第9話 深夜のガールズトーク
貴重な油を用いて、敵兵の
その姿を荷馬車の上から見留めた
施
(これだけの恐ろしい体験の中だって言うのに、施
「敵の兵とて、死ねば等しく土に
それだけ口にすると、
灰色の煙は、絶えることなく空へと立ち昇り続ける。
手を合わせた
(空に舞い上がった魂は、どうやって土に
戦場から数里ほど移動した先に開けた牧草地が広がっていたため、本日は出立してから初めての野営をすることとなる。
出立からこのかた
しかしながら
荷馬車を
親衛隊の兵士などは、荷馬車などを利用しながら布一枚を地面に敷き束の間の休息をとる。
義侠団は更に
時折、
虫の音が辺りの
小さな寝屋には
そこには
「眠れないの?」
不意に
「あたし戦争って初めて経験したの。
そう言うと微かに肩を震わせる。
「いつだって戦争は恐ろしいものよ。こんなに穏やかな夜なのに。それでも昼間の光景は脳裏を離れてくれないわ。わたしだって怖くって、なかなか寝付けないくらいだもの」
「そんなことないわ。ホント、
深夜の天幕の中、
「お陰でお尻が今でもヒリヒリするんだけどね。もう二度と
「ところで
突然の問いかけに戸惑いながらも、静かに答えて見せる。
「いつも素敵って思って見詰めているわ」
(そうよね。周りは男兄弟に囲まれて、施
「そうよね。昔っから施
「そうね。足とか」
(確かに足もスラってしてるけど、意外に
「それでも一番素敵なのは、視野の広さかしら?」
(ん? 待って。視力が良い男性が好みだなんて、フェチが過ぎるわ。ナシ寄りを飛び越えちゃってるじゃない!)
「す、素敵なポイントが足とか視力って、
さすがに
「冗談なんかじゃないわ。戦場では一番大切な素養よ。特に施
「
「そんなの分かってるわよ。わたしが施
(ひょっとして?)
「改めて訊くんだけど、
「そんなの
(即答だわ! きっと
「そう言えば
「そうね。わたしもお母様に聞いた話で、意味まで詳しくは教えて下さらなかったの。ただ昔から
「
シィ――ッ!
突然に
「今の音、聞こえた?」
「分からないわ。あたしには周りの虫の声しか聞こえないわ。あとは森に住むフクロウの鳴き声くらいかしら、それも
「それがおかしいのよ。わたしは亡きお父様がプレゼントしてくれた、白くて立派なフクロウを飼っていたの。だから知っているわ。フクロウの鳴き声が、もっと深い音で遠くまで響き渡ることを。だけど今、聞こえてくるのは単調な音。絶対にフクロウの鳴き声なんかじゃないのよ。それに、この音は規則正しく音の回数が決められてるみたいなの」
「それって、ひょっとして……」
「間違いないわ。未だ知らない
***
【用語註】
・幕舎:野営で用いる大きな布張りの仮設宿舎。将軍・貴人用で戦場では周囲に柵や兵を配す。
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