第4話 言語仕様書
# Infernalge言語仕様書 v1.0
## 言語概要
Infernalgeは、Malbolgeの「最も扱いにくく難解である」という特徴を極限まで推し進めた、究極的に邪悪なチューリング完全プログラミング言語である。
## 基本原理
### 1. 暗号的命令解釈システム
全ASCII文字(256種類)が潜在的な命令セットを構成するが、各文字の実際の命令は以下の要素によって動的に決定される:
- **実行時メモリ状態**: 現在のメモリ内容のハッシュ値
- **命令ポインタ位置**: 複数存在する命令ポインタの座標
- **実行回数**: 同一命令の累積実行回数
- **確率的要素**: 擬似乱数による分岐要素
#### 命令解釈関数
```
actual_command = f(ascii_char, memory_hash, pointer_positions, execution_count, random_seed)
```
この関数により、同じ文字でも実行コンテキストによって全く異なる動作を示す。
### 2. 3次元トーラス型メモリ空間
メモリは3次元トーラス構造(X×Y×Z = 64×64×64 = 262,144セル)で構成される。各セルは以下の特性を持つ:
- **値域**: 0-255の整数値
- **自己修正性**: セル値の変化が周囲セルの命令解釈に影響
- **量子的重ね合わせ**: 確率分布による複数状態の同時保持
#### メモリアクセス関数
```
memory_access(x, y, z) = quantum_superposition(
base_value + interference_pattern(neighbors) + temporal_shift(time)
)
```
### 3. 多重命令ポインタシステム
同時に最大8個の命令ポインタが3次元空間内を移動する。各ポインタは独立したスレッドとして動作し、以下の干渉現象を起こす:
- **衝突**: 2つ以上のポインタが同一位置に到達した場合の命令変異
- **共振**: 特定の距離関係にあるポインタ間での同期現象
- **量子もつれ**: 一方のポインタの状態変化が他方に瞬時に影響
#### ポインタ移動規則
```
next_position = current_position + movement_vector + interference_offset + quantum_fluctuation
```
### 4. 非決定性実行モデル
実行の各ステップで確率的分岐が発生する。確率分布は以下によって決定される:
- **基本確率**: 命令固有の基本確率分布
- **メモリ依存**: 周囲メモリ状態による確率修正
- **履歴効果**: 過去の実行履歴による確率変動
- **カオス要素**: 決定論的カオスによる予測不可能性
## 命令セット仕様
### 基本命令カテゴリ
1. **メモリ操作系** (Memory Manipulation)
2. **制御フロー系** (Control Flow)
3. **算術演算系** (Arithmetic Operations)
4. **I/O操作系** (Input/Output)
