24.採石場へ

「あっ、見えてきたよ!」

「うむ、あそこのようだな」


 平原を走っていると、目の前に山が見えてきた。その山は木が生い茂っている部分と、岩肌がむき出しになっている部分がある。


 用があるのは石がむき出しの部分。そこで行われている採石のお手伝いをするためにやってきた。


「町の壁が魔物の襲撃を受けてから修復してないって話だったよね。壁が壊れたら、魔物が町に雪崩れ込んじゃうから大変」

「そうだな。実際に見てきたが、壁は脆くなっていた。あのままだと、次の襲撃があったら壊れてしまいそうだ」

「壁を直すには石が必要なんだけど、その石を取るのが遅れているって話だよね。人が少なくて遅れているって言っていたけど、もしかしたら他の原因もあるって言ってた」

「それをルナが解消するんだったな。上手く事が運べばいいが……」


 壊れた壁には石が必要で、石を取るためには人の力が必要だ。だけど、その採石場では思ったより仕事が捗っていないらしい。私達はその解消をするために採石場まで向かっていた。


 平原を突っ切り、山まで到着する。すると、山の麓には沢山の家屋が建ち並び、人がいるように思えた。だけど、人の気配はしない。


「人がいないね。もしかして、仕事にいっているのかな?」

「くんくん、そうらしい。ここの場所には人がほとんどいない。逆に山から人の匂いがする」

「じゃあ、現場にいるってことだね。早速行ってみよう」


 人がいる場所が分かると、私達は山を駆け上った。レイのお陰ですいすいと岩肌を登っていける。しばらく進んでいると、人の姿を見つけた。


「あっ! 見て、いた!」

「うむ。どうやら、あそこのようだな」


 私達はさらに近づくと、その人たちはこちらを見て騒ぎ始めた。


「うわー、魔物だ!」

「みんな、臨戦態勢だ!」

「武器を持てー!」


 レイの姿を見て、魔物だと思われてしまったらしい。ざわざわと集まり出し、手に道具を持って構えていた。


「ちょっと、待ってー! 敵じゃないよー!」


 私は慌てて手を振って敵じゃないことをアピールした。その人たちの前に到着すると、私は慌ててレイの前に立ちはだかった。


「この子は私の仲間で、みんなを傷つけないよ!」


 必死に訴えると、険悪だった雰囲気が少し和らいだ。


「女の子……? じゃあ、従魔ってことか?」

「よ、良かった……敵襲じゃなくて」

「よし、警戒を解け! 大丈夫そうだ!」


 すると、その場にいた人達は道具を下ろしてくれた。良かった、攻撃されなくて。だけど、その代わりにその場にいた人は私を睨みつけた。


「こんなところは小さな子供が来る場所じゃねぇ。さっさと帰んな」

「怪我したくなかったら、ここにいたらダメだ」

「ここは子供の遊び場じゃねぇ」


 そう言って、私を追い出そうとした。確かに、こんな幼女が来たら、普通はそんな反応になるだろう。だけど、私は普通の幼女ではない。


「私はおじさんたちのお手伝いに来たの! はい、これ!」


 手紙を取り出すと、それをおじさんに渡した。おじさんは不思議そうな顔をして、封を開けて中の手紙を読んだ。


「『冒険者ギルドが認める冒険者のルナちゃんです。絶対に役に立つ子なので、手伝わせてあげてください。あと、いじめたら殺す。』って書いてあるけど……」

「冒険者ギルドの推薦状も入っているぞ……」

「じゃあ、この子は本当に必要だと思って派遣されたってことか?」


 おじさんたちは信じられないような顔をして私を見つめた。


「私ならきっと役に立てるはず! だから、手伝わせて!」


 胸を張って、声を張り上げた。すると、おじさんたちは顔を見合わせて――。


「くっ、はははっ! そんなこと、出来る訳がねぇ!」

「冒険者ギルドは馬鹿の集まりか? こんな小さな子に何が出来るっていうんだ!」

「冒険者が少ないからって、こんな子まで冒険者にしているのか!?」


 大声で笑って、話を信じようとはしない。折角、冒険者ギルドの職員が私のために手紙も推薦状も入れてくれたのに!


「こいつら、ルナを笑った。噛み砕いてやる!」

「待って、レイ! 落ち着いて!」


 おじさんたちに怒りを感じたレイが今にも飛び掛かりそうだ。慌てて間に入って止めた。このままじゃ、レイの我慢が利かなくなる。その前におじさんたちを説得しなくっちゃ。


「どんな問題でも解決してみせるから、何でも言って!」


 まずは、私の力を見せつけるのがいい。どんな、難問でもどんと来い!

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