麗しき籠姫
@bertayagetsu_novel
第1話
「ほらご覧なさい、あそこにとても麗しい方がいるでしょう?
あの方が我が国の姫、フローラ様よ」
「噂で聞いた通り、本当に目を奪われるほどの麗しさね」
「あの方以上に麗しいひとを、僕は見たことがないよ」
「しかも、お妃様も相当の美人でしょう?きっと、お妃様の美貌を引き継いでいるのね」
なんらかの機会でこの国の姫・フローラを見かけるたび、国民は皆こう呟いた。
煌びやかな王宮で暮らし、誰にでも笑顔を向ける優しい心を持ったこの世で最も麗しき姫・・・そんなフローラに羨望を抱かない乙女など存在するわけがなかった。
フローラの母である妃もフローラと同様、この世で最もと言っても過言ではない程の美女だった。しかも彼女は、一位二位を競うほどの貴族出身であった。
フローラの父である国王もそんな妃の美貌に惚れた末、己の妃としたのだった。
そしてそんなニ人の間に生まれたのが娘でもありこの国の姫・フローラである。
だが王と妃は、娘を愛さなかった。国の財産と名誉、それから互いを心ゆくままに愛することしか、彼らの頭にはなかったのだ。
そのためフローラは、赤子の頃から召使に育てられた。ある程度成長してからは一人で過ごすことが多くなったが、決して城の門を潜り抜けることは許されない。
姫は時に部屋で読書、時に城の庭で小鳥達と歌う・・・といった人々が思い浮かべるような姫の生活を送っていた。姫も、そのようにして一人で過ごすのを非常に楽しく感じていた。
彼女は沢山の本を読んでいくなかで、ある物語を書いた本に出逢った。
それは、吸血鬼が登場する物語であった。瞳に魔性の魅力を秘める美しい吸血鬼・・・その吸血鬼は、夢見る乙女が求める王子のような存在として描かれていた。
フローラにも、その吸血鬼がとてつもなく輝いて見えた。本の中にいても、文字でしか描かれていなくても、それはフローラの心を大きくときめかせたのだ。
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