君の一生が終わるまで
瀬戸川清華
序章
第??話 未来
「もう、俺を殺してくれ。ほら」
彼は私に煌びやかな装飾のついた鞘に収められた短剣を持たせた。そうして彼は、私の手を使い鞘から剣を抜き彼の首に短剣の刃を触れさせた。その所作一つ一つまでが美しく、丁寧な彼。
「すまない。もう限界なんだ」
彼の顔はひどく青ざめ、やつれている。でも、彼は表情を一切崩さなかった。
彼の手が私の手を操る。
短剣から赤黒い液体が私の手に滴ってくる。私のドレスが赤く徐々に染まっていく。
しばらくすると流れ続けていた赤黒い液体も流れなくなり固まった。
元から白い肌はさらに白くなった。
そして、光を宿していたはずの眼球は白く濁り、どんどん窪んでいく。
暖かかった体は冷たくなり、私の手を動かしていた彼の手はピクリとも動かなくなった。
目で見ているはずだ。見れば理解できる。いやと言うほど理解できる。そうとしか考えられない。なのに、脳が理解してくれない。
脳が理解を拒んでいる。
「……様が!」
「直ちに捕えろ!」
遠くで何かが、聞こえる。
すると、だいぶ前に枯れ尽きたと思っていたものが溢れてきた。ずっと無理やり堰き止めていたものが反動で溢れかえるように。
「うあぁああああああああああああああああああああああ」
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