第2話「その名は…『DAX』よ!「待て、それじゃあ母さんは…一体何者なんだよ!?」



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湯気の立つ味噌汁の向こうに、いつも通りの母さんの優しい顔がある。

だが、俺の心はまるで凪いだ海に投じられた鉄球のように、静かに、しかし確実に混乱の底へと沈んでいくところだった。


(…信じられない。俺が、父であるチンパンジーと、母であるオランウータンの間に生まれたハーフ…。いや、それはもう昨日聞いた。問題はそこじゃない)


俺は目の前の温かい食卓を築き上げた張本人を、改めて見つめた。


**俺**:「なあ、母さん…。俺の出自はもう受け入れた。でも、そうなると…毎朝こんなに完璧な合わせ出汁の味噌汁を作ってくれる母さんは……一体、何者なんだよ!?」


**母**:「フフフ…よくぞ聞いてくれたわ、我が息子よ」


湯気の向こうで、母さんはさも当然という顔で優雅に微笑んだ。


**母**:「私はね、森の王たる『MONKEY』と、力強き『GORILLA』の血統を継ぐ、言わば霊長類のサラブレッド!」


**俺**:「スケールがデカすぎて逆に分からん!いいから名前を教えろ!あんたの名前は!?」


**母**:「その名は…『DAX』よ!」


キラキラと効果音が鳴りそうな、完璧な笑顔だった。


**俺**:「DAX(ダックス)!? それホンダのバイクじゃねーか!しかもモチーフは犬のダックスフントだぞ!猿でもゴリラでもなく、犬と鉄の塊になってんじゃねーか!情報量が多すぎて頭がバグるわ!」


**母**:「あら、物知りなのね。…でもあなた、もしかしてガーガー鳴く鳥のアヒルさん(Ducks)の方と、勘違いしてるんじゃないかしら?」


**俺**:「どっちでもねえよ!猿でも鳥でも犬でもバイクでもねえ!あんたは霊長類のサラブレッドで、俺の母さんだろが!」


俺の魂の叫びにも、母さんは動じない。湯呑をそっと持ち上げ、静かにお茶をすする。そして、衝撃の事実を告げた。


**母**:「ええ、そうよ。バイクのDAX。…あの独特のTボーンフレームの美しいフォルム、あれは私の背骨がモデルなのよ」


**俺**:「骨格レベルでバイクなのかよォォォッ!!」


俺の絶叫は、食卓の味噌汁の湯気に吸い込まれて消えた。母さんは「早く食べないと冷めるわよ」と、だし巻き卵を俺の皿にのせてくれた。その背骨は、確かに美しいT字を描いているように見えた。

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