第20話 結果報告である!
「まさかの超バズロケットスタートにつき、登録一万行きました〜!!!」
「流石、トオコである! それでこそ吾輩の親友だ!」
「えへへ〜、そこまで言われると照れるな〜」
さて、芹沢の初配信から数日後の学校にて、朝のホームルーム前のこの時間に、両手でピースを決めた芹沢が、自慢げに配信の成果を語った。
「私も見てたよ透子ちゃん。まさか途中から瓦割始めるとは思わなかったけど……」
「なんで家に瓦割用の瓦が……?」
「そりゃぁ、空手家として瓦割れた方がかっこいいじゃん」
「たまにおかしくなるよね透子ちゃんって」
ちなみに、芹沢が仲良くしている通称『ロアナグループ』と呼ばれる友人の集いに参加する女子は総勢四人いて、芹沢、ロアナ、椎名のほかにもう一人、おかっぱ頭の眼鏡少女こと
「わ、私が旅行に行っていた間にそんなことが……」
とまあ、奈々宮は芹沢の配信について、話題に遅れてしまったことを悔やんでいた。
「いやはや、頼もしい限りだぞトオコ! この調子で、吾輩に並び立つのを期待している!」
「流石にそれは無理だよロアナちゃん!」
芹沢のチャンネル登録者は、現在一万二千人。配信開始からわずか数日で一万人を超えるのは驚異的と言うほかないが、それでもたった三日で八十万人を超え、今では100万の大台を超えているロアナと比べるのは流石に酷だろう。
「ロアナちゃん効果?」
「吾輩は何もしてないぞ」
なお、芹沢が初配信するにあたって、機材を譲ったりアドバイザー(佐渡)を紹介したりとしたロアナだけれど、チャンネル宣伝などは特にしていない。
なのでこれは、偶然にも初配信と同時に、チャンネル登録者が激増するようなバズが起きたということだけれども。
「しかし、なんでバズったの?」
「女子高生が瓦割するだけでも、まあインパクトはあるけども」
さて、配信を見ていた椎名だけれども、何がバズったのかはいまいちよくわかっていない。ただ、奈々宮の言う通り、女子高生が――しかも見た目だけは小学生でも通じる芹沢が、何枚も重ねた瓦割をする姿は、確かに衝撃的で話題性があるネタだけれども。
「どうやら空手関係らしいぞ? であるな、トオコ」
「大会経験だけは豊富だからね~、私。まあ、正直ここまで私のこと気にしてくれてる人が居ると思ってなかったけどさ」
どうやらバズの要因は、空手界隈由来のようで。
「中学校の時に全国行ったし、去年も県大会でおしいところまでいったからかも」
「あ~……確かに話題になってたような。ちんまい背丈で戦う空手女子とかなんとか」
「ちんまいとか言うな~!」
ということらしい。
まあ、芹沢の背丈を鑑みれば、高校生の中に一人小学生が混じっているようなもので、なのに頭一つ抜けた活躍をしたとすれば、それはもう話題の的になって当然だろう。
それを知っていた高校空手の関係者が、バズのきっかけになったと――
「とはいえライバルとして、トオコの魅力が知られていくのは自分のことのように誇らしいぞ!」
「流石に100万は無理だと思うけど……負けないからねロアナちゃん」
ともあれ、初配信から勢いよく登録者を伸ばす芹沢の姿は、ライバルとして頼もしく見えたことには間違いない。
もちろん、ライバルというのは、どちらが佐渡の恋人になれるかと言う恋のライバルのことである。
ただ、
「ライバル?」
「二人とも、何の話?」
事情を知らない椎名と奈々宮は、首を傾げて二人の話を聞いていた。
はてさてライバルとは一体何なのか。まあ、仲のいい二人のことだ、配信者ライバルということかもしれないと思うけれど。
「秘密である!」
とまあ、そんな風にロアナが言うからには違うのだろう。
「……」
ただし、思い当たる節がないわけでもないけれど。
特に椎名は先日、ロアナのとある姿を見てしまっている。
一週間前に起きた恋文事件にて、ロアナが見せたあの表情。
(もしかしてロアナちゃんって、佐渡君のことが好きなんじゃ……)
なんとなく頭を過るそんな疑問符だけれども――
(まさか、そこに透子ちゃんを入れて三角関係ってこと!? ……いやいやそんな、まさか、ね?)
それが偶然にも、ピタリと真実を当てていることに椎名が気づくのは、もう少し後のことである。
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