第2話:仕組まれた罠
「美鈴、天恵継承の式典の準備は出来ているか?」
「もちろんです、お父様」
「ぐれぐれも、体調は万全に整えておくように」
「はい……」
私、天王寺美鈴。20歳。
天王寺家に生まれた私は神話守を継ぐ人間として、幼い頃から教養を学び、この村を守ることだけを考えて生きてきた。
神話守というのは、村に天災が起きないよう天の上に住む雷神様と話を出来るもののことで、雷神様と心を通わせることにより、災いや、災害を防ぐ役割をしている。
その役割は女性だけに与えられた大切な役割と言われている。
「お母様、私が必ず村を守って見せます。見ていてくださいね」
2年前まで神話守の役割を務めていたお母様は、流行り病いにかかり亡くなってしまった。
その後を継ぐものとして、私は母──天王寺乙葉から守りの石を託されたのだ。
石を託されたものが、次の神話守になる。
村はではそういう決まりであった。
神話守になったものは神に近い存在として崇められ、称えられる。
いわば村を守る女王のようなものだ。
だからこそ私がしっかりと村の平和を守らなければいけない。
私は守りの石をぎゅうっと握った。
「お母様、村も人も2年間平和に暮らしております。お母様のご加護、ありがとうございます」
この石の効果はあと1年と言われている。
守りの石の効果が切れる前に、次の神話守を決める大事な式典を行うのだ。
未だかつて二十歳にならない者が神話守になった例がないことから、私が20歳になるのを待ってから式典は行われることになった。
その式典が明日に控えている。
わたし……頑張ります。
村に住む人が平和で幸せな生活を送れるように。
すると、私の部屋の扉がガチャっとあいた。
「ま~た石に何か話しかけてる。本当気持ち悪いったらありゃしないわ」
「麗羅……」
彼女の名前は麗羅。
白い肌に吊り上がったネコのような目、装飾品をいくつも付けた派手なドレスを着ている。
彼女は私にとって義理の妹にあたる存在だ。
お母様を無くした後、お父様は再婚し私に新しいお母様と妹がやってきた。
新しいお母様の名前は真澄。
「お姉様ったら……また外の植木に水をやったわね。あんたのせいで足が濡れたってお母様が怒っていたわ」
「お花が枯れておりましたので……」
「ふんっ、花や草なんか放っておけば成長するのよ。それを村にまで行って花に水をやったり田んぼの様子を見て来たり……村人に媚売って……本当、この子は偽善者なんだから」
「そんなつもりは……」
私がうつむいていると、真澄お母様まで私の部屋へ入ってきた。
「本当、あの女とそっくりで媚びることは上手い女だわ。きっと神話守だってお父様に媚を売ってもらった権利に違いないわ」
「そんな言い方やめてください……!お母様は立派な人です!」
真澄お母様と麗羅はわたしのことをあまりよく思っていないらしい。
私ともお父様がいる前でしか食事をしてくれないし、私の履物を隠したり、私の服に泥をかけたりと、二人がくるようになってから、毎日のように嫌がらせをされている。
どうして真澄お母様と麗羅はそんなに私が嫌いなんだろう……。
私は仲良くしたい、のに……。
「まぁいいわ。あとに見てないさい、お姉様」
麗羅と真澄お母様は私を睨みつけると、部屋から立ち去っていった。
“みんな仲良く平和な村を作りたい”
私の理想はこれだ。
お母様や麗羅に認めてもらえるように努力しないといけない。
もし神話守になって、立派に村を守ることが出来たら私は麗羅や真澄お母様にも認められるかしら……。
地面を見つめながら、私は窓の外を見た。
明日は大事な式典がある。
今日はあまり無理をせずに体調を万全に整えて、明日をむかえないと。
いよいよ私が……神話守になるのだ。
お母様、私ちゃんと頑張りますから……見守っていてくださいね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます