第6話 警戒区域


 そんなこんなで気づけば放課後。

 私は午後の部活を終えると、千代たちとともに校門へ足を進める。


「じゃあまたな、ルリ、由利原。明日も来いよ」


「お疲れ様です。二人とも」

 

 千代と静香はそう言って手を振ってきた。

 二人とも家の方向が違うのでここでお別れだ。


「おー、お疲れ。またね」


「バイバーイ! また明日!!」


 私たちも各々手を振って別れの挨拶を済ませる。残った由利原とともに私は帰路をたどることにした。


「ねぇルリちゃん、今日もララのお迎え行くの?」


「うん、行くよ。由利原も一緒に行く?」


「もちのろん!」


 そんな感じでララの通う小学校まで私たちは歩いていく。これがいつも私たちが行うルーティーンだ。

 

「最近は物騒だもんね。ここら辺も本格的にだよ」


「そうなんだよねー」


 学校帰りにララを拾って家まで帰る。家に帰ったら由利原とはお別れ。そんな流れも、ここが警戒区域に指定されたのが原因だ。


 この世界には前世になかった常識がいくつも存在する。

 例えば、魔物という生物が存在したり、ダンジョンがあったり、冒険者がいたり。所謂みんなが一度はアニメで見たことがあるような剣と魔法の世界だ。


 私が働いている魔道具屋も前世にはなかった。そもそも、魔法という概念も二次元にしか存在しなかったから、それをもとに作られる魔道具があるはずもない。


 警戒区域もそう。

 ダンジョンは作られてから五年が経過すれば、『モンスターパレード』を引き起こす。これは、ダンジョン内に生息する魔物が外に溢れ出して人々を襲ってしまうというものだ。

 それが最近、近くのダンジョンで起こりそうだから、ここ周辺の地域は警戒区域として指定されている。つまり、いつ何が起きてもおかしくはない、そういった勧告がされているのだ。


 そういうわけで、帰りはできるだけ集団で行動しましょう、というのが政府の警告。


 特に、小学生はなりふり構わず無茶をするから危険だ。

 過去には興味本位でダンジョンに入って死んだ例がよくあるから、誰かと一緒に帰ることを推奨している。


「いつもごめんね由利原。一緒に帰ってもらって」


「全然。私はルリちゃんと帰れて幸せだよ?」


「そう?」


「うん!」


 由利原は友人が多いから、別に私と帰る必要はないんだけど。警告区域に指定されてからはいつも一緒に帰ってもらっている。

 彼女曰く、女の子一人は危険、だそうだ。小学生は誰かに気を遣うほどの余裕はないため、私とララは実質一人分だとかなんとか。

 理屈はともかく、一緒に帰ってもらえるのは私としてもありがたい。


「もしルリちゃんが魔物に襲われたら私が守るよ。こう見えて私は魔法が得意だからね」


「そうしてもらえると助かる。護身用の魔道具だけじゃ心細いし」


 私は魔物との戦闘経験が全くと言っていいほどない。もともと魔道具屋の家系だし、モンスターパレードというのも経験したことがないのだ。

 だからこそ、実際に会っても逃げるのが精いっぱい。

 最悪、由利原に助けてもらうことになるだろう。


 そう思いつつ歩いていると、ララの学校に着いた。


 ララはとっくに学校が終わっていたようで、校門で友達と思われる人たちと集まっていた。


「あ、ルリ姉!」


 私の存在に気づくと、こちらまで走ってくる。


「もう、遅いよ! みんなとっくに保護者の人来てたんだから」


「ごめんごめん。部活で遅くなった」


 小学校には部活なんてものはないから、私達よりもだいぶ早く終わる。だから基本的に友達と宿題をしたりグラウンドで遊んだりして時間をつぶしているそうだ。

 とはいえ、私も遊んでたわけじゃないし、こればかりは文句を言われても困る。


「由利姉も来てくれたんだ。いつも姉がお世話になってます」


「いえいえそれほどでもー。私もいつも助かってるからお互い様だよ~」


「おい、なんだその言い方?」


 まるで私がお世話されてるみたいな言い方だ。

 言っておくが、全くもってそんな事実はない……と思う。


「ルリ姉は偶に頭がおかしいところがあるからさ。由利姉がちゃんと見てくれてすごくありがたいんだよ」


「あぁ~確かにそう言われればそうかもね。ルリちゃんは突発的に行動しちゃうタイプだから」


「え、えぇ……? そうかなぁ……」


 私はどっちかというと冷静なタイプだと思うけど。

 二人を見てみると納得したように頷きあっている。

 どうやら共通認識らしい。

 なんか、心外だ。

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