病弱JK、美少女吸血鬼に転生した結果→激重感情メイドにロックオンされました
Ruka
一章
第1話
私の前世?
病弱でした。
人生のほとんどをベッドの上で過ごし、17歳であっさり終了。
トラックにドーン! とかじゃなく、ふっと息を引き取る感じの、地球に優しいエコな退場でした。
で。
気づいたら、なんかフッカフカのベッドにいた。
「……え?」
見知らぬ天井。
っていうか、天井高すぎでは?
あと、なんか体が軽い。
いつもは鉛みたいに重かったのに。
えいっ、と体を起こしてみると…
サラァ……
視界の端で、銀色の何かが流れた。
「…………髪?」
自分の髪を手に取ってみる。
絹みたいに滑らかで、月光みたいにキラキラしてる。
え、誰の髪?
私の髪は猫っ毛の茶色だったはず。
混乱しつつ、近くにあったやたらデカい鏡の前に立ってみた。
そこに映っていたのは————
「は??????」
え、誰この美少女。
二次元から出てきた??
雪みたいに白い肌。
ルビーみたいな赤い瞳。
CGみたいに整った顔。
あまりの美しさに呆然として、鏡の中の少女と同じ顔で、ぽかん、と口を開ける。
……え、もしかして。
これが、私……??
呆然と呟き、自分の新たな姿から目が離せなくなった、まさにその時だった。
ガチャリ。
背後で、重厚な扉が開く音がした。
「お目覚めですか、我が主、ルナリア様!」
そこにいたのは、完璧なメイド服を着こなした、亜麻色髪の美少女。
キラキラした翠色の瞳で、私をまっすぐに見つめている。
「このセレスティア、一億二千年の眠りからのお目覚め、しかと見届けました!」
「い、一億二千年!?」
サラッととんでもないこと言ったぞこの子!
恐竜もびっくりだよ!
メイドさんことセレスティアは、感極まった様子で私の手にひざまずく。
「ああ、ルナリア様……相も変わらずお美しい……この日をどれほど待ちわびたことか!」
え、え、待って?
距離近くない!?
顔がいい! すごくいい!
でも、なんか……彼女の瞳から感じる圧がすごい!
「さあ、ルナリア様! 長き眠りでお腹が空いていることでしょう! 最高のお食事をご用意しました!」
お食事、の部分をやけに強調するのが気になったけど、私はとりあえず頷いた。
◇
結論から言う。
私、吸血鬼になってた。
セレスティアが「最高の葡萄酒ですわ♪」って笑顔で出してきたゴブレット、中身どう見ても血でした。本当にありがとうございました。
最初は「無理無理無理!」って思ったけど、喉の渇きがヤバすぎて、結局、一口だけ……。
……。
…………うん、まあ、悪くない。
前世じゃろくに食事も摂れなかったし、健康って素晴らしい。
でも、一つ問題が。
動物の血じゃ、なんかこう……物足りないのだ。
ジュースクレンズしてるみたいな感覚? いや知らんけど。
もっとこう……新鮮で、生命力にあふれた……
ハッ!!
危ない危ない。思考が完全にモンスターになるところだった。
「ルナリア様、お顔の色が……」
いつの間にか、セレスティアが私の顔を至近距離で覗き込んでいた。
「もしかして……お食事がお口に合いませんでしたか?」
「え、あ、いや、そんなことは…」
「でしたら……!」
セレスティアは何かを決意したように、キリッとした顔つきになる。
そして次の瞬間、私は目を疑う光景を見ることになった。
セレスティアは、おもむろに自分の首筋にあるチョーカーのリボンを、するり、と解いたのだ。
白い首筋があらわになる。
「さあ、ルナリア様!」
「え、ちょ、待って!?」
「どうぞ! 私の血を!」
「ストーーーーップ!!!」
満面の笑みで首を差し出すセレスティア。
それを全力で押しとどめる私。
何この構図。
「人様の首筋をランチみたいに言わないでくれます!?」
「なぜですか!? 私のすべてはルナリア様のもの! むしろ光栄の極みですのに!」
ぐいぐい首を押し付けてくるメイドさんと、必死に顔を背ける私。
やめて! 甘くて美味しそうな匂いがするから! 理性がログアウトしそうになるから!
「うぅ……私の血では……ご不満、ですか……?」
うるんだ瞳で上目遣い!
その武器は反則だって!!!
「そ、そういう問題じゃないんだよなぁ!」
私は心の中で絶叫しながら、なんとか最後の理性を振り絞った。
「と、と、とりあえず今日は! トマトジュースで我慢するから! ね!?」
「とまとじゅーす……」
きょとんとするセレスティアをなだめすかし、私はなんとかその場を切り抜けた。
……ふぅ。
前途多難すぎる。
このメイドさん、忠誠心が重すぎて物理的に胃もたれしそう……。
こうして、元・病弱JKの、ちょっと(?)おかしな吸血鬼ライフは、波乱の幕を開けたのだった。
【あとがき】
毎日更新予定です。
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