第26話 卑怯

 俺はどこまでも卑怯だ。

 薫の気持ちを無視して、自分の気持ちを押し付けている。

 薫が女の子になってから、ずっと。薫の笑顔が、薫の泣き顔が、薫の纏う空気が、そのすべてが俺の心を突き動かす。

 すべては自分のために。

 これまでの薫のすべてが、俺をそうさせてしまうんだ。

 女の子になって、女の子という選択を迫られているのに、辛いのは薫であるはずなのに、俺は俺の気持ちだけをどこまでも大事にしていまっている。

 何が、自分の気持ちを大事にしろ、だ。

 どの口が言う。

 どの心が願う。

 どの俺が祈る。

 馬鹿らしい。

 くだらない。

 人の弱さにつけこんで、自分を押し付けているだけの俺が何を言う。

 想いを伝えられたら、卑怯じゃなくなるのだろうか。

 いや、今伝えてもきっと、あいつをもっと困らせるだけ。

 俺だけが救われる。

「……はあ」

 俺は最近ますます小さく感じてきたベッドで寝がえりを打つ。

 視線の先には机。

 その上には薫、瑠々と撮った中学校の卒業式の写真が飾られている。

 三人とも笑っている。

 三人とも曇りのない瞳で未来を見ている。

 今から想像できないほどに互いを信頼し、互いを尊重し、互いを想い合っていたころの三人が、俺を見ている。

 その瞳の輝きに耐えられなくなった俺はきつく目を閉じる。

 きっと、俺は卑怯なままで生きていく。

 誰よりも自分のことが一番可愛い自分のままで。

 醜い自分のままで、きっと、生きていく。

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