第13話 忍者が城を舞台に戦う

 夜の帳が深く、月の光が城の石壁に冷たい影を落としていた。武士たちは城の最上階に集まり、重要な会議を開いている。しかしその陰で、密かに忍び寄る影が一つ──


**黒影くろかげ**と呼ばれる伝説の忍者、竜田たつたが、月光を背にして城の城壁を登っていた。彼の体はまるで影のようにしなやかで、足音一つ立てずに進む。その手には鋭い刀が光ることなく握られている。竜田は、城内に侵入した理由を明確に理解していた──この城を支配する嶋津大納言の不正を暴くため、そして敵の兵力を削ぐため。


 竜田は、彼の信じる「正義」のために戦うことを誓っていた。


 忍者の戦闘


 竜田が城の中庭に差し掛かると、足元で急に音がした。鋭い耳で敵の接近を察知した竜田は、すぐさま壁に身を寄せ、動きを止める。城内に潜む敵の兵士たちが、静かに巡回しているのだ。


「目標は見えている、だが油断はできない」


 竜田は少しの間、兵士たちの動きに合わせて動きを静止させた。兵士たちが彼の目の前を通り過ぎた瞬間、竜田は素早く地面を蹴り、まるで空気のように静かに走り抜けた。


 最初の障害を突破した後、竜田は城の最奥部へ向かって進み続ける。途中、暗闇に紛れて敵の兵士たちに遭遇することもあったが、竜田はその度に瞬時に対応する。鞘から抜き放たれた短刀が、敵の首元を一瞬で切り裂き、血がほとばしることなく消えた。


 秘密の通路と罠


 竜田は城内に隠された秘密の通路を利用して、最深部に向かって進んでいく。この通路は、昔の忍者たちが作り上げたもので、敵に見つかることなく目的地に到達するためのものだ。


 だが、通路には罠が仕掛けられている。足元に気をつけろ、竜田は何度も自らに言い聞かせた。通路の途中にある一つの矢の罠が作動する音が耳に届く。竜田は足を止め、瞬時に立ち位置を変える。矢が彼の頭上をかすめ、壁に突き刺さった。


「危ない……」


 竜田は冷静にその罠を避け、慎重に進み続ける。途中で少しの水の音が聞こえ、そこには巨大な落とし穴が待ち受けている。竜田はその罠の存在を事前に把握していたので、身を低くし、巧妙に罠を避けた。


 最深部での対決


 竜田が最終的に目指していた部屋に到達した時、そこには嶋津大納言が待っていた。彼は竜田の到着を予期していたかのように、冷徹な眼差しを向けている。


「お前か……竜田」


 竜田は自らの刀を抜くことなく、静かに言った。

「嶋津大納言、今こそお前の悪事を暴く時だ」


 嶋津はにやりと笑った。

「お前がどんなに巧妙に忍び寄ろうとも、ここはもうお前の領域ではない」


 その瞬間、部屋の中に響き渡った音。それは忍者たちが使う手裏剣の音だった。竜田が数枚の手裏剣を素早く嶋津に向けて投げたが、嶋津はわずかな時間差でそれらを回避し、背後の壁に隠れる。


 そして嶋津は、竜田に向かって一気に駆け出した。その刀が竜田の目の前に迫る。しかし、竜田は一瞬のうちに身をかわし、嶋津の隙間を突いて一太刀を浴びせる。


「お前の罪は許されない」


 竜田の刀は嶋津の腹部を貫き、彼は崩れ落ちる。血がじわりと広がっていくのを、竜田は冷徹に見下ろしていた。



---


 戦いの後


 嶋津大納言の死後、竜田はその証拠となる書類を手に入れ、城から脱出することを決意した。夜の闇が彼を包み込み、彼は再び城壁を越えて外へと消えていく。


 その後、竜田が成し遂げたことは、多くの人々に知れ渡り、悪政は終わりを迎える。しかし、竜田の名は、忍者として伝説となり、また新たな戦いの火種となるのであった。



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