第八話 二
二
詰め所の一階では五人の衛兵達がルナクスのザックを開いて荷物を漁っていた。日持ちのする携帯食料に裁縫道具、丈夫な袋、冷凍処理された魔獣の肉、まだなめしていない毛皮、牙。医療キットの薬品は未開封だった。
そして、金。複数の国の貨幣が幾らかと、帝国金貨が百枚。特に後者は数年は遊んで暮らせる額で、衛兵達は顔を輝かせた。
弓矢と鉈、ナイフ類はよく手入れされているが特別な品ではないようだ。売ってもそれほどの金にはならないだろう。
仲間内でどのように分けるか相談していると、ギルドに使いにやっていた若い衛兵が戻ってきた。
「ライセンス証ですが、本物でした」
一人が思わず叫んだ。
「嘘だろっ。だったら二百才以上ってことになるだろ」
「それが、なんかこいつ有名人みたいです。『セントラル山の狩人』って。絶対に手出ししてはいけないって、職員の爺さんが真っ青になってましたよ」
「……まずいのか。そういえば、そんな二つ名は聞いたことがあるな」
衛兵達は顔を見合わせる。
「えっ、もう手を出しちゃったんですか」
「いや。殴ろうとしたが、当たってはないな。素直に牢に入ったし」
「どうする。品も金も返して放免するか。今なら大ごとにはならんのじゃないか」
「だが……帝国金貨百枚だぞ。見逃す手はねえわな」
「……そうだな。弱そうだったしな。抵抗もしなかった」
「今は丸腰だ。このまま殺っちまえばいい。取り調べ中に抵抗したから仕方なく殺したってことにすればいい」
「……やるか」
「ぼ、僕は知りませんよ。どうなっても」
若い衛兵が怯えた表情で先輩達を見回す。
「うるせえっ。ならおめえの分け前はなしだ。隊長には黙っとけよ。チクッたらぶっ殺すぞ」
「なら、俺達五人でやるってことでいいな」
一人が言い、他の四人が頷いた。皆で剣を抜いて地下へ行こうと一歩動いた時、抑揚の少ない声が言った。
「では、お前達は敵だな」
五人が一斉に振り向いた。ルナクスはテーブルのそばに立っていた。広げられた荷物から鉈と菱形のナイフを手に取る。「ヒッ」と悲鳴のような声を上げて若い衛兵が後ずさりした。
一秒前まではそこにいなかった男に、衛兵の一人が呻くような声を投げた。
「て、てめえ、どう……」
彼は最後まで喋ることが出来なかった。ルナクスに近かった三人は鉈の一閃で首を落とされ、少し離れていた二人は額に菱形のナイフをめり込ませていた。
五つの死体が倒れ、鮮血がみるみる床に広がっていく。
「上司を呼んでこい。それで方針を決める」
ルナクスは無表情に若い衛兵へ告げた。彼は小便を洩らしながらもなんとか駆け出していった。
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