ギルドを追放されたおっさんはチートスキルに目覚めて無双する ~ブラック企業で虐げられていた前世の記憶が目覚めたので異世界にやってきた元社員にざまぁします~
第28話 調子に乗っていた後輩にもついに天罰が!
第28話 調子に乗っていた後輩にもついに天罰が!
――――魔物だ。
「っち、タイミング悪っ」
小林が剣を抜く。
しかし、その動きはどこかぎこちない。
俺は静かに手をかざした。
《スキル発動――徳政令》
魔物の《契約強化》による能力が解除される。
動きが鈍くなった魔物に対し、俺はスキル《剣技強化》を発動し、一閃。
魔物は絶叫と共に倒れた。
「な……なんだ今のスキルは……」
小林が呆然と呟く。
「スキル《剣技強化》って……」
次の瞬間、彼の剣に宿っていたオーラが掻き消えた。
「……あれ、俺のスキルが……!?」
「やっと気がついたのか」
そう、俺は《再契約》を発動していた。
小林のスキル《剣技強化》が強制的に俺の元に移行されていたのだ。
「お前……俺のスキル……奪いやがったのか……!?」
「奪ったんじゃない。お前が“契約”を甘く見たんだ」
小林は膝をつき、呻いた。
「ぐ、クソっ……! ひ、ひどすぎんだろ! 人の心とかないのかよ! 嘘だろ! 嘘だろ……スキルが、スキルが消えた……!」
地面に膝をついた小林が、震える声で呟く。
その顔は青ざめ、汗が額からしたたり落ちていた。
信じて疑わなかった《剣技強化》のスキル。
そのアイデンティティがたった一瞬で失われたのだ。
「そんなのありえねぇ……この俺が、こんなおっさんに……!」
その場にいた者すべてが息を呑んでいた。
アリシアは真剣な眼差しで俺を見つめ、聖女セラは胸元を押さえていた。
グレイだけが『やったね!』と満面の笑みで俺に駆け寄る。
「お兄ちゃん、かっこよかった!」
「ああ、ありがとな」
俺は頭を撫でながら、表情を緩めた。
「小林、お前のスキルを奪ったのはお前の傲慢さが招いた結果だ」
「うるせぇ……お前なんか、なんで……」
小林は地面を叩いた。
拳が血に染まる。
「俺は……この世界でやっとやり直せると思ったんだ……! 前の世界じゃ、年功序列のクソ組織で、あんたみたいな老害が上にいたせいで、若手の俺たちはなにもできなかった……!」
「そうかもしれんな」
俺はそれを否定しなかった。
「だが、なにも変わらなかったのはお前自身だ。俺はこの世界でも年老いた『スキル無し』のおっさんだった。それでも、俺は足掻いた。お前はただ、スキルに縋っただけだ」
「…………」
「結局、お前はこの世界でも誰かの足を引っ張って、偉そうにしてただけだ。スキルを失った今、それでもなお前に残るものはあるか?」
その問いに、小林は答えなかった。否、答えられなかった。
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数日後、冒険者ギルドの会議室にて。
ギルドマスターと複数の幹部たちが顔を揃えていた。
そこには小林と彼と共謀していた冒険者たちの名前が並ぶ調査報告書が置かれている。
「調査の結果、小林亮太は複数の依頼での報酬未申告、協力者との裏契約、そして《偽装報告》スキルを使用できる者との共謀による評価操作が認められました」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ。す、スキルを奪われたあげく、こんな仕打ちとかないだろ!」
小林は必死に抵抗するもギルドの幹部たちは彼を追放することで意思を統一していた。
「ギルド規定に基づき、彼のランク剥奪と除名処分を決定します」
「……異議なし」
「い、異議ありだろ! スキルなしの俺にどうやって生きろっていうんだよ!」
「お前は《剣技強化》のスキルだったな」
ギルドマスターは小林に言い放った。
「自力で剣技を磨いてからもう一度このギルドの門を叩いてもらう。それがお前のためにもなるだろう」
「そ、そんな……クソがああああ!」
小林のギルド追放は全会一致だった。
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ギルド前。
処分が決定した日の午後。
小林は荷物を背負い、街の門へ向かっていた。
だがその足取りは重く、背中は丸まっていた。
門の前にはガクの姿があった。彼は手にリンゴを持っていた。
「食うか?」
「……なんで?」
「お前が死ぬのは本意じゃない。生きるつもりなら、そのくらいはくれてやる」
小林は無言でリンゴを受け取った。
だが口をつけず、そのまま歩き出す。
背中越しに、彼が呟いた。
「……次は負けねぇからな」
「望むところだ」
ガクはそう返した。
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ギルドに戻るとアリシアたちが待ち構えていた。
「もう、あんなヤツに情けをかける必要なかったのに……!」
とアリシアが不満たらたらで言う。
「ガクさんは優しすぎます……」
とセラが。
「お兄ちゃんはね、神さまだからね!」
とグレイが謎理論を展開する。
騒がしいがどこか暖かい。
俺はその光景を見渡し、口の端を少しだけ上げた。
「これで1つ、過去の清算は終わったな」
そう、小林という過去の“呪縛”から、ひとつの決着を迎えたのだ。
だが、旅はまだ続く。
次なる舞台はより大きな力と、より深い因縁が待ち構える予感がする――――。
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