ー3章ー 13話 「魔王封印の真実──森に残る影」
今朝もラッツさんが移住者を連れてきた。
恐らくこの光景は暫く続くのだろう。
王都は税収の効率化を図っているのだろうが、こんな事態になって本当に大丈夫なのだろうか?
まぁ人様の事情だから別に良いけど、移住者の人達がここを安住の地として穏やかに暮らしてもらえれば何よりだ。
そんな事を考えていると、誰かがこちらへ歩いてきた。
よく見るとリゼルさんだった。
いつの間に村の外へ出ていたのだろう?
そして手には何かが入った袋を持っている。
王都へ買い物にでも行っていたのだろうか?
いや、そんな事をすれば王都の兵にすぐ身元がバレてしまう。
まさかそんな迂闊な事はしないか。
「リゼルさん、どこに行ってたの?」
「この森に居る魔物を倒してきた」
……えっ、魔物!?
サラッと言ったけど……この森に魔物がいるの!?
それじゃぁメルフェリアさんが張った結界って何だったの?
ダメだ、頭が混乱してきた。
リゼルさんの話によるとこういう事らしい。
この森はかつて魔物の巣と呼ばれていて、人が近寄らない場所だったそうだ。
その名の通り、魔物の巣窟だった場所。
しかしかつての魔物の大侵攻の際、この森に生息していた魔物の殆どがその時に死滅したそうだ。
そして魔王封印と共に魔物は衰弱し、その生き残りがひっそりと今も生きているとのこと。
メルフェリアさんの結界は、外からの侵入を防ぐのと同時に、魔物を外に出すこともない。
要するに外への被害も同時に防いでいるそうだ。
そしてリゼルさんがここへ初めて来た時に、念のため魔物検知の魔法を仕掛けておいたそうで、それに反応があった為倒して来たと。
……なるほど。
流石は勇者パーティのメンバーだ……抜かりがない。
しかし今の話で非常に聞き流せない事を言っていたが……魔王って言いましたよね!?
しかも封印って……!
それって、今も封印されてはいるけど、生きているって事だよね?
僕らの敵は魔物だって話だけど、もしかして最終的に魔王を倒せって事なの!?
みんな隠していた訳ではないだろうが、余りに驚愕の事実が連発して理解が追いつかない。
「大丈夫。この森の魔物は弱いから。はい、魔石」
……そうですか、森の魔物は弱いんですね?
そして戦利品の魔石を手に入れて来られたと。
いやいや、その魔石をどうしていいのか分からないのですが?
まぁ、ヒーラーという支援職でも倒せるなら確かに弱いのかもしれないが、魔物事態の強さを知らないので判断出来ません!
これは今後の僕たち子供の未来のために、オルセアには洗いざらい話てもらわなければなりませんな!
僕は早速関係者を広場に呼び出した。
「ねぇ、オルじい。魔王封印と魔物の巣って何?この森に魔物が居るみたいだよ?」
別に責めようって話ではない。
ただ真実が知りたいだけなんだ。
僕らも、もう赤ちゃんではない。
ある程度の事なら、ちゃんと理解はできる。
オルセアは少しバツが悪そうに話し始めた。
「すまんな……隠していたわけじゃないんだ。ただ、お前たちがもう少し大きくなってからと思っていたんだよ」
もちろん気持ちは分かっています。
だけど魔物が居る森で何も知らないまま過ごすのは、どうしても気持ちが落ち着かない。
イノシシ以外にも警戒する対象が居るって事だからね。
するとメルフェリアさんが「内側にもう一つ結界を張っているから、村には魔物は入れないよ」と言っていた。
そこは安心できた。
問題は魔王と、何故この森なのかという事だ!
例えばアステルド連合国に暮らしても良かったのではと思うのだが……何か理由があるのだろう。
この森でなければならない理由が。
オルセアは勇者パーティのメンバーを見渡し頷いた後、ゆっくりと話始めた。
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