漢恋愛―恋する男の恋愛哲学―

なぎゃなぎ

立ち居酒屋の美女編

1話~出会いは突然に~

俺、古市順太郎は大学を出て、順当に就職し、仕事にも慣れ始めた。


しかし、趣味は無く、仕事と自宅をただ何も考えずに往復する毎日。

週末の金曜日に自宅最寄り駅前の立飲み居酒屋で軽く一杯やり、その後明け方まで漫画喫茶でダラダラ漫画を読むのが楽しみだった。


その日は楽しみにしていた金曜日---


いつも通り俺はなじみの立飲み居酒屋に立ち寄る。


店内は人が溢れており、歩きづらいが、1人で飲んでいるOLが視界に入った。



熱燗とポテトを注文する。


後、最近は胃の調子がすぐ悪くなるからな…。


そう思った俺はおもむろにチーズ盛りも注文し、受け取ると、そのOLの横のカウンターに立つ。



自慢じゃないが俺にナンパする度胸はない。

一人身のOLの側にいるだけで何となく心が躍るのだ。


俺はチラッとだけそのOLの顔を見て―――


俺好みの美人だけど、少し地味目の子だな。



その後満足して熱燗を飲み始めた。


「……」

俺がチーズを食べようとした時だった。


チーズのパッケージの開け方が分からず、もたもたする。


「これはここを引っ張るんですよ。」


横にいたOLが流石に見てられなかったのか、俺に開け方を教えてくれた。


「あ… ありがとうございます。」


チーズすらまとも開けられないアホな男だと思われただろうか…。

まぁ、ただ横で飲んだだけの関係だ。

どうせもう会う事もない―――


俺はグビッと熱燗を飲み込んだ。



「このチーズって初見殺しですよね? 私も最初困ったんです。」


俺は突然話しかけてきてくれたOLを振り向く。


地味な美人だと思った彼女の笑顔がまぶしく見えた。


可愛い―――


「あ… ああ、そうなんだね。 助かったよ。」

俺は心臓の高鳴りを抑えながらそっけない返事をする。


「毎朝、6時45分の大宮行きの3両目に乗ってますよね?」


OLが話を続ける。


え? 何故俺の出勤で使う電車を知っている!?


「はい。 同じ電車ですか?」


「はい。」


思いもしない返事に何故か俺の心が躍る。


彼女の素性は知らない。

名前も連絡先も恋人がいるかいないかも―――

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