『16barsの鼓動』第二十四章(改定完全版)
町田代表オーディション二次戦。
観客席は一次戦以上に熱気を帯びていた。
SNSで拡散されたおかげか、Silent Riotの名前を知っている人もちらほら混じっていた。
「今日こそ……勝負だ」
ことねは震える拳を握りしめた。
「行こう! みんなに聴かせよう!」
彩葉は笑顔で背中を押す。
「……荒くても、叩きつける」
芽依がターンテーブルを構えた。
ステージに立った三人。
スポットライトが落ち、静寂が訪れる。
「次は――Silent Riot!」
芽依のビートが鳴り始めた。
観客が一斉にざわめく。
低音が会場の床を震わせ、空気を切り裂く。
ことねがマイクを掴む。
「止まった鼓動を 叩き起こせ――!」
――《Backstage Riot》。
炸裂するビート。
ことねのラップは鋭く、荒々しく。
彩葉の歌声は突き抜け、会場の天井を震わせる。
芽依のスクラッチが鋭い刃のように切り込む。
観客席が一気に沸き上がった。
「やべぇ!」「女子高生なのにすげぇ!」
手を上げ、身体を揺らす者たち。
その中で――
東雲りなと鮎原やよいは拍手を送り、
「青春だなぁ」
「いや、音楽だよ」
と語り合う。
一ノ瀬響は胸の震感に気づいていた。
「……鼓動。さっきまでより強い」
悠木詩織は微笑む。
「音が、彼女たちを育ててるね」
さらに観客席の後方では、日向めぐるが唐揚げ片手に叫んでいた。
「Silent Riot最高ー!! ……あ、星南、このポテサラ食べる?」
「食べるー!」
曲が終わった瞬間、会場に大きな拍手と歓声が響いた。
一次戦では冷めた目で見ていた観客も、今は拳を掲げていた。
「……届いた」
ことねは胸に手を当てた。
彩葉は涙を浮かべ、芽依は小さく笑った。
ステージ裏。
猫丸がコーラを片手に現れた。
「暴れる鼓動は止められねぇ。次はもっと広がるぞ」
「おばちゃんも適当なこと言ってるだけだよ〜」
みのたが笑い、べすが三人にまとめて「べろりんちょ」。
「ちょっ!? やめてー!」
笑いと歓声が入り混じり、Silent Riotの名は確かに町田を揺らした。
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