4通目 連れ添ってくれる君へ

 夫が長年勤めた会社を今日定年退職する


 出勤の準備をいつも通りして、普段と変わらず出掛けるのを見送った


1つ違ったのはリビングのテーブルに置かれた手紙


私の名前が夫の優しい文字で書かれた封筒


何かと思い封を開けた


◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇


君と結婚してから30年という節目の年に定年退職する今日


言葉にするのは苦手なので手紙にして気持ちを伝えたいと思う


仕事から帰って君の顔を見るたび疲れが癒されていたよ


君が家の事をして毎日笑顔で出迎えてくれたから30年も働いていられたんだ


ありがとう


子供を授かってから2人で慣れない育児に奮闘したのも今では良い思い出だと思う


あの子も今では立派に成長して結婚したし孫の顔が見られそうで楽しみだね


なんて少し気が早いだろうか


これからは一緒の時間も多くある


普段行っている旅行ももう一歩遠くまで行けるようになるね


君と過ごす時間を思うだけで楽しみが増えるよ


今まで連れ添ってくれてありがとう


これからも手を取り合って生きていきたい


よろしく頼みます




愛しているよ


◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆


夜は予約していた2人のお気に入りのレストランでささやかなお祝いをした


2人のあいだには旅行のガイドブックが置かれ、今度行く旅行を肩寄せ合い計画していた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る