第二話:王宮の不倫と、拡大する戦火



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### 商用車革命劇『三人の騎士』

**第二話:王宮の不倫と、拡大する戦火**


脚本の改訂作業は深夜にまで及んでいた。

当初は圧政に苦しむ民を救う勧善懲悪の物語のはずだった。しかし、私の創作意欲は、そんな小さな枠組みに収まりきらなかった。必要なのは、もっと複雑で、もっと重厚な人間(車)ドラマだ。


翌日の読み合わせ。

キャスト一同が、配られたばかりの第二稿を手に固唾を飲んで私を見つめている。

「えー、それでは第二話の読み合わせを始めます。まず、設定に大きな変更があります」


わたしはゆっくりと告げた。

「アルファード王妃は、エルグランド王と離婚。実家であるトヨタ王国に帰ります」

「えっ!?」とキャスト陣がどよめく。

「そしてエルグランド王は新たに、国産セダンの最高峰、センチュリーを新たな王妃として迎え入れます」


教室がシン…と静まり返った。そのあまりに高貴すぎる存在の登場に、誰もが言葉を失っている。

わたしは構わず、核心部分を読み上げた。


「しかし! この再婚は偽り! センチュリー王妃は、実は敵国であるトヨタ王国のスパイだったのです! 彼女は、かつて先代国王(クラウン・マジェスタ)に嫁ぎながらも、当時まだ王子であったエルグランド王と不倫関係にありました! その密通の果てに、先代国王は謎の事故死を遂げたのです!」


「な…なんだってー!」「昼ドラ展開きたー!」

佐藤くんと田中さんが絶叫する。


「そう! エルグランド王は、王位とセンチュリー王妃を同時に手に入れるため、義理の父を手にかけたのです! そして、今回の離婚劇も全ては二人が仕組んだ罠! 全ては、強大なトヨタ王国を内側から崩壊させ、日産帝国が大陸の覇権を握るための壮大な策略だったのです!」

わたしは黒板を叩き、叫んだ。

「この王宮の陰謀を知った三騎士は、日産・トヨタ両王国間の全面戦争を止めるべく、戦場へと身を投じます! 目指すは、諸悪の根源、エルグランド王の首、ただ一つ!」


キングダムも真っ青の、壮大な歴史スペクタクル。完璧だ。

キャストたちが「すげえ…」「話がデカすぎる…」と呆然とする中、これまで黙って脚本を読んでいたエルグランド王役の鈴木先生が、そっと手を挙げた。


「高木脚本家先生…」

その声は、どこか震えているように聞こえた。

「あれ…? なんかおかしいな(笑)。最初は、働く車が金持ちの車に一矢報いるっていう、分かりやすい話じゃなかったか…?」


「先生。物語に深みを出すためには、単純な二項対立ではダメなんです。それぞれの正義がぶつかり合うからこそ、そこに真のドラマが生まれるのです」

わたしが力説すると、先生は天を仰いで呟いた。


「スケールがでかい(笑)。…やられたかな(-笑-)」


その呟きは、称賛なのか、呆れているのか。

だが、もう誰にもこの物語は止められない。文化祭の体育館ステージは、今や両国の存亡をかけた古代中国の戦場と化した。

我らが三騎士の革命は、いつしか大陸全土を巻き込む大戦争へと変貌を遂げようとしていた。

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