無能と呼ばれ追放された俺、前向きに生きて世界と自分を変えてしまうことにした

茶電子素

第1話 追放

第1話 追放


俺の名はリオ。

生まれも育ちも、地図にも載らないようなド田舎の寒村だ。

家は極貧。両親を幼いころに亡くし、村では厄介者扱い。


おまけに魔力がまったく無い。

「無能」だと、子どもの頃から散々バカにされてきた。


「リオ、てめぇはいつまで村の恥を晒す気だ!」

「魔法も使えないクズが剣士を名乗るとか笑わせるな!」


同年代の子どもどころか、大人にまで笑われ、石を投げられた日もある。

けれど不思議と、俺は腐らなかった。


「へへっ、俺は魔力が無いぶん、丈夫に産まれてきたんだ。だから剣を握れば百人力さ!」


泣きもしない、怒りもしない。

そう言って、ただ明るく笑い飛ばしていた。


だって、本当にそうだからだ。

魔力がないせいか、俺の身体能力はやたら高かった。


走れば風のように速く、剣を振れば岩も砕ける。

俺にも理由は分からない。

ただ「魔法を失った代わりに、とんでもない身体能力を得た」

としか思えなかった。


だがそんな俺を待っていたのは追放だった。


「お前みたいな無能が村にいても迷惑なだけだ。出ていけ」


村長の一言で、俺はわずかな荷物と剣だけを持ち、村を追い出された。

まあ、泣き叫んですがるほど愛着もなかったから、

むしろスッキリした気分だった。


「よーし、せっかく自由になったんだ!冒険者でもやって、一発逆転してやるか!」


能天気に笑いながら街へ向かう道すがら、俺は早速トラブルに巻き込まれる。


「へへっ、お嬢ちゃん、俺たちと遊ぼうぜぇ!」


「やめてくださいっ!」


森の街道脇で、少女二人が、

十人以上の盗賊と思われる輩に囲まれていた。

まあ普通なら手も足も出ないし、出さない……。


「よし、ちょうどいいか!人は初めてだしな!」


俺は、盗賊たちの前に飛び出し笑顔で剣を抜いた。


「お前、誰だ?」


「ただの通りすがりだよ」


「ははっ!このガキ、ここで死体になりてぇようだ!」


盗賊たちが武器を構えた瞬間。 俺の身体は自然に動いた。


――斬。一瞬で三人の首が飛んだ。


血しぶきが舞い、残りの盗賊の顔が凍りつく。


「なっ……!?」

「な、何だコイツ!?」


顔は笑顔のまま。心はいでいた。

敵なら容赦はしない。

悪党なら生きている限り、また誰かを傷つける。

なら、ここで絶つほうが絶対いい。


「残念だったな。俺、無能だけど……敵には死神なんだわ」


その後、盗賊団は誰一人として生き延びることなく、全員が地べたに転がった。


「た、助けていただき、ありがとうございます!


震える声で頭を下げる少女。

これは――相当いいところの御令嬢っぽいな。


金髪碧眼、気品たっぷりの美少女だ。

その隣には、黒髪の剣士風の美少女。こちらは護衛兼侍女ってところか。


「いやいや!俺はたまたま通りかかっただけだから」


「……あなた、何者ですか」


護衛の少女が、剣を構え直し俺を睨む。


「そうだな片田舎の無能……いや、ついさっき村を追放されたばかりの無能かな」


俺は肩をすくめながら笑いかけるのであった。

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