5. **自己修正系** (Self-Modification)
6. **量子操作系** (Quantum Operations)
7. **時空操作系** (Spacetime Manipulation)
8. **エントロピー系** (Entropy Operations)
### 動的命令マッピング例
```
文字 'A':
context_hash % 8 == 0: メモリ読み込み
context_hash % 8 == 1: ポインタ分裂
context_hash % 8 == 2: 時間逆行
context_hash % 8 == 3: 量子重ね合わせ生成
context_hash % 8 == 4: 次元回転
context_hash % 8 == 5: エントロピー増大
context_hash % 8 == 6: 因果律破綻
context_hash % 8 == 7: 現実歪曲
```
### 特殊命令
#### 時空操作命令
- **時間逆行**: 実行を過去の状態に巻き戻す
- **並行世界分岐**: 実行状態を複数の並行現実に分岐
- **因果律操作**: 結果が原因より先に発生
#### 量子操作命令
- **量子もつれ生成**: 複数のメモリセル間で量子相関を作成
- **波動関数崩壊**: 重ね合わせ状態を強制的に確定
- **不確定性原理**: 位置と運動量の同時測定を禁止
#### メタ操作命令
- **言語仕様改変**: 実行中に言語の仕様自体を書き換え
- **現実逸脱**: プログラムがシミュレーション境界を突破
- **認識災害**: 実行者の認知能力に直接的影響
## プログラム実行フロー
1. **初期化フェーズ**
- 3次元メモリ空間の量子状態初期化
- 8個の命令ポインタを確率的配置
- 暗号化キーの生成とハッシュテーブル構築
2. **実行フェーズ**
- 各命令ポインタが並行して動作
- 文脈依存命令解釈の実行
- 量子干渉とカオス的進化の適用
3. **終了条件**
- 全ポインタが無限ループに陥った場合
- 現実逸脱エラーが発生した場合
- プログラマーの精神が崩壊した場合
## エラーハンドリング
### エラーカテゴリ
1. **論理エラー**: 通常の実行時エラー
2. **物理エラー**: 物理法則違反
3. **形而上エラー**: 存在論的矛盾
4. **認識エラー**: 観測者効果による崩壊
5. **現実エラー**: シミュレーション境界の破綻
### エラー対応
エラーが発生した場合、以下の対応が自動実行される:
- 並行世界からの代替実行結果の取得
- 時間逆行による原因事象の修正
- 現実改変による矛盾の解消
- 記憶消去による認識的整合性の維持
## 最小プログラム例
### NOP(何もしない)
```
§∴※◊∂∃∀∄∅∆∇∈∉∊∋∌∍∎∏∐∑−∓∔∕∖∗∘∙√∛∜∝∞∟∠∡∢∣∤∥∦∧∨∩∪∫∬∭∮∯∰∱∲∳∴∵∶∷∸∹∺∻∼∽∾∿≀≁≂≃≄≅≆≇≈≉≊≋≌≍≎≏≐≑≒≓≔≕≖≗≘≙≚≛≜≝≞≟≠≡≢≣≤≥≦≧≨≩≪≫≬≭≮≯≰≱≲≳≴≵≶≷≸≹≺≻≼≽≾≿⊀⊁⊂⊃⊄⊅⊆⊇⊈⊉⊊⊋⊌⊍⊎⊏⊐⊑⊒⊓⊔⊕⊖⊗⊘⊙⊚⊛⊜⊝⊞⊟⊠⊡⊢⊣⊤⊥⊦⊧⊨⊩⊪⊫⊬⊭⊮⊯⊰⊱⊲⊳⊴⊵⊶⊷⊸⊹⊺⊻⊼⊽⊾⊿⋀⋁⋂⋃⋄⋅⋆⋇⋈⋉⋊⋋⋌⋍⋎⋏⋐⋑⋒⋓⋔⋕⋖⋗⋘⋙⋚⋛⋜⋝⋞⋟⋠⋡⋢⋣⋤⋥⋦⋧⋨⋩⋪⋫⋬⋭⋮⋯⋰⋱⋲⋳⋴⋵⋶⋷⋸⋹⋺⋻⋼⋽⋾⋿
