第3話「三人集合①」

 LOUND1なんて前世ではほとんど行かなかったから、どんな場所なのか大してわからない。CMとかでそういえばあったなぁぐらいにしか知らない。セグウェイのイメージが強いかなぁ。


「月華。行くよ?」

「あ、うん!」


 俺はぼーっとしていたらしい。美樹ちゃんと一緒に店に入っていく。久しぶりに入ったLOUND1。かなり広いな。俺たちが今来ているのは天神のところだ。家は、そこから四駅ぐらい離れたところにあるから結構近かった。美樹ちゃん曰く、律ちゃんはもう着いていて、ボウリングのところにいるらしい。さっそくそこに向かっているが、美樹ちゃんとの距離がなんか近くなった。そう、腕を組んでいる、というより、なにか腕に押し付けられているのだ。まあ、何がとは言わないが。煩悩を消しながら歩いていると、


「月華、美樹。やっと来た。私もう、5ゲームぐらいやってr......。美樹?月華とくっつきすぎじゃない?」


 律ちゃんと思われる人物が少し不機嫌そうに言ってくる。

 え?てか、俺の周りの女の子かわいい子ばっかじゃない?律ちゃんはなんていうか、ちょっとお嬢様感がある。暗めの茶色い髪を後ろで結っている。少し高めのポニーテールで、うなじが見えているところにエロティシズムを感じる。全体的に細さを感じるが、芯があるように感じられる。白のワンピースを着ていて、あどけなさを纏いながらも、大人らしさも同時に伝わってくる。胸はまだ発展途上というところだろうか。これからに期待だ。いや、別に俺は大きいのが好きとかそういうのではなくてな、大きいのはだってロマンがあるだろ?紳士諸君ならわかってくれるはずだ。


「えー?そう?ま、そんなことよりあたしたちもやりたいからさ。」

「私5ゲームしてもう疲れた。」

「えー、やろうよー。あ!じゃあ点数で負けた人が勝った人の言うことを聞くっていうのでどう?」

「やる。私やる。」


 俺は話においてけぼりにされている。負けた人は勝った人の言うことを聞くということが決まったらしい。なるほど、やりたくなくなってきた。つまりは罰ゲームありってことだろ?美樹ちゃんも律ちゃんも普通にボウリング上手そうだし。俺に勝ち目ってあるのかな?


「「もちろん月華もやるよね?」」

「は、はい....」


 俺には拒否権がないらしい。二人に圧をかけられてやらないなんて流石に言えない。ボウリングなんてやったのめっちゃ前だし。勝てそうにない。いや、勝たなくてはいいんだ。負けなければいい。そうすれば罰ゲームは回避される。よし、負けないことだけを考えよう。


 じゃんけんをして、順番は、律→美樹→俺、ということになった。そう、二人の実力を見た後に投げれるのだ。別に見たところで、何か変わるというわけではないが。多分うまいんだろうなぁ。


「私からか。勝たせてもらうぞ!」


 律ちゃんがきれいなフォームで球を転がす。投げたボールはガターに向かって一直線……にはならず、ぎりぎりで曲線を描きながら、ピンの中心のほうへと向かっていく。そして、律ちゃんが投げたボールは真ん中のピンに吸い込まれ、ストライクとなった。


「律上手すぎでしょ。練習しすぎ。勝てる気しないけど、律に負ける気はないからさ。じゃ、あたしもストライクとっちゃおうかなー。」


 やめてくれ。ここで美樹ちゃんもストライクを取ったら、俺の勝ち目がまったくなくなってしまうじゃないか。それだけは避けたい。美樹ちゃんがストライクを取らないことを願うだけだ。願わくばガターとかね。


「えいっ」


 美樹ちゃんはボールを手から放つ。技巧派の律ちゃんとは異なり、直線的にボールは滑っていく。ボールの速度は男顔負けで早く、ど真ん中にガシャンッと一撃を与え、勢いでピンを倒していく。ストライクか?と思ったが右端のピンが一本残っていた。惜しい。でも、俺にそんなことを言っている暇はない。俺に秘められた力がない限りは、ほぼほぼ勝てないだろう。そして、美樹ちゃんの二投目。当然と言わんばかりに真っすぐと右端のピンにボールが吸い込まれ、スペアとなる。


「ストライクは無理だったけど、まあ、スペアだしいっか。律、負けないから。あとついでに月華も」

「私も負けるつもりはない。」

「おr…私も負けたくはない、かな。」


 てか、美樹ちゃんにめっちゃ舐められてるし。こんなことを言っているが心の中では無理無理絶対無理と思っている。なんていうか二人ともレベル高くない?俺の負けない未来がまったく見えない。はあ。次は俺か。とりあえずガターだけは避けよう。うん。俺はボールを持ち…、持ち…。重い。思った以上にボールが思い9ポンドってこんな重かったっけ?この体だから重いんだろう。これを投げるって結構辛い。明日絶対筋肉痛じゃん。とりあえず、投げてみよう。

 俺は、ボウリングの技術はないから、とりあえず、一本でも多く倒すことだけに集中しよう。よしっ。


「よっ」


 俺が投げたボールはゆっくりと転がっていく。これはあるのでは?ボールはかなり真っすぐ転がっている。大して回転もしていないから曲がることもないだろう。もしかしてストライクの可能性が出てきたんじゃないか?これはいけるぞ。うん。あり得る。そんなこと考えている間に、ボールはどんどんピンに近づいていき………。


「あっ」


 ボールは直前で曲がりやがった。さっきまで曲がる気配を感じさせていなかったのに、ここにきて曲がったのだ。多分、速度が遅くてちょっとの回転でもまがりやすかったんだろうけど。てことで、一投目では、4ピンを倒した。


「ドンマイ月華。そういうときもあるよ。」


 美樹ちゃんが笑いをこらえながら言った。くそう。言い返せないからちょっとむかつく。


「月華。私が月華に言うこと聞かせてあげるから。」


 律ちゃんに言われる。え?なんかSを感じた。なんていうか、美少女の言うことを聞くってシチュエーションとしては最高なんじゃね?ということに今気づく。たとえそれがご褒美だとしても、負けたくはない。うん。二投目頑張ろう。

 二投目。俺は、さっきよりも強く投げようと思う。コントロールはさっきよりしにくそうだが、そうしないと、倒せる気がしない。よっと。ボールをさっきよりも気持ち速く投げる。それは、当然言うことを聞かずに、転がっていき、綺麗なガターになる。


「美樹ちゃん、律ちゃんお手柔らかにお願いしたいな…?」


 ◇


 結果は当然、俺が最下位だった。でも、今、至福の時間を過ごしているようである。言うことを聞くってなってたけど、こんなお願いをされるとは。うん、最高だ。TSをして最もよかったと思う瞬間だ。え?どんな状況か気になるって?


 ◇


 ちょっと前。


「はっはっは。このまま私がストレートで勝ってやる。」

「まだあたしも勝てる可能性あるし。てか、勝つつもりだし。ま、律がミスってくんないとだけど。」


 次が10フレーム目である。ここまでの得点はというと、

 律:143   美樹:133   俺:83

 おいおいおい、点数離れすぎじゃないか?というか、二人とも上手すぎじゃないか?俺は最下位確定だろう。そして、多分律ちゃんがこのまま勝つんじゃないか?と思う。

 10フレーム目が始まる。律ちゃんはなんと三投ともストライクを決めてきた。うん、律ちゃんの勝ちが確定した。美樹ちゃんは、スペアのあとに、ストライクを取っていた。俺はというと、7ピンだけ倒して終わりだ。そして、三人とも10フレーム目も終えて、最終的に一位律、二位美樹、三位俺という順位になった。まあ、順当だわな。


「ふっ。やってやったぞ。…………ぐっ、手が痛い。」


 喜びながらも、小さな声で律ちゃんは痛がっている。先にやっていた5ゲームの疲労がきたのだろう。


「くそー。まあ、結構いい勝負できたしいっか。でも、月華に言うこと聞かせたかったなぁ。」


 美樹ちゃんは、悔しそうだが楽しそうにしている。てか、なんか物騒なことも聞こえたような気がするがきっと気のせいだろう。気のせいだと思いたい。


「負けたかぁ。何命令されるんだろう…。」


 律ちゃんとは俺になってからほとんど話してないから、どんな子なのか具体的にはあんまりわからなかったけど、今日遊んで、いい子だとは思うからよかった。


「じゃ、月華は律の言うこと聞いてね?」

「げ、月華。そ、その、膝枕をさせてくれ。」



「え?」


 律ちゃんの言うことに驚く。なんか、ジュースおごってとかそんな感じだと思ってたけど、全然違った。期待していなかったというと嘘だけど、こんなお願いをされるとは。うんうん。普通にご褒美じゃね?だって、律ちゃん普通に可愛いし。清楚系だし。俺のタイプだし。うん。なんていうか、これいけないことをやる前みたいな感覚がある。律ちゃんは月華という子の中に今いる自我が俺だってわかってないから言ってるんだろうけど。ちょっとした罪悪感もある。でも、これは命令だからね?ぐへへ。遠慮なく膝枕させていただきますよ。


 ◇


 おぉ。すばらしい。膝枕というものを体験したのはほぼ初めてだと思うが、うむ。太ももの柔らかさが癖になる。

 すべすべで、柔らかくて、なんといっても、ここからの眺め。律ちゃんの胸を見ることができる。うん、発展途上と評価をしたけど、発展途上には発展途上なりの良さがある。うん。胸の話は置いといてもここからの景色は最高だ。律ちゃんがこちらを見てきて、目が合った時は照れるけど、可愛らしいご尊顔を下アングルから拝むことができる。

 うん、そして、ともていい匂いだ。女の子ってなんでこんないい匂いがするんだろう。不思議でならない。前世でだって、通りすがったときに薫るいい匂いは歩いているときよく感じた。

 膝枕はとても心地がいいことに気づくことができた。いい発見だ。


 ◇


 膝枕をされて10分ぐらい経っただろうか。どれだけ膝枕をしていても、飽きない。あいかわらず最高な感触だ。


「月華、律そろそろ次のとこ行こ?」

「うん。そろそろ行こっか?」

「う、うん。」


 俺は、律ちゃんの膝から頭を離して、起き上がる。次はどこに行くんだろう。今日はまだまだ遊ぶぞー!!

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