第5話
しかし、そこまで言う程の事なのだろうか。たった一人魔力を持っている人間が他の国に行ったところで何も変わらない。ソフィアはそう思っていた。
「普通の人間ならば……な。しかし、貴様ほどの魔力を有している人間の場合はまた別だ」
「そ、そんな事tね…」
「そもそも『聖女』とまで呼ばれていた時点で普通ではないと自覚しろ。まぁ、それは人間どもが勝手に決めた名称に過ぎんがな」
「……」
ソフィアは自分が特別扱いされるのが好きではなかった。それによって様々な事が制限され、色々な事を強要された。
だから、魔法を学ぶために学園に通ってみんな仲良く楽しそうにしている姿をただ遠目で見る事しか出来なかったのだ。
「国の力は国民の力と言って差し支えない。それが魔力かどうかはさておきな」
「魔力に限った話ではないのですか?」
今の話の流れからして「魔力」に関しての話だけだと思っていた。
「それはそうであろう。知力や学力も国民の力になる。時として知恵や工夫する力は魔力すら上回る決して侮ってはならぬものだ」
「えと、つまり?」
「誰であれ聖女に限らず学者など力を有している人間がそうほいほいと国を移動するでない。場合によってはその人が国を離れた事によって国の弱体化を決定づける事にだってなる可能性があるという話だ」
「私の場合はそれが魔力……だと?」
「そうであろう? 人間どもが決めた名称とは言え、貴様と我は言わばほぼ同類と言っても過言ではない程魔力を有しておるからな」
「そ、そんなに!?」
ソフィアは思わず驚いてしまった。なぜなら、ソフィアが知っているのはあくまで「どんな力を有しているのか」というだけで、実は魔力の量に関しては「他の人より多いかも」くらいにしか分かっていなかったのである。
「なんだ。貴様の国では数値化しておらんのか」
「数値化?」
「まぁ、そもそも魔力などを可視化出来る程魔力を有しているやつなどそうおらんか。まぁいい。貴様の魔力はな、我と大差ない。場合によっては我を上回るほどの力を発揮出来る程の力を秘めておる」
「……」
淡々と説明されたけど、ソフィアの頭はもう目の前で起きている事を整理するだけで精いっぱいで「とりあえず魔力が多い」という事だけ分かった。
「それで……これからどうするつもりだ」
「これから……」
「む? 何か理由があってここに来たのであろう?」
不思議そうに首をかしげる聖獣に、ソフィアは思わず俯いてしまった。なぜなら実はそこまで深く考えていなかったからだ。
とりあえず「海を渡って国を出たい!」という一心でここまで来たものの、実はそれから先はノープラン。ただ……せっかくなら自分の持っている知識を生かしたいとは思っていたが……。
「なんだ?」
「今何か聞こえた様な……」
ソフィアは微かに聞こえた程度だったが、聖獣にはハッキリと聞こえたらしくすぐに「乗れ」とソフィアに乗るよう促した。
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