ガチャ×異世界=混沌
ロドリゲウス666
迷宮脱出編
第1話 初回ガチャが最高レアリティなのは常識
1日目。
道路に飛び出し、トラックに轢かれそうになった子供。
今年で大学一年生になった渡辺 徹は咄嗟に子供を突き飛ばした。
自分自身を身代わりにした。
迫りくるトラック。
これは死ぬな、と思った瞬間。
突如として、目の前の光景が切り替わる。
「……へ?」
理解が追いつかなかった。
現れたのは、無駄に豪奢な衣装を纏っている、無駄に偉そうな奴。
偉そうな奴曰く、この世界は危機に瀕しており、この事態を打開する為に徹達を勇者として召喚したらしい。
因みに、徹以外にも3人の高校生達が召喚されている。
異世界転生するのかと思ったら、異世界召喚されてしまった件。
喜ぶ高校生達とは対照的に、徹は偉そうな奴の言ってる事を信用できなかった。根拠はない。所謂、直感という奴だ。
勇者として召喚された者達にはスキルと呼ばれる強力な力が手に入る。当然、徹であっても例外はない。
早速のお披露目会。
最初は高校生3人組。どれもこれも強力なスキルだったのか、周囲が沸く。
「これは……まさか!?」「あのスキル、伝説ではなかったのか!」「ほう。今回の勇者は素晴らしい逸材揃いのようだ」といった具合に。
しかし、徹が持つスキル「ガチャ」が開示された瞬間、周囲はお通夜のような空気に変わってしまう。
端的にいうと誰も「ガチャ」と呼ばれるスキルを知らなかった。
徹の持つスキル「ガチャ」は、自身が持つ携帯電話を使用して行使する。
一体、いつの間に用意されたのか? 専用のアプリがインストールされており、アプリを開いてガチャを引く。
ソーシャルゲーム宜しく、ガチャ以外にも様々な機能が存在しているが、今現在はガチャを引く事しか出来ない。
向けられる無数の視線。
さながら、徹を品定めしているようだった。
(頼むから、何か良いのが当たってくれ!)
大丈夫だ。なんやかんやいって、ソシャゲという物は最初のガチャでは良い物が当たり易くなっているものだ。仮にそういった機能が無かったとしても、徹はソシャゲとガチャをこよなく愛する者だ。
自分の思いに、きっとガチャは応えてくれる筈だ。
「いざ……!」
ガチャを引く。
果たして、出てきたのは。
・人参
美味しい人参。通常の人参よりも糖度が高く、馬などに餌としてあげれば大いに喜ぶ。
調理せずに食べられます。
ドサリ、と。
徹の目の前に現れたのは、2本の人参。
畑から収穫した直後だったのか、2本の人参にはそれぞれ土が付着している。
「うん。コレはハズレだな」
自身に向けられる視線が、冷たい目からゴミを見るような目に変わっていくのをヒシヒシと感じつつ、徹は諦観の笑みを浮かべるのだった。
その後、なんやかんやあって処分された。
マジでファ〇キュー
2日目。
「コレは転移門だ。これを使って、君を何処かに飛ばす」
「申し訳ないとは思っているんだ。しかし、我々が持つ資源にも限りがあり、有用なスキルを所持していない勇者の面倒を見る訳にはいかない」
「ふざけんな! そっちが勝手に呼び出した癖に、欲しいキャラじゃ無かったからってゴミ箱に捨てようとするとか、人の心は無いのか! テメェら!」
両腕を拘束されてしまい、身動きを取る事が出来ない徹。
唯一塞がれていない口を使い、抗議の声を上げる。
「君の言っている事は尤もだ。だが、安心して欲しい。転移門の先は、来訪者である勇者にとっても生きやすい場所になっている。そこで、第二の人生を歩んで欲しい」
「嘘つくな! 絶対、この先は碌でもない場所だろ! お前、胡散臭いんだよ! 多分、金を横領してたり、誰かを暗殺するように仕向けたり、セクハラとかしてるんだろ!」
「「「………」」」
実際にその通りだったのか、偉そうな奴に視線が集まる。
偉そうな奴はわざとらしく咳払いする。
「は、早くそいつを転移門に送れ!」
転移門という名前がついているが、その正体は巨大な魔方陣。淡い光に包まれており、起動状態なのは誰の目からでも明らか。
必死な抵抗も虚しく、徹の全身は転移門の中に。
「クソッ! お前ら、覚えてろよ!」
淡い光は次第に強くなり、徹の全身を包み込む。
捨てゼリフとして、もう少しマシな物はなかったのだろうか? なんて考えながら、徹の視界は眩い光に包まれた。
※
光が弱まっていくと同時に、状況を正しく理解する事が出来る。
「……ここ、何処だ?」
当然、見知らぬ場所だ。
異世界に召喚されてしまったのだから、知っている場所など存在しない。
洞窟のように見える。
しかし、道は複雑に入り組んでおり、さながら迷宮のよう。
「もしかして、ダンジョンって奴なのか!? もしもそうだったとしたら、テンションが上がるぞ!」
初めての異世界。初めてのダンジョン。
全てが初めて尽くし。
嫌な事もあったが、それ以上に喜びが上回る。
だからこそ、頭の中からすっぽ抜けていた。
迷宮には必ず存在するであろう、アレの存在を。
背中にぶつかる。
何か硬い物。
「あ、すみません」
反射的に謝ってしまう。後ろを振り向き、徹は思わず絶句してしまう。
徹の背後にいたのは筋骨隆々の化け物。
鬼のような角を持ち、巨大な単眼。
上半身は裸。下半身には腰掛けが巻き付けられている。
発せられる声から知性は感じられず、徹に向ける視線は獲物を見定める狩人のそれ。
「……そっか。そりゃぁ、迷宮な訳だし、こう言うのがいるのが当然だよな」
魔物。
恐らくは、そう呼ばれている化け物が咆哮を上げる。
「あ! あんな所に、A5ランクの霜降り肉が!」
今世紀最大ともいえる声量で叫び、適当な方向に指を指す。
つられた魔物は、思わずそちらに首を動かしてしまう。
徹は全力ダッシュで逃げるのだった。
「な、何とか逃げ切れた」
淡い呼吸を繰り返しながら、生の実感を噛みしめる徹。
正に絶体絶命の状況だった。
魔物一体だけであればどうにかなった。しかし、件の魔物があげた咆哮には仲間を呼ぶ作用があったのか、次々と現れる魔物達。
命がけの鬼ごっこに身を投じるはめになったが、偶然にも魔物達のような巨体では通り抜ける事が出来ない洞穴を発見し、難を逃れる事が出来た。
あのまま鬼ごっこを続けていれば、時期に体力が無くなってしまい、徹は大量の魔物に体を食い荒らされてしまっていた事だろう。
「うわぁ。想像したくねぇ」
顔を青くして、思わず身震いする。
「……さて。取り敢えず、ここからどうするべきか」
迷宮だの、魔物だのといったが、実際にその通りなのか分からない。そもそも、徹は異世界に迷い込んで来てからたったの2日しか経っていない。
迷宮を抜け出すにしても、上に進むべきか、下に進むべきか。
というか、ここは本当に迷宮なのか?
謎は多い。
「まあ、そういうのは後で考えよう」
現状、洞穴の周囲には魔物が沢山存在している為、身動きが取れない。
広さは四畳半程度。
立ち上がると、ギリギリ頭が天井に着いてしまう。
不便だが、贅沢は言ってられない。
「そう言えば、ガチャってもう引けるのか?」
昨日、引いた後から一度もアプリを起動していない。
再びアプリを立ち上げると、ガチャを引く為の専用のアイテムであるコインが一枚増えている。
徹の予想が正しければ、ログインボーナスとして毎日一枚手に入る。
「早速一回引いてみるか!」
ガチャは好きだ。
何が出て来るのか分からない、そのドキドキ具合が溜まらない。
いざ!
・一生ゲーム。
大人気ゲームの人気にあやかって作り出されたパクリ商品。
元の作品が希望に満ちた、家族皆で楽しめる商品なのに対して、本作は苦しみに溢れており友人同士でプレイすれば間違いなく友情崩壊の一因になるようなクソ仕様。
人〇ゲームのパチモンが出てきた。
「え? これで暇を潰せと?」
1人しかいないのに、虚しすぎる。
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