第2話

 足元の感覚が変わった。どうやら土のようだ。そして草のようなものが、微風になびいて私の足に当たる。地面の感覚や草木の香りが懐かしい。


 光が消えたようなので、閉じていた目をそっと開けると、そこは見知らぬ丘の上だった。


「ええ~? ここどこ?」

 

 私は目を見開いて驚いた。

 てっきり、すぐに街に入れると思っていたが、よくよく考えたら、街中に突然人が現われたらおかしいか。


 そして私の恰好はというと、この世界に馴染めるようにしてくれたのか、町娘っぽいスカート姿であった。


 とりあえず、今現在一番心配かつ、楽しみなスキルを確認してみる。


「えーっと? どうするんだろう? ファンタジー系のゲームのイメージでいいのかな? ステータスオープン」


 そう呟くと、本当にステータス画面が出てきた。自分で出しておきながら、ちょっとびっくりした。その反面、期待に目を輝かす。


「どれどれ……スキルが『スキル創造』は確かにあるね。それ以外のスキルはなし?」


 神様からきちんと『スキル創造』スキルを貰えていたことに安堵した。そしてふと思い出したように、わくわくする。


「そうだ! 魔法は?」


 期待しつつステータス画面を探してみるが、魔法の表示はされてなかった。


 がっくりとうな垂れる私。でもまあスキル創造で魔法スキルも作れるかな? そのうち試してみよう。

 顔をあげて気を取り直す。


「さて、神様になったといっても、現在は何もない普通の人間。どうしたものか……」


 まずは、神が死んだら元も子もないから、自分が死なない能力を付けないと。

 そこで思い浮かんだのが、『不老不死』と『不死身』。神様ならありそうだよね?

 早速スキルを作ってみることにする。


「スキル創造! パッシブスキルで、スキル名は『不老不死』、効果は歳をとらないし、寿命で死なない!」


 すると小さなダイアロメッセージが現われた。そこに視線を向けると、『不老不死のスキルを獲得しました』と表示されている。


「おお! ファンタジーっぽい。いやゲームか?」


 見た目に変化は見られない。まあ当然と言えば当然か。


 些細な疑問はさておき、私は成功したことに喜びつつ、続いて『不死身』のスキルも創造してみた。

 同じくダイアログにメッセージが出てきた。だが、先ほどとは少し違い『不死身のスキル創造に失敗しました』と表示されている。


「え~? なんで? ……ひょっとして神様でも死ぬことがあるとか? いや、でも不老不死はできたしな? 寿命はないけど、死ぬことはあるとか? そういえば神と悪魔の全面戦争で神も死んだみたいなことを話していたな?」


 考えても仕方がない気がしてきた。

 とりあえず不老不死が、できただけでも嬉しく思う。今までの青春できなかった分を、取り戻せるどころか、この年齢なら飽きるほど青春が送れるだろう。


 『青春』『不老不死』


 その流れでいくと、思い出はいっぱい貯まりそうだ。神様の仕事も色々ありそうだし、忘れないためのスキルが欲しい。


 色々考えてみた結果、『絶対記憶』のスキルを作ることにした。能力的には、どんな些細なことも全て覚えることが出来て、尚且つ、脳に負担がかからないという都合のいいもの。


(できるかな……?)


 小さなダイアロメッセージには、『絶対記憶のスキルを獲得しました』と表示されている。


(やった!)


 そう思ったのも束の間、不老不死と同じで、記憶力が絶対記憶のスキルで良くなったのかは、わからないが、そこはスキル創造の能力を信じよう……と思った。


「さてと……」


 私は丘の上を歩き回り、遠くを見渡す。街でも村でもないかと思ってだ。


 サクサクと草を踏みつつ、歩き回る。久しぶりに歩けることがとても楽しい。すると遠目に建物らしきものの集まりが見えた。


「ん~? あれは? 村……かな?」


 少し距離があるので、そこに向かうか悩む。ふと閃いた。よく物語で『千里眼』とかいう、遠くを見渡せる能力を思い出した。私は早速、千里眼のスキルを創造することにした。今度も獲得できた。やはり『不死身』というのは、神様といえどないらしい。


 それはさておき、再びその場所を見てみる。


「あれ?」


 普通に見たけど、見えるのは同じ。あ、スキルを使うことをイメージしないといけないのかな?


 三度、その場所を見てみる。もちろん今度は千里眼のスキルをイメージして。


「おお!? 見えた! う~ん、村か~。大きな城下町みたいなところがよかったけど、贅沢は言えないか。とりあえず村に行ってみよう」


 そして私は丘を下り、村へと向かった。

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