【海の底の空を超えて⑤】

「私たちが……ワールドクエストを独占」


 光冴から出てきた提案に、口角を上げワクワクが止まらない麻葉。


「そうだ。今の感じだと、しばらくは他のやつらも見つからないだろう。そこで、このクエストを俺たちだけで独占するんだ」


「それは……いいな」


「だろう?だから、麻葉には先行投資をする。ワールドクエストを調べるためだ。ゲーム通貨の50万Gを渡す」


「はぁ!?」


 【テラ・レギオンズ】でプレイヤーが持つ初期金額は『1万G』。その実に50倍。


 いきなりの大きな金額に、麻葉は開いた口が塞がらない。


「元々ゴジュモスに10分耐えたら20万Gぐらいは渡す予定だったんだ。そこに、ワールドクエストが絡むならプラスして50万Gも出すさ」


「でも、いいのか?」


「いいんだよ。今買いたい装備はないし、ワールドクエストが進めば、俺も新しい装備が買えるようになるはずだ。だったらここは、麻葉を投資してガンガンワールドクエストを進めてもらう」


 光冴は麻葉の装備を強くし、ワールドクエストを有利に進めさせて、ワールドクエスト特有の装備を早く解放させるつもりなのだ。


「それに機体の修理代もあるだろう?レギオンⅠは、修理すると三千Gはかかる。異世界ならもっと高くても不思議じゃない。多めに持っておいて損はないと思うぞ」


 確かに麻葉も光冴も、あの異世界のことは何1つも分かっていない。用心に越したことはないだろう。


「わかった。貰っておくよ兄貴」


 光冴の心遣いを受け取り、更にワールドクエストへのやる気を高ぶらせる。


「OK。ゲームにログインした後、フレンド通信を通して送っとくからな」


「ああ!先にログインしておくぞ!」


 もう待ちきれないと麻葉は自身の部屋へ戻っていった。


「楽しんでこい。麻葉」


「当たり前だろ。楽しむさ」


 もう、麻葉は怪我のことなど全て吹っ切れたような笑顔を浮かべ、それを見て光冴は、満足そうに笑った。

―――――――――――――――――――――――

テラ「回避型のテストで使われちゃうゴジュモス君だけど、あれでまだハエたたき程度にしか感じてないんだけどね。

 本番はまだまだ先だよ。誰も見たことない本番は」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る