第11話
寝室のドアが開いて、夫が顔を覗かせた。
「おい、起きてるか」あまり大きな声を出さないようにしようと努めているようだ。
うん。布団から顔を出して、麻里は返事をした。
「お粥、できてるぞ」
「うん」夫の素っ気ない言葉に、もぞもぞと起き上がる。
会社には、体調不良を理由に休むと連絡してあった。実際、頭がくらくらして、時折、吐き気がする。相変わらず食欲はないが、朝から何も口に入れていないので、さすがに体によくないだろう。
あれから、”はまなかゆうこ”という女性に関するニュースが出ていないか、と数時間おきにネットをチェックしているが、まだそういった報道はされていない。
――ただし、死亡した人の名前が伏せられている事件なら、存在した。●●県に住む三十四歳の女性。今朝、自宅のクローゼットの中で死んでいるのが発見された。頸のまわりに絞められた跡があり、付近にベルトが落ちていた。警察は、女性がクローゼットの中で自殺を図った可能性も視野に入れ、捜査を進めているという。
警察は、女性がクローゼット内に自分でベルトをかけ、自殺した可能性がある、と考えているらしい。そんなこと可能なのかとも思うが、ドアノブにロープをかけて縊死するケースもあるくらいだから、おそらく可能なのだろう。ベルトが落ちていたのは、ロープのようにしっかりと結べないため、重みで自然に解けたのかもしれない。そう考えているのだろう。
もちろん、麻理が考えているのはそれとは別のことだった。ユエンは、侵入してきた何者かによってベルトで首を絞められ殺されたのだ。そして、その後、あたかも自殺したかのように見せかけられた――
いや、その死亡した女性がユエンとは別人である可能性も、まだあるだろう。だが、麻理の頭から、その想像が消えることはなかった。ひょっとすると、ユエンが最後に伝えてきた、音についての話―― スルッスルッ、という音がする、というあれは、誰かがベルトを引きずる音だったのではないか。
そうするうちに、麻理の頭は忌まわしい考えで一杯になっていた――
「どうする? 下で食うか?」
麻理は首を振った。「ずっと寝てばかりじゃ、却ってよくないかも」
勇二に支えられて、ベッドから出て立ち上がる。時計を見ると、そろそろ夕暮れ時だった。
「別に無理しなくてもいいんじゃないの」
「でも、熱はないし、食べればしゃんとしそうな気がする」明日には仕事に行かなきゃならないし、と心の中で付け加える。
一階のダイニング・テーブルまで来ると、麻理は言った。「食事の用意、ごめんね。仕事のほうはもういいの?」
「きりがついたから、休憩中だよ」
麻理は目の前に置かれた粥を見下ろした。塩で味をつけただけの簡単なもののようだが、今はとてもありがたい。「ありがとう、いただきます」
おう、と夫が応えて、立ち去ろうとする。
「ちょっと待って。――聞いてほしいことがあるの」
怪訝な顔をしながらも、麻理が目線で促すと、夫はダイニング・テーブルの椅子を引いた。
麻理は無理矢理、蓮華で掬った粥を口へ運ぶと、話しだした。
「このところ、わたし、夜遅くまで起きてることが続いてたじゃない」
「ああ。何かあったの?」
「実は、昨日の晩ね――」
できるだけかいつまんで、麻理は昨夜の出来事を夫に説明した。ことのあらましを最初から説明すると長くなるし、自分でもうまく説明できる気がしない。そこで、簡略化してユエンの身に起きたことだけを話すことにしたのだ。
説明し終えると、勇二は妙な顔をして尋ねた。「で、そのニュースが、ユエンって人のことだ、っていうのか?」
夫には麻理がなぜそんなふうに疑うのかがわからないようだ。
「わたしは、その可能性があると思ってる。彼女が怯えてたのは事実だし――」
「だからって、そんなこと、簡単には信じられないな」勇二は顔をしかめて、首を振った。「電話は? かけてみたのか?」
麻理は頷いた。昨夜と今朝、電話してみたのだが、なぜか”圏外にいるか電源が入っていない状態です”、という機械的なメッセージが流れるばかりだったのだ。「もしかしたら、スマホが壊れてしまったのかも」
「ほかに連絡手段は?」
「ないの」麻理は項垂れて、首を振った。こんな話をしている時でも、合間に粥を口へ運ぶゆとりはあるのだから、夫が目の前にいることの安心感は絶大だ、と思った。
「じゃあ、どうするんだ」
「わからない。考えようとすると頭が混乱してしまって……」項垂れたまま、麻理は言った。「もし、勇二なら、どうする? こんな時」
勇二はTシャツの袖に片手を突っ込み、脇のあたりをぽりぽり掻いた。
「俺なら、最初からそんなことには関わらないけどな。顔も知らない相手と連絡先を交換するような真似は、絶対しない」
「わたしも、最後までそれには抵抗があった。でも、ほかの人たちは付き合いが長いせいか、割と躊躇なく連絡を取り合ってたんだよね」
「でも、ユエンって人は、仲良くしてたはずの蒼王子って奴が、おかしくなった、って騒いでたんだろ?」腕組みをして、そう尋ねる。
「そう。彼女は―― 蒼くんが何かに取り憑かれた、と思ってたみたい」
実際に口に出してみると、それはいかにも馬鹿馬鹿しく聞こえた。
夫も馬鹿げていると感じたらしい。「蒼王子ってのもおかしいんだろうが、俺にはその、ユエンって人もおかしいんじゃないかと思えるよ」
「二人とも、おかしいっていうの?」
「ああ。取り憑かれてる、だなんて、イカレてるよ。家に誰かが侵入してきたというなら、すぐに思いつくのは幽霊じゃなくて、強盗だろ」
強盗。そうなのだろうか―― 麻理は蓮華で粥を掬った。
「で、なんで、急に話してくれようって気になったの?」
「だって、もし亡くなった人がユエンさんだったら、わたしも警察沙汰に巻き込まれるかもしれない。そうなったら、勇二にも迷惑をかけるでしょ」
「まあ、それは、いいけどさ」
「明日にでも、警察に連絡しようかと考えてるの」
夫は、驚いたような顔をした。「そこまでする必要はないだろう」
「どうして? ユエンさんの身に起きたことを、わたしは知ってるんだよ」
「ショートメールでやりとりしたぐらいで? 相手の話が本当かどうかもわからないのに?」
「でも――」
「それに、麻理が警察に言えるのは、その蒼王子ってのが怪しい、ってことぐらいだろ。でも、そいつが外国にいる以上、警察だってどうすることもできないんじゃないか?」
麻理は二の句が告げなかった。確かに、そのとおりだ。
「その、ユエンって人が実際に死んでるかどうかもわからないわけだし、ちょっと勇み足なんじゃないか。もし関係があるなら、警察のほうから連絡してくるだろう。俺は、連絡なんて来ないと思うけどね」
「どうして?」
麻理が尋ねると、勇二は決まってるだろうと言いたげに肩をすくめた。
「そりゃ、顔も名前も知らない相手の言うことなんて、まったく信用してないからさ」
ユエンの言ったことがすべて嘘だというのだろうか、と麻理は呆れた。「それは、言い過ぎじゃない?」
「そうかな。俺はそうは思わないけど」夫はそう言うと、身軽に椅子から立ち上がり、仕事部屋のほうへ歩いて行った。
麻理はスポーツ・ドリンクのペットボトルを脇に置くと、再びPC画面に向かった。既にリモートで会議を幾つか終え、今は午後の会議に向けて資料を作成しているところだ。やることは相変わらず多いが、普段より幾分か仕事量が控えめなので、ほっとしていた。
「やあ、駒田さん。体調はどう?」
声をかけてきた同僚に、麻理は笑みを返した。「大丈夫。なんとかやってる」
そう、なんとかやっている。――昨日、どうすべきかと悩んだ末、麻理は、とりあえず夫の言うとおりにしよう、と決めていた。つまり、しばらく様子を見ることにしたのだ。
クローゼットで死亡した女性の事件は、あれきりネットでは報道されていない。元々、小さな記事だったし、事件性があるとわかるまでは世間の関心など引かないのだろう。麻理は、今か今か、と警察から連絡が来るのを待っていたのだが、電話はうんともすんとも言わなかった。
なぜ、未だに連絡がないのだろう。やはり、スマートフォンが壊れていて、電話やショートメールの履歴を得るのに手間取っているのだろうか。いや、もし、警察が本気になれば、そのぐらい簡単に手に入れられそうなものだが。となると、やはり、あれは事件ではなく、事故か自殺だったのか。もしくは、死亡した女性はユエンでさえなかったのか。
体のだるさに抗って仕事する合間に、そんなふうにあれこれ考えては、ため息をついていたのだ。
「ああ、そういえば」と、思い出したように同僚が言った。「昨日、このデスクの周りで、プログラマーの子がうろうろしてたよ。何か用でもあったんじゃない?」
須藤だ。彼のことを思い出し、麻理ははっと顔を上げた。
「ほんと? わかった、後で声かけてみる」ひょっとしたら、彼から何か興味深い話が聞けるかもしれない。
先日の、悪魔崇拝の話を思い出すと、きゅっと胃が縮む思いがした。ユエンが言っていた、蒼王子に何かが取り憑いている気がする、などという曖昧な話とは違い、こちらは現実に起きたことだ。あれから、麻理も少し調べてみたのだが、この現代でも、サタニストに関連した事件はあちこちで起きているらしい。悪魔、などというものが存在するかどうかはさておき、それを崇拝する人たちがいて、中には血生臭い事件を起こす者もいる、というのは紛れもない事実なのだ。
もし、そういったものが、このことの背後にあるとしたら――
ユエンは、見えない何かが近づいてきているようだ、とも呟いていた。彼女は、自分たち仲間が、何かに順繰りに襲われている、という恐怖に囚われていた。
そして、ユエンとの連絡が途絶え、彼女の生死もわからない今、それすらも、馬鹿馬鹿しい、と言い切ることは、麻理にはできなかった。
社内メッセージ・アプリをチェックしたが、須藤からのメッセージはなかった。業務外のことなので遠慮しているのかもしれない、と思い、麻理は彼にメッセージを送った。
二分ほどして、須藤から、そちらへ行く、という返事が来た。
麻理は時計に視線をやった。あと三十分はゆっくりできる。資料は出来上がったし、次の打ち合わせまで休憩ということにしよう。
「どうも」デスク脇に現れた須藤が、お辞儀した。
「お疲れ様、須藤さん。昨日はごめんなさい。来てくれてたみたいなのに」
「いえ。お休みだったんですか?」
「そう。ちょっと体調不良で」麻理は肩をすくめた。「でも、今はもう、なんともないの」
「そうなんですか。ええと――」
「もしかして、この前話してた件? 何かわかったの?」
須藤はそれを聞くと、ほっとした顔になって口を開いた。「はい。あの時、絵について話してましたよね。薔薇の描かれた絵。あれについて調べてみたんです」
「本当。それで?」
「ちょっと面白い、というか、ああなるほどな、と思うことがわかりました」もじもじしながらも、徐々に滑らかに須藤は話しだした。「この前、こんな話が出たのを覚えてますか。あちらには古い時代の建造物が山ほど残されてる、って」
「ああ。その一つが、わたしの知人が訪れた廃教会だ、って話でしょ。イタリアには使われなくなった教会がそんなにあるのか、と驚いたんだけど」
「そう、それとも関連する話なんです」そう前置きして、須藤は続けた。「教会に飾られた絵、と聞いて、僕は昔のアニメの『フランダースの犬』に出てくるような宗教画かな、と思ってたんですけど、調べてみたら、どうも違うようなんです」
宗教画じゃない? 麻理は目をしばたたいた。『フランダースの犬』というアニメのことはよく知らないが、作中にルーベンスの絵が登場すると聞いて、興味を持ったことがある。
「じゃあ、何だったの?」
「駒田さん、イコンって知ってますか?」
「イコン?」麻理は一瞬きょとんとしてから、頭を働かせた。「確か、幾つか意味のある言葉じゃなかった? アイコン、とも言うのよね」『月光の戦団オルトレーン』のゲーム画面を思い出しながら、麻理は言った。自分や他のプレイヤーを示すアイコンは、非常に馴染み深いものだ。
「そうです。その語源らしいです。僕らの業界では、アイコンというと小さいイラストの画像のことですけど、元はギリシャ語で偶像とか肖像といった意味らしいです。それが、キリスト教における聖像の意味を持つようにもなった。駒田さんはあんまり、そういうのは知らないかもしれませんけど、アイドルが好きな連中の間では、どちらも偶像という意味を持つことから、アイドルをアイコンと呼ぶ向きもあるんです」
須藤はそう言うと、照れたように笑った。ははーん、彼もアイドルが好きなんだな、と麻理は微笑む。
「なるほど。つまり、崇拝の対象ってこと?」
「それはキリスト教におけるアイコン―― イコンのことですね。アイドルもまあ、崇拝の対象ではあるけど、その話は脇に置いておくとして。キリスト教におけるイコンというのは、大抵、板に描かれた質素な絵らしいです。描かれているのは、キリストやマリアですね」
麻理は首を傾げた。「それは宗教画とは言わないの?」
「それが、違うらしいです。イコンというのは、聖像であって、偶像ではない、という主張なんですよね」
麻理は少し混乱を覚えた。「でも、アイコン、つまりイコンという言葉は、偶像という意味も持つ、と言ってたよね」
「そう、矛盾してるように聞こえますよね。キリスト教では、イコンの語源は偶像という意味を持つけど、その後、その意味とは切り離された、つまり別の言葉になった、という解釈になるみたいです」
「なんだか、無理矢理な感じがするけど」
須藤は笑った。「僕もそう感じました。でも、これには訳があるんです」
「訳?」
「はい。駒田さん、歴史の授業で、ビザンツ帝国、って耳にしたこと、ありますか」
急にそんなことを言われて、麻理は必死で記憶を探った。「あるけど、うろ覚え。確か、古代ローマの歴史について習ってる時に、聞いた気がするけど」
「そのとおりです。ビザンツ帝国というのは、ローマ帝国が二つに分断された時にできた、東ローマ帝国を領土にする国なんです」
「うっすらと覚えてる。で、そのビザンツ帝国がどうしたの?」
「ビザンツ帝国の歴史は結構長くて、滅亡までの千年余りの間に色々な政策を打ち出したそうです。ギリシャ語を公用語にしたり、東西の交易に注力したり。そのうちの一つが、キリスト教における偶像崇拝の禁止です。――この、偶像というのが、イコンのことなんですよ」
へえ、と麻理は声を上げた。
「この時までに、ローマ帝国では多くの教会でイコンが掲げられてきました。絵だけでなく、像の類いもイコンとして崇められていたということです。当時のローマは交易のために多くの都市と交流があり、ローマ・カソリック教会はそれに乗じてキリスト教の拡大を目論んでいた。そして、言葉の通じない民族に教えを説くために、イコンというわかりやすい宗教グッズが珍重されたんです」
「宗教グッズ? イコンが?」
「言い方は悪いけど、まあ、そうです。小難しい話より、ビジュアルのほうが脳に届きやすいのは、今も昔も変わらない、ってことじゃないかと」
「確かにそうね」つい視覚情報に頼り切ってしまうのは現代人だけかと思ったら、古代ローマでも同じことが起きていたらしい。面白い話だ。「でも、ビザンツ帝国はそれを禁じたわけ?」
「はい。聖書には偶像崇拝を禁じると書かれている、だからイコンは棄てるべきだ、というのがビザンツ帝国の言い分です。一方で、教会側の主張はこうでした。イコンは聖像であって、偶像ではない。だから禁止には断固反対する」