```
このプログラムは472文字で構成され、実行時に0.001%の確率で宇宙の熱的死を引き起こす可能性がある。
### Hello World
```
※◊∂∃∀∄∅∆∇∈∉∊∋∌∍∎∏∐∑−∓∔∕∖∗∘∙√∛∜∝∞∟∠∡∢∣∤∥∦∧∨∩∪∫∬∭∮∯∰∱∲∳∴∵∶∷∸∹∺∻∼∽∾∿≀≁≂≃≄≅≆≇≈≉≊≋≌≍≎≏≐≑≒≓≔≕≖≗≘≙≚≛≜≝≞≟≠≡≢≣≤≥≦≧≨≩≪≫≬≭≮≯≰≱≲≳≴≵≶≷≸≹≺≻≼≽≾≿⊀⊁⊂⊃⊄⊅⊆⊇⊈⊉⊊⊋⊌⊍⊎⊏⊐⊑⊒⊓⊔⊕⊖⊗⊘⊙⊚⊛⊜⊝⊞⊟⊠⊡⊢⊣⊤⊥⊦⊧⊨⊩⊪⊫⊬⊭⊮⊯⊰⊱⊲⊳⊴⊵⊶⊷⊸⊹⊺⊻⊼⊽⊾⊿⋀⋁⋂⋃⋄⋅⋆⋇⋈⋉⋊⋋⋌⋍⋎⋏⋐⋑⋒⋓⋔⋕⋖⋗⋘⋙⋚⋛⋜⋝⋞⋟⋠⋡⋢⋣⋤⋥⋦⋧⋨⋩⋪⋫⋬⋭⋮⋯⋰⋱⋲⋳⋴⋵⋶⋷⋸⋹⋺⋻⋼⋽⋾⋿※◊∂∃∀∄∅∆∇∈∉∊∋∌∍∎∏∐∑−∓∔∕∖∗∘∙√∛∜∝∞∟∠∡∢∣∤∥∦∧∨∩∪∫∬∭∮∯∰∱∲∳∴∵∶∷∸∹∺∻∼∽∾∿≀≁≂≃≄≅≆≇≈≉≊≋≌≍≎≏≐≑≒≓≔≕≖≗≘≙≚≛≜≝≞≟≠≡≢≣≤≥≦≧≨≩≪≫≬≭≮≯≰≱≲≳≴≵≶≷≸≹≺≻≼≽≾≿⊀⊁⊂⊃⊄⊅⊆⊇⊈⊉⊊⊋⊌⊍⊎⊏⊐⊑⊒⊓⊔⊕⊖⊗⊘⊙⊚⊛⊜⊝⊞⊟⊠⊡⊢⊣⊤⊥⊦⊧⊨⊩⊪⊫⊬⊭⊮⊯⊰⊱⊲⊳⊴⊵⊶⊷⊸⊹⊺⊻⊼⊽⊾⊿⋀⋁⋂⋃⋄⋅⋆⋇⋈⋉⋊⋋⋌⋍⋎⋏⋐⋑⋒⋓⋔⋕⋖⋗⋘⋙⋚⋛⋜⋝⋞⋟⋠⋡⋢⋣⋤⋥⋦⋧⋨⋩⋪⋫⋬⋭⋮⋯⋰⋱⋲⋳⋴⋵⋶⋷⋸⋹⋺⋻⋼⋽⋾⋿∞∝∜∛√∙∘∗∖∕∔∓−∑∐∏∎∍∌∋∊∉∈∇∆∅∄∀∃∂◊※
```
このプログラムは1,416文字で構成され、67.3%の確率で "Hello World" を出力し、
23.1%の確率で "Hell o World" を出力し、
9.6%の確率で現実を "Hello World" に改変する。
## 開発環境要件
- **RAM**: 最低64GB(量子状態シミュレーション用)
- **CPU**: 並行処理対応(最低8コア)
- **精神的耐性**: 極めて高い水準が必要
- **現実認識**: 柔軟性必須
- **保険**: 精神科医療保険の加入を強く推奨
## 警告事項
1. **認識災害**: プログラム理解により不可逆的な認知変化が発生する可能性
2. **現実汚染**: 実行環境が現実世界に予期しない影響を与える可能性
3. **時空撹乱**: 因果律の破綻により過去が改変される可能性
4. **量子もつれ**: プログラマーの意識が量子状態と永続的に結合する可能性
5. **存在論的危機**: プログラムの実行により存在そのものが疑問視される可能性
この言語の使用は完全に自己責任であり、いかなる宇宙的、形而上学的、存在論的損害についても製作者は一切の責任を負わない。
---
*「プログラミング言語として機能しているのか、それとも我々がプログラムとして機能しているのか、その境界は既に意味を失っている」*
- Infernalge開発チーム最後の記録より
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます