File20 -明日のために
やぁ、今日も来たか。
私ももう慣れてしまったよ。
君が来る、というのはある意味預言じみた精度で見通せるさ。
預言に興味があるのかって?
ないよ。会話のきっかけにしてるだけだ。
そうだ。
今日はあの話がいいか。
「明日のために」、洒落たタイトルをつけてみたから聞いてくれ。
◇◆◇◆◇◆
世の中には終末論と呼ばれる物がある。
ノストラダムスの大予言やマヤの終末論など、簡単に言えば人類の破滅をもたらす、というような物だ。
だが、ある男性が待ったをかけた。
彼が言うには「人類史が終わりを迎えるどころか、始まってすらいない」と。
彼は歴史学者でね。
古今東西、様々な遺物に触れてきた。
そこで、ある一つの文献を見つけたから、その主張をしたそうだ。
『ヤガンデラー文明記』と銘打たれた史書で、その文明の全てが記載されていた物だった。
その中にある「文明における終わりとは連鎖の革命により為される。文明における始まりとは革命の足音により為される。」の
一節を読んだからこそ提唱した。
彼の中では、ノストラダムスの大予言は始まりの福音に感じたんだろうね。
そうして「始源論」と名付けた本を執筆した。
ただまぁ、まとまりの無い内容であったし、突飛すぎるからね。
あまりにもひどすぎるとして、一笑に付され学会から追放されたようだ。
気になるなら読んでみてくれたまえ。
その本の是非はおいておくとして。
始まってすらいないというのは、私は行き過ぎた結論だと思う。
だが連鎖の革命については、言い得て妙だな、と素直に感じたよ。
どういう意味か、だって?
歴史を見てごらんよ。
古代、恐竜が生き残ったのは食物連鎖の頂点だったからだろう?
その後、食物連鎖の頂点と"されている"我々人間が繁栄している。
……強者は常に連鎖の中で君臨する。
では、強者の定義とは?
そして革命とは、自身の上位存在が現れること。
その時、人間は強者でいられるのか。
単なる終末論では滅亡しない。
それに、もしそれが始まりならば。
──世界は何度回帰しただろうか?
◇◆◇◆◇◆
今回の話は如何だろうか。
ヤガンデラー文明なんて聞いたことない?
調べれば出るだろうに。
……いや、今はそうなっているのか。
いや、いい。
とりあえず名前だけ覚えておけばいいさ。
タイトルの意味?
深い意味はないんだ。
例えば明日、革命により淘汰されるとして。
君は今日、なにをするのか。
──そんな、単なる願いだよ。
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