ああ、それで、と麻理は納得した。「だから、イコンから偶像という意味を切り離したのね」
「ということのようです。聖像とは、十字架に等しい、あるいは同じくらいの重さを持つ崇拝の対象であって、偶像とは違う、と言いたいようです」
「つまり、アイドルでいうと――」
麻理が言うと、須藤は苦笑いを浮かべた。「アイドルですか? それだとどうなるのかな。聖像は、CDのようなものかもしれませんね。離れた場所にいてもアイドルを崇めることができるよう、ファンに与えられたもの、という意味で。偶像は、そうなると、ファン・アートってところでしょうね」
ファン・アートというのは、ファンが描いたアイドルの絵ということだろう。確かに、それなら明確に意味が違う。「イコンはCDで、宗教画はファン・アート、ってことね」
「かなり強引な表現ですけど、キリスト教のことをよく知らない僕からしたら、そう考えるとわかりやすい気がしますね」
「それで、偶像崇拝を禁止された結果、どうなったの?」
「ローマ帝国の各地で、イコンの破壊が起きたんです。イコンを掲げていた教会の多くが、そのために廃れました。そういった教会の中には、廃墟になった今も観光名所として残されているものがあるようです」
須藤の言いたいことを理解し、麻理は頷いた。「知人が行ったのは、そういう教会の一つなんじゃないか、ってこと?」
「ええ。手がかりになるのは、薔薇です」
薔薇が? 麻理は眉を寄せた。
「イコンはローマ・カソリックのほかに、正教会というキリスト教の宗派でもよく用いられているんですが、正教会には、薔薇と聖母マリアを組み合わせたイコンがあるようなんです。この正教会というのは、世界各地に教会があり、東ローマ帝国にも広く分布していたんですよ」
「つまり、ビザンツ帝国に、ね」
「そういうことです。薔薇や百合は聖母マリアのシンボルらしいですね。聖母と薔薇のイコンは、庶民の間でもてはやされ、多く描かれたようです」
麻理はしばらく、考え込んだ。須藤は随分長い話を、うまくまとめてくれた。もし、断片しか聞かされなかったら、これほど深い納得は得られなかっただろう。「ありがとう。調べただけじゃなく、わたしにもわかるよう、話し方を考えてくれたのね」
「いえ。僕も、調べてるうちにヒートアップしちゃって…… 元々興味があった、ってのもありますけど、お陰でこれまで知らなかったことを色々知ることができました」
「ヨーロッパについての引き出しが増えた、ってことかな」
「そうですね。イタリアについて、より理解が深まったというか。もし、また行くことがあったら、そういう視点も交えて、あちこちを見て回れたら、と」
麻理は微笑んだ。「わたしも。イタリアに凄く興味が湧いた」
「いいところですよ。ぜひ行ってみてください」
満面の笑みでそう言うと、須藤は不意に我に返ったように、うろたえた。「そろそろ戻ります。一応、勤務時間中なので」
「ごめん。作業中だった?」
いえ、と須藤は首を振った。「実は、部門の異動が認められたんです。――だから、ここでの作業はあまり割り振られてなくて。たぶん、来週にも正式に辞令が出ると思います」
「そうなの。よかった。よかった、と言っていいのよね?」
麻理は心から、その報せを祝福した。
イタリアについて、より深く理解したお陰で、別の視点ができた、と彼は言った。麻理も同じだ。麻理の場合は、須藤についての理解が深まっていた。それがなければ、彼から今の話を聞くことも、また、別の視点から彼の人間性に触れることもなかっただろう。
須藤がお辞儀をして去っていくと、麻理はゆっくりと椅子の向きを元に戻し、PC画面に向かった。――打ち合わせまで、あと少し。その間に、須藤から聞いた情報を繋ぎ合わせてみることにしよう。
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