第8話 無限の可能性
湯気の立ち込める浴室水の滴る音
「そろそろあがるか。」
ロイは立ち上がり下を向く
「あ。」
自分の陰部を見て驚いた。
少しサイズが大きくなっている。だが勘違いしてはいけない決して興奮してるわけではないただ成長しただけだ。
「大人に近づいてるんだな僕も。」
まだ若干7歳の成長記録はこれにて終わり。
風呂から出て自室のに戻ったロイは魔法の開発に勤しんでいた。
「剣を構えながら最小限の動きで発動する、最小で最大の力を生み出すイメージ」
右手で剣を持ち左手を前に突き出す。
「発動のタイミング。ズレが生まれてはいけない。タイミングを掴むにはどうすればいい。」
2年、正確には1年と9カ月間考え続け編み出した魔法。
前世ではこう呼ばれていた。
【水蒸気爆発】
原理さえ分かっていればできないこともない、ただタイミングが非常に難しい。
相手にどう当てるかを考えていた。
水が急激な温度上昇により水蒸気へと変化する、その際起こる体積の変化により凄まじい圧力が発生するこの現象をどう相手にぶつけるか。
ロイは再度庭へと走り実験を開始する。
「手元で発動したら自分さえまきこんじゃうからな。」
考えた、ただひたすらに。
右手で剣を構え。左手の親指と中指をくっつける。
イメージだ。
中指にマナを集中させる。
水を生成。
親指のマナを熱く。
指を弾く。
パチン!
ドォォォォォン!!!!!!
砂煙が舞轟音が鳴り響く。
「なになに!!!」
チェルシーとサヤ、イラが城から出てきた、そこに立っていたのはボロボロのロイだった。
「だ、大丈夫!!」
チェルシーはロイに駆け寄る
「大丈夫だよ。」
ロイはチェルシ―を見ながらそう言った。
出来た。でも、これじゃだめだ。もっと相手に飛ばす感じで。
だが反応が早すぎる。どうすればいいんだ。そんなことをただ考えていた。
それからロイは何度も何度も指を弾き魔法を打ち続けた。
何日もマナが枯渇すれば休みをとり回復したらまた同じことの繰り返し。でも何も変わらなかった。
マナは無限の可能性を秘めているでも。それは当人の知識に比例し可能性が広がっていく。
書物を漁り様々な文献に手を伸ばす、魔法を飛ばすことはできてもそれは炎を飛ばしたり水を飛ばしたりそんな単調なことしか書いていなかった。
ロイが行おうとしていることは複雑な化学反応を用いた魔法水が急激に熱されれば即座に爆発が起きるどうすればいいのか。考え続けていた。
数日が経った
「ロイ!二人の墓を建てたんだ手を合わせに行くか?」
そこに現れたのはレオはだった。
「あ、レオさん。はい行きたいです。」
ロイはレオについていき、かつて自分が住んでいた家に着いた。
そこには
ライ・サラディーナ
タリア・サラディーナ
と書かれた墓石が建っていた。
「とうさんは婿入りしたんですね。どうしてですか。」
ロイはおもむろに口を開いた
レオは答えた
「元々はタリアが王位につくはずだった女王として魔法の才があり誰にでも優しく民から好かれる素質があったからね。だからライくんには婿入りとして仮名を継いでもらった。」
「では、なぜこんな離れたところで隠居していたんですか。」
ロイの疑問は当然だ。
王位継承者であれば王城で暮らし女王として生きていく術を学ぶはずだ。
「神族に狙われたんだ。それはおそらく魔族も同じだ。今までいろいろ嗅ぎまわってきたからね何となく察しがついた、今回の一件は神族が関わっている」
レオはそのまま話をつづけた
「魔族の姫が殺されていたんだ。姫殺しとしてカレナークは狙われたんだ、もちろん我々はそんなことをしていないまったくの冤罪だ。でも正直な所まだ神族の目的がわからない。」
レオの口から語られた話はロイにとって悲惨だった。
納得できるわけがなかった。
「そんな理由で殺されたのか。とうさんも、かあさんも。」
正直迷ってしまった。
あの男を恨むのは憎むのは違うとすべては神族のせいだと、でも納得できなかった。
