第2話 引っ越すべきか

数日前の話です。


私の住む地域では昔から神隠しが多いそうです。



私の祖母がよく語っていたのですが、この辺りには天狗が住んでいて悪い人を見つけると懲らしめるために遠くへ連れ去ってしまうんだとか。


「だから悪さしちゃいけないよ」


祖母がそう口酸っぱくいっていたのを今でも思い出します。




その時から数十年たった今でも私はそこに住んでいます。


田舎ではありますが、都市開発も進んでいてとりあえず店は一通りはそろっており特に不便はありません。

自然と町がうまく絡まりあって絶妙なバランスを保っているためでもあります。

田舎過ぎず、都会過ぎず……といった具合に。



そんなわけで長いことこの町にすんでいるわけなのですが、神隠しというものを目にしたことは、少なくとも私はありませんでした。


高校生ぐらいのころに私の同級生が下校時間がすぎても家に帰ってこないとして大騒ぎになったことがあります。一部のオカルト好きな何人かは神隠しにあったと言っていました。


それが本当なのかはわかりませんが、結局その同級生は見つからなかったそうです。


私は家出かなんかだろうと、交流のない人物だったこともあり大して気に留めなかった記憶があります。

神隠しも悪さをしないように、脅しで伝えられた話が残っているだけだと。そんな風に思っていました。



しかし、最近あの同級生は本当に神隠しにあったのではないかと思わされるような出来事に会いました。



その日はやけに朝早く目が覚めてしまいました。たしか5時半ごろだったと思います。

仕事は休みだったので二度寝でもしようかと考えましたが、ごろごろするうちにお腹がすいてしまい、朝の運動もかねてコンビニに出かけることにしました。




空は曇っていたため、少し薄暗く朝と夜の中間ぐらいの感じでした。


家からでてコンビニに向かう道に出ました。

たかだか数百mぐらいの距離なので時間はそんなにかかりません。



歩いているときにふと前を見ると、私と同じ目的地に行くと思わしき男性が歩いていました。

その人は歩きスマホをしていたので、危ないななどと思いつつその人の背中を追いました。



休日の5時半なだけあって車もまばらに通りすぎるぐらいでした。

通行人も私と男性しかいません。




その男性が歩道のそばにある電柱の横を通ろうとしたその時です。



電柱の影から異常に細長く、乾燥した腕が何本も出てきて男性を掴みました。

電柱から男性は2mは離れていたので、腕もおそらく2mほどあると思います。

声をあげる暇もなく腕たちは男性を電柱の影に引きずりこみました。




私は驚いて、急いで電柱のもとへ駆け寄りました。

男性の姿はありませんでした。


とたんに恐ろしくなった私は走って家まで戻り、布団の中へ逃げ込みました。

情けないですが、それほど恐ろしかったのです。



私は夢や幻覚でもみたのだと思うことにして、平穏を保っていましたが、先日警察がやってきてこの町に住んでいるある男性の行方が分からなくなっているので、なにか目撃していないかと言ってきました。


見せてもらった男性の写真は、間違いなく腕につかまれたあの人そのものでした。




私はどうしたらいいかわかりません。


神隠しの正体は間違いなくあの腕でしょう。



あれは天狗なのでしょうか。



天狗があんな姿をしているのでしょうか。



なぜ人をさらうのでしょうか。



このことは警察にいうべきでしょうか。



今後私もあの腕に狙われることがあるのでしょうか。



私は引っ越すべきでしょうか。




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