因幡っこごっこ
井上藺上
一章
プロローグ「暗夜航路」
頭がカユい、頭ん中が、ここはどこだっけ、千鳥足、知ったことか、オピオイドでもなんでも持ってこいよ、調達だ、子供が子供だった頃、狂った考えだって叶うと信じた、だって、子供は無敵のアルマジロだったから、西から風が吹いて、足がもつれる、坂が緩やかに弾頭台みたく傾げてくのが気に入らない、フラットであるべきだろ、トーマス・フリードマンが言ってた、緑、みどり、茶色、黄土色、翠、ミドリ、黄緑、色の名前なんかよく知らない、タバコをどこにやったっけ、胸ポケット、外れ馬券、道で捨てとけばよかった、世の中は肥溜めで、アンモニアと絶望とタイマーを混ぜた化学合成物質で、ブルシットジョブに就いてブルーシートドブに捨て、増えるドーパミンは永遠の監獄、砂丘の歩き方は「砂の惑星」を読んで覚えた、マルボロマン、縄投げなら負けない、何たって自縄自縛が座右の銘のマルボロマンだから、ラッキーストライク、無い、ライターはどこだ、無い、ハードボイルドならここでタバコを吸うのだ、それが正しい化学合成物質だろ、毎夜のバーボンが安酒になり、陽だまりになり、季節を超えて時空が歪み、万華鏡のサリンジャーの口元が苦虫を噛みちぎり、ぶちゅっと放出された体液が、行き場のない一次元の直線上に羅列されていく、それが世の理だ、つまり豆腐の角でだって人は死ねるのだ、社会の成果物が、永遠の蛇足を用意してくれても、生き遅れへの久遠は恒久的な自壊に等しい、金など尽きることはない、尽きたのは希望だ、絶望なんか知らない、忘れて、捨てて、逃げて、煙、紫、炎、離脱、虚脱、飛び散らす空、旅路、ネット環境によって瓦解した幸福度、原始時代の寒さを忘れた人非人、足は前に進んでいるのか、景色は変わらない、ミドリ、茶色、黄色、黄色、白、白、紫、紫? 白? 騒ぎ立てないでくれよ、俺は俺という人生を終わり、また新たな別の幸福な何かになって帰ってきたい、しかしもうここには来れないかもしれない、第三惑星か、オーロラにフィックスして球根を掻きむしっても、戻って来れる確率は低いのかもしれない、話しかけないでくれ、たまには電話をくれ、今言ったことは忘れておくれ、写実においての脆弱さを捉え切る前に、いかほどの重量があるかなんて答えられるわけがない、本当はもっと生きたいのかもしれない、健やかさがあって、幸福とは何かを知る事ができて、絶対にそんな事ないからこそ余計虚しくって、馬鹿馬鹿しくって、やっぱり欲しい、ミミズ腫れにオリーブオイルを垂らしているのに、マヨネーズが青色で食欲をなくしてしまった時のような、未来、眼前、本当のところは地獄だと思っているんじゃないのか、俺は先に進む、奥に向かいたい、奥がどこなのかはもうどうでもいい、自分が進んでいるのが奥なのだ、とにかく、先に進みたいんだよ、さっきからそれしか口にしていないはずだ、シンプルだろ、あぁ、邪魔しないから、だから、もう、一歩、先へ、すす、み、た、――――――――――――
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