第6話 3人目
あの日千奈と通話した日から変わった事が2つ。
ひとつは千奈と通話する機会が増えたこと。そしてもう1つはというと…。
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〈投稿〉
:ツーネット
お前らこんばんは俺だ。
今日の晩飯はカレーだ。
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〈コメント〉
:志願者トー〇ス
興味ねえよ帰れ
:ez
私の晩飯はもやしだ。
:〇子
お前だれ
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このクソなトモフレでの投稿頻度が増え、この腐ったSNSに順応し始めていました…。
いやなんつーか楽しいのよ。暇な時とかに投稿すると馬鹿みたいなコメントか辛辣なコメントがくるのよ。でも最近は辛辣なコメントすら心地いい。(覚醒)
なので最近はよく色んな人の投稿も見るんだけど、1人だけ気になる人がいるんです。丁度投稿してますね。
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〈投稿〉
:ノァー子
あたしがあたしである限り幸せにはなれないな。
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この人です。以前俺の初投稿にアドバイス(?)を乗せてくれた人だ。
この人の投稿はなんというかポエミーというか、哲学的というか、見ていてハッとさせられるような投稿が多い。確かにと共感できることが多くて見ていて飽きないのだ。しかもそれだけではない。
好きなアーティストが同じだ…。
一見よくある事だろう好きなアーティストが同じで話が盛り上がるのは…だけど俺の好きなアーティストはとんでもないマイナーなお方!しかも選曲まで被る始末。この人のこの投稿はその曲の歌詞の一部である。
よって今俺が悩んでいるのはあの人にコメントするか否かなのだ。悩みすぎて脳がショートしている。
親指が「送信」ボタンの上でバンジージャンプの準備体操を始める。落ちろ。いや待て。落ちるな。落ちたら死ぬ(社会的に)
候補1「めっちゃ分かります」
→分かって無さそう。語彙力どこいった。
候補2「その言葉、刺さりました」
→刺さるって言葉が一番刺さらないんだよね。
候補3「同じアーティスト好きです!」
→営業メールか?突然のゼロ距離でしぬ!
逡巡 三十秒。ええい、清書。
俺:「分かるで終わらせたくないくらい分かりました。
それと、その曲選ぶの、反則です。」
震える親指、投下。カウントダウン三、二、一——。
ワァー!!
通知が即鳴る。はやいはやいはやい、なにAI?人?未来人?思わず叫びそうになった。
ノァー子:「反則、してるつもりだった。
でも、あなたが反応してくれるなら、正解だったのかもね」
文章が柔らかいのに、刃物みたいに正確に狙ってくる。
プロフィールを覗く。投稿はポエム、哲学、たまに私服(女の子らしい)固定ポストには、例のマイナーアーティストの歌詞の一節。
そしてなぜか、俺の過去のどうでもいい投稿にぽつぽつと「いいね」が増え始める。
「『猫いた!』にいいねされました」
「『体育祭やめようよ』にいいねされました」
「『こんばんは、俺だ』にいいねされました」
やめろ、一部の投稿は黒歴史だ。掘るな。採掘するな。発掘調査は市に許可取ってからにしてくれ。
ノァー子:「最初の投稿、好き。
『こんばんは、俺だ』ってやつ。
画面の向こうから手、振ってるみたいで。」
見られてる。いや「見てる」だけじゃなくて、「覚えてる」感じがする。
—と、そこへ新しい通知。
ノァー子があなたにDMを送信しました。
突然、きてしまった、どうしようかこれは。
開くしかないか…。
『いきなりごめんね、コメントありがとう。さっきの曲、最後の一行が好き。』
『私が私である限り、あなたを手放せないっていう歌詞。』
『あえて1番好きな歌詞じゃないのを投稿したのね。てか好みの曲被りで嬉しいっス』
『嬉しいの、良かった。』
『ねえ、今度暇な時にDM送っていい?』
『いつでも喜んで』
『そう、じゃあ…またね。』
案外一瞬で終わったけど、趣味友ができたな。
このアプリにしては平和すぎて困っちまうぜ。
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「あのアーティストが好きな人、現実でも絞っていくのはそう難しくはないかな…。」
狂気の種は蒔かれた。
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