第2話

「うちのワンちゃん、最高に可愛いでしょ?」

「いえいえ、あたしのネコちゃんのほうが素敵よ。」

街中のカフェの外席で、二人の女性が大声で会話をしている。

互いのペットの自慢らしい。

…うるさいな。

二人の女性の近くの席に座るサラリーマン風の男が、小さく呟いた。

…せっかく昼の休憩が台無しだ。

男はチラリと二人の女性に目を向ける。

男の視線に気付く事なく、二人の女性は声高らかにお喋りを続けている。

二人の手元には、それぞれ可愛らしい犬と猫が、大人しく腕に包まれている。

逃げる事も、声を上げる事もない。

…お前らも、ご主人様の奇声に耐えてるんだな。

男は二匹のペットに、心の中で同情する。

その瞬間。

男の視界に、眩い光が瞬いた。

ほんの一瞬だったが、男は眩しさで目を逸らす。

その時、男の視界の片隅に、黒いナニカが横切った…様な気がした。

その直後。

ピタリと二人の女性のお喋りが、止む。

…やれやれ。やっと静かになった。

眼を開けた男は、何気無く、二人の女性に目を向ける。

そして、息を飲む。

驚愕の中で男は、二人の女性の声が止んだ理由を把握した。

並んで座る二人の女性の顔は、『無くなっていた』。

首から上が、消えていた。

女性の傍の地面に、赤く黒い塊が二つ、落ちている。

…首から上が、切り落とされていた。

瞬く間に。

一瞬で。

二人同時に。

腕に抱えられた二匹のペットに、首から吹き出た血液が降り注ぐ。

赤く染まる中。

人に飼い慣らされた二匹のペットは、声を出す事も、逃げる事もなかった。


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