第5話 特別な人間でありたい
「魔力は3分に1回復、魔力が尽きると倦怠感、ステータス画面は表示場所変更可能、ステータスの各項目をタップすれば詳細が見れる、魔剣術は身体の動きが良くなる武術スキル、自分の魔力だけじゃなくダンジョン内の魔力もメガロに付与可能、地上では魔法は使えない(前に水魔法が使えたのは謎)、チュートリアルダンジョンは出たら消滅と」
豪は分かったことを整理しながら自室へ戻ると、壁に魔剣メガロを立てかけた。様々な事を確かめながら、魔力が尽きたので帰ってきたのだった。
「魔剣がドロップしたということは本格的な命のやりとりが始まるんだ。メガロをゲットして世界ランクが1位に、魔剣士になったというのはそういうことなんだろ」
キュッと豪は顔を引き締める。しかし、ニヘラっとすぐに顔が崩れる。
「俺が1位( *´艸`)ぷふっ……。俺が……世界最強!!」
ルンタルンタと豪は小躍りする。世界ランクとは地球の総人口の強さランキングであり、世界ランク1位とは人類の頂点に豪がいると示す意味であることを、豪はステータスの詳細画面で知り、上機嫌になっていた。
けれど、しばらく余韻に浸ると豪は再び顔を引き締める。
「落ち着け、俺。まずは情報収集だろ?」
豪はスマホを手に取り、メガロの刀身を撮影する。
そして愛用の生成AI「メガロ・チャット」に質問を投げかけた。
―この剣の刀身に書かれた文字が何語か教えてくれ
メガロ・チャットはしばらくの沈黙の末に返答する。
「これは古代ギリシャ文字です。
魔法を宿して輝き、成長する、と書かれています」
「ギリシャ語か!道理で知らないわけだ。ヘパイストスはギリシャ神話の神だからギリシャ語になるのは納得だな」
つっと豪は刀身の文字を撫でる。
指の腹にヒヤッとした金属の感触がして、その感触に豪はゾクリと