そんな事どうでもいい。
むしろ、奪った者はすべて消してしまえばいいんじゃないかと。
そのとき。うっすらと淡い記憶が蘇る。
4年前
ロイ3歳
「ロイ、優しい人になりなさい。ライのようになんでも笑ってすましてしまうほどとは言わないけどね。」
ああぁ。優しい顔優しい声で温かく抱きしめられる感覚。
懐かしい。
そんなものは、まやかしだ。すべてを奪ったのはあの男だ。
記憶の裏からどす黒い声が聞こえた。自分の声だ。
「そんな記憶で自分の甘さを正当化するな。消えたものは戻らない、全て奪われた必ず報いを受けさせると誓っただろう。ロイ」
付きかけた灯が再び黒い炎に飲み込まれ消えた。
しばらくして、ロイは自室に戻りベットに横たわる。
変わらず表情に変化はなく。
より一層暗い目をして。
「もっと力を付けないと。」
翌日
チェルシーは王城に来なかった。
何故だろう違和感を感じた。
最近は毎日来ていた、用事でもあるのかと思ってその日は過ごした。
その次の日もまたその次の日もチェルシーは来なかった。
チェルシーが来ない日が続いて5日目の朝だった
レオが慌てて王城を訪ねてきた。そんな様子をたまたま見かけてしまった。
どうやらチェルシーは5日前僕に会いに行くと家を出たきり帰ってないらしい。
最初は泊まっていると思っていたが、帰ることはなく連絡すらなかったみたいでここに来たらしい。
僕はローブを着て窓から外に出た。
なにを思ったのだろう体は勝手に動いていた。
街を歩くのはいつぶりだろう。
チェルシーとともに2回くらい買い物しただろうかそんなこと思いながら歩いていた。
探すにしても、当てもなく。ただ裏路地の方へ足を向けた
急だった。顔に布を被されどこかに連れていかれた。
もちろん気配は感じたしあえてだ。
「おいガキ。おとなしくていれば殺しはしない。」
声の低い男が耳下で言った。
しばらくして布を取られ目を開くと下水路の一角だった。
牢屋のようになっていた。
何人かの子供がそこには居た。
ボロボロの服を着た子供。少しきれいな子供そこに居た子供は僕以外は女の子だ。
何故僕が連れ去られたかはわからない。
あたりを見渡す。チェルシーの姿はない。
少し安心した気がする。
目的がわからないし、帰るか。
そんなことを思い檻をとかそうと手を伸ばした
「ごめん、なさい。帰らせて。」
聞き覚えのある声だった。
「黙って歩け!殺すぞガキが!」
男の怒号。
女の子の泣き声嗚咽。
檻に顔を押し付け見渡す。
半開きのドアから光が漏れていた。
そこから出てきたのはチェルシー?
顔には痣。腫れた目鼻血を垂れ流していた。
そんな姿を目にしたロイは案外冷静だった。
ただ静かに檻をマナで溶かし、男の前へと歩いていく。
「お前!どうやって檻から出た!!」
男は驚きを隠せない表情でロイを見る。
ロイは言った。
「お前も僕から奪うんだね。」
気持ち悪い笑みを浮かべていた。
「も、戻れ!お前も殺すぞ!!」
男は腰に添えていた短剣を抜いた
ロイは動かない、表情も変えず男を見つめていた
男は短剣を振りかぶった。
ロイめがけ。
隙だらけな少年の体に斬りかかる。
背筋がぞっとした。なぜこんなにも隙だらけなのに、今斬れば確実に死んだ。そんな気がした。
武器なんて持ってないこんなガキに恐怖を感じた。
男は逆上しチェルシーに刃を向けた。
「おとなしく戻れ!こいつを殺すぞ!」
男は思った。相手はガキなんだ人質をつかって脅せばいいと。
金属が地面に落ち音が響く。
「え?」
男が下を向くと自分の腕が落ちていた。
「うううううぁ。。。。。」
気づいた途端右腕に激痛が走った。男は叫んだ。
「僕から奪おうとしたんだ。死んじゃえよ」
ロイはクロナミを構えチェルシーを抱き寄せた。
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