名前が力になるゲーム世界、前世の名前が長過ぎて圧倒的有利な転生を果たした男、あらゆるヒロインからの愛が重過ぎる。
三流木青二斎無一門
第1話
俺が生まれた時、余りにも珍し過ぎる苗字に敗けぬ様に、両親が名前を名付けた。
その名前は当時ではキラキラネームに該当し、世間体的にもそれがあまり浸透していなかった時代であり、学年が上がる度に俺の名前に対して言及された結果……俺は引き籠りになった。
引き籠り歴、十年に突入した頃合い。
遂に両親は俺の存在を一つのルーティーンとして対処し始めた。
日に三回の食事を提供すれば良い、後は関わる事は辞めた。
精神的に問題があるから病院に行こうとか、そろそろ働いて欲しい、自立して欲しいと言う言葉にも耳を貸す事無く、俺はこの小さな部屋の中で、勇者なりギャングなりなる道を進んでいた。
そう、ゲームである。
ゲームだけが俺の心を癒してくれる代物で、長く遊べれば遊べる程良かった。
中でも、俺の趣向に嵌ったゲームが一つあった。
『カオス・ネーム・カースド・スペル』
和風な世界観で、複数ある部族の中で誕生し、限られた期間の中を生き抜くと言う成長と成り上がりが出来るゲームだ。
このゲームの面白い所は、『名前』が武器になる、と言う部分だ。
出生ステータスを決める際に名前が割り振られる。
その名前の意味に応じて、ステータスの上昇やスキルが得られるのだ。
田中太郎の場合は
『田』……技能『田植え』獲得。
『中』……技能『貫通強化』獲得。
『太』……技能『大食漢』獲得。
『郎』……性別が男性の場合、能力値上昇。
と言った感じであり、兎に角、強そうな漢字を混ぜ合わせて名前を作る事で、序盤に最強キャラを作る事も可能なのだ。
周回する度に強そうな文字を入手出来る為、再度ゲームを始める際には気軽に強くてニューゲームが出来るのだが、この名前システムには上限がある。
先述の田中太郎、と言う例なのだが、あれはあくまでも例えであり、もっと形式の様なものが存在する。
この世界の住人は、基本的に「部族の名称」、「本人の名称」、「役割・司る職の名称」の三つまで名付ける事が出来ていて、先程の田中太郎を当て嵌める場合は
『
なので、自由に名前を決めれる文字はたったの六文字なのだ。
その六文字を組み合わせて最強の名前を作るのだが、この名前システムにはもう一つ重要な役割があった。
それが、作中に登場する『
その際に『文字化ヶ』から力を得る代わりに、名前の一部を寄越せ、と言う代価が発生するのだ。
その際に自らの真名を差し出すと『文字化ヶ』から『
一度奪われた文字は、『文字化ヶ』と再度エンカウントし、倒さなければ元に戻る事が無い、其処ら辺がシビアであり、このゲームの醍醐味とも呼べる点である。
「はあ、……もうそろそろ、朝になるな」
俺は時間を確認した末に呟く。
ゲームを楽しんだ俺は深夜の動画配信を見る為に仮眠を取る事にしたのだが。
「けほ……?」
煙の臭いで頭の中がクラクラする。
部屋の外を確認しようとしたが、何故か扉が開かなかった。
「ちょ……なんだよ、これ」
段々と部屋の中に煙が入り込んで来る。
それと同時に、熱の様なものを感じた。
「火事……おい、開けてくれ、おぉいい!!」
俺は叫んだが、誰も反応しなかった。
部屋の内側から窓は侵入されない様に板で封鎖している。
扉が開かないとなれば……逃げ道はない。
そして、長年部屋の中に居た俺が、非力な力で外に出る事は出来ず。
結果的に、俺は燃え盛る家と共に焼死するのだった。
まさか、自らの名前と似通った死になるとは思わなかった。
「祭祀長、この赤子の魂に刻まれた
……その聞き慣れた言葉と、見知らぬ声に俺は反応する。
目を開くと、新鮮な視界が暗闇と灯りを写し込んでいる。
「あう」
……あれ?俺の声?何故にこんなに可愛らしい声、って。
あれ、俺、赤ん坊になってる?
「では、確認する……『視』」
俺の顔を近付けて、白髪の婆が顔を覗き込ませた。
そして、俺の顔を見るや否や驚きと共に目を見開いた。
「な、なんと……この赤子、烙印鑑が十四文字もあるぞい!!」
十四文字?……それってもしかして俺の名前の事か?
「普通は六文字である筈なのに……なんと言う事かっ」
俺を抱く男が驚きの声を荒げている。
と言うかもしかして、此処って……『カオス・ネーム・カースド・スペル』の世界、なのか?
俺が聞き慣れた言葉である烙印鑑……これはこの世界の住人である
本来ならば六文字が基本なのだが……十四文字って、もしかして俺の前世の名前が反映されているのか?
……俺の名前は『
どうやら、文字が力になるこの世界で、俺は圧倒的有利な存在となるらしい。
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