15.アイテム納品

 朝早くに冒険者ギルドに行った。中に入ると、昨日は見なかった冒険者の姿が見える。だけど、人数は十人もおらず、ホールは相変わらず閑散としていた。


 それを横目に見ながら、空いているカウンターに近づく。


「おはようございます!」

「あら、ルナちゃん。おはよう。早い朝からここに来て偉いわね」


 昨日のお姉さんの前に行くと、お姉さんは優しく笑って迎い入れてくれた。


「今日は何か用があってきたの?」

「うん! 依頼された品が出来たの!」

「まぁ、そうなの!? こんなに早くて助かるわ!」


 用件を伝えると、お姉さんは手を叩いて嬉しそうに声を上げた。そんな風に喜んで貰うと、嬉しくなっちゃう。


「完璧に仕上げてきたんだよ」

「それは見るのが楽しみね。納品する品物は一つかしら。それとも二つ?」

「ううん、もっとあるよ」

「……もっと?」


 首を横に振ると、お姉さんは不思議そうな顔をする。


「レイ、アイテムを出して」

「了解した」


 だから、レイにお願いして全部出すことになった。カウンターの上に一瞬で百以上ものアイテムが突如として出現する。


「……えっ?」

「このアイテム、作ってきたよ!」

「えっ、えっ、えっ?」

「これで足りそう?」

「えっ、あっ、えっ……えーーーーーっ!?」


 聞いてみると、突然お姉さんが頭を抱えて絶叫した。


「ちょ、あな、ちょっ、あのっ!」

「お姉さん、何言っているか分からないよ」

「し、し、深呼吸するわね。ヒッヒッフーッ!」

「それは深呼吸じゃないよ」


 突然挙動不審になるお姉さん。あたふたとしていて、一向に落ち着く気配がない。


「ま、ま、待って……。この状況が理解出来なくて」

「私の力でアイテムを沢山作ってきたんだよ」

「それが理解出来ないのよー! 一体、何をしてこんなに沢山のアイテムを作ってきたのー!?」


 なるほど、急にアイテムを持ってこられて混乱したということか。だったら、説明をしないといけない。


「私が昨日、森に行って素材を沢山取ってきたの。その素材を一晩でアイテムにしたんだよ」

「そ、そうよね。そう考えるのが自然だと思うの。だけどね、それが本当に出来たのが信じられなくて」

「……そうだよね。これが初めての依頼だし、信用ないから」

「えっ、いや、信用がないからじゃないの! ごめんなさい、言い方が悪かったわ!」


 私はしょんぼりとすると、お姉さんは勢いよく首を横に振って否定してくれた。


「一つのアイテムを作るのに素材が必要だし、作成する時間も必要よ。それを全て一人でやるっていったら、一日で出来るアイテムは一つか二つくらいだと思っていたの。だから、ルナちゃんが持って来るアイテムはそれくらいかなって考えていたのよ」


 なるほど、元々そんな風に考えていたから、こんなにアイテムを持ってきたのが驚いたのか。


「それがまさか……こんなにアイテムをもってくるとは思わなくて驚いたのよ」

「お姉さんたちが困っていたから、アイテムを沢山作ってきたら助かるだろうなって思って頑張ったよ。……嬉しい?」

「すっっっっっごく嬉しい! これがあれば、困っている人が沢山助かると思うの!」


 お姉さんは力説してくれた。良かった、これで困っている人を助けられるみたいだ。私もホッと一安心した。


「今、職員総出でアイテムをチェックするわね。少し待っていてくれるかしら?」

「うん、大丈夫だよ」


 すると、お姉さんは控えていた職員に声を掛けた。職員たちはとても驚いた様子で、喜びの声が沢山上がっていた。


 そして、アイテムのチェックが始まり、また静かになった……と、思ったら。


「……えっ? ……嘘。まさか……!」


 一つのアイテムを手に取ってチェックをしていたお姉さんがまた驚愕の顔になった。


「どうしたの?」

「ど、どうしたのって……これ最高品質じゃない! 普通じゃ手に入らないものだわ!」


 どうやら、出来上がったアイテムは最高品質のようで、その品質の高さに驚いているようだった。


「信じられないわ……。まさか、この冒険者ギルドに最高品質のアイテムが納品されるなんて! 初めての事よ!」

「役に立ちそう?」

「すっっっっっごく役に立つわ! アイテムが欲しい人も大喜びよ! だって、最高品質なんだから!」


 お姉さんは目を輝かせながら、アイテムを見つめた。ふふっ、そんなに喜んでもらえて嬉しい。


「待って、こっちのアイテムも? 嘘、こっちは!? えっ、こっちも!? じゃあ、あっちは!? ええぇぇーーーーーーーっ!」


 他のアイテムをチェックしていくと、お姉さんの顔が驚愕で大変な事になっている。だけど、お姉さんだけじゃない。後ろでチェックを担当していた他の職員も同じように驚愕して絶叫を上げていた。


「嘘だろ! こんなことって、こんなことって!」

「なんてこった! 全部最高品質じゃないか!」

「凄い、凄いわ! これなら、みんなが喜ぶ!」


 カウンターの中はもうお祭り状態。他の職員たちも集まってきて、大騒ぎだ。


 その様子を見て、喜んでくれたと感じた私は嬉しい気持ちになった。やっぱり、困っている人を助けるのは気分がいい。


「ルナちゃん、本当にありがとう! あなたは救世主よ!」


 満面の笑みで感謝をされて、気分は上々。こんな幼女でも、ちゃんと人の役に立てるのだ。

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