第7話 過去の記憶
震災から3カ月経過したある日
八丘町で開かれる大規模な
祐司は絵名と共に一緒に参加している。
絵名「大規模な地震だったから、身寄りのない高齢の方がいたり、暮らしが大変でご家族が満足な葬儀をあげられない方がいるんだ。そういった方のために地域で
祐司「そうなんだ…僕は記憶がないけど命はあるからそういう意味では幸せな方だね」己の生への感謝を感じる。
絵名「本当にそうだよ…ゆうくんが死んじゃってたら私はすごい寂しかったよ。…あ、そうそう、祈る際はね緑山町の方々にも祈ってあげて。もともと住んでいたのはあっちの町だし。」
黙祷の時間、祈りを捧げたあと、僕はチラッと絵名をみた。真剣に祈る彼女の姿はとても綺麗であり、
心優しい彼女の過去をもっと知りたいと思った。
(その日の夜)
祐司「絵名、おかえり。」避難所のボランティアを終えたを彼女が戻ってきた。
絵名「良いにおーい!!中華かな?」
祐司「八宝菜だよ。具材は8種類も無いけど笑。」
食事後、絵名が甘えるようにくっついて来た。
絵名「作ってくれてありがとうね。すごい助かるよ。誰かに作ってもらうご飯って美味しいよね。」
祐司「いつも、絵名に作ってもらっているし、たまにはね。」
絵名「気持ちはすごい嬉しいよ。でも、私は好きでゆうくんに色々やっているから、気を使いすぎないでね。」
祐司「優しいね。友達とかにも世話を世話を焼くタイプだった?」祐司は絵名の過去を知りたいと思っていた。
絵名「実は、私は抜けているところがあって、結構友達や、ゆうくんに助けてもらっていたよ。」
絵名はバスケ部サークル時代の友人や、ファミレスでのバイト時代の話を始めた。
絵名「ファミレスのバイトでは、あの時はまだ10代だったし、制服とか傘とかよく忘れて、友達とかゆうくんに何度も助けてもらってたな。恥ずかしい。」
僕は大きな違和感を持った。絵名は僕と付き合ったのは震災の日から1年ほど前って言っていた。彼女は21歳くらいだから、「10代の頃の思い出」は
仮に、10代の頃からただの友人であった僕が、バイトの忘れ物を届けたりするだろうか?絵名の話を聞いても記憶は相変わらず霧の中だった。
祐司「意外な一面もあって驚いたよ!ところで絵名の過去に付き合っていた人ってどんな人がいた?」祐司は違和感の正体を探る質問をした。
絵名「え…なんで過去の恋人の話を…。」絵名の表情に影がさしたように声の調子が沈む。
祐司「僕からすると、絵名は優しいし家庭的だし、すごいモテそうだなって。結構素敵な男性と付き合ってたんじゃない?」
絵名「どうだろう…まぁ優しい人だったかな。」視線をそらし、手元のコップでお茶を飲みながら返す。
祐司「そうなんだ。優しい人なのに何で別れたの?」
絵名「……他に気になる人がいて、本気でその人が好きになれなかった。」長い沈黙の後、絞り出すように答えた。
絵名「この話はおしまいでいい?昔の男の人の話は、ゆうくんにあんまりしたくない。」
祐司「ごめん、ごめん。絵名のことをもっと色々知って理解したかっただけなんだ。」
絵名「うん、いいよ。」「私は、洗い物してくるね。」絵名はそそくさとキッチンへと向かった。
絵名「言い忘れてたけど、その気になっていた人ってゆうくんのことだよ。」
洗い物を終えた彼女が補足をしてくれた。
祐司は、先程の会話にあった絵名の
(祐司は、先ほどの会話を何度も頭の中で繰り返した。)
過去の恋人、気になる人、そして僕と付き合い始めた時期──。
それらを並べると、どうしても説明できない空白が浮かび上がってくる。
まるで絵名が、僕に“隠している何かと関係がある”かのように。
これからも絵名と共に暮らして行きたいからこそ、この違和感の正体を、確かめる必要があった。
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