をまとめる必要すらなかった。彼の全財産は、すべてスキル〈保存庫〉の中にあるのだから。
無言の背を向けた瞬間、背後から嘲りの声が降り注いだ。
「ははっ、世界を救う旅から荷物持ち一人減っただけだ」
「二度と戻ってくるなよ、無能」
足音を砂利に刻みながら、ルークは暗い森の中へ消えていく。
胸の奥は焼けるように痛み、悔しさで喉が詰まった。
だが同時に――奇妙な高鳴りがあった。
(……本当に、俺のスキルは“役立たず”なのか?)
村を出た日からずっと使い続けてきた〈保存庫〉。
だが、底が見えることは一度もなかった。
無尽蔵に広がる暗黒の空間。その奥底には、まだ誰も触れていない“何か”が眠っている――そんな予感が常にあったのだ。
夜風が頬を撫でる。
ルークは一人きりで立ち止まり、拳を強く握った。
「いいさ……。役立たずかどうか、今に証明してやる」
そう呟いた瞬間、彼の保存庫がふっと震え、闇の中で光が瞬いた。
――それは、神代に封じられし一振りの剣が目覚める兆しだった。
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