第8話
港人は玄関を抜け、リュックを肩から滑らせながらよろめいた。廊下がぐるぐると回る。屋上の死体や爆発の記憶が押し寄せる。
かろうじて浴室にたどり着き、洗面台に身を屈めて吐いた。咳き込み、激しく嘔吐する。
「くそ…くそ…」カウンターの縁を握りしめ、かろうじて自分を支えようとする。
志岡は戸口にもたれ、腕を組み、表情を変えずに彼を見下ろす。「大丈夫?」
港人はむせながら口元を拭う。「俺…もう…全部忘れたい」
志岡は小さく肩をすくめ、無言で去っていく。残されたのは、港人の自己責任な苦悶と、煙の残り香だけだった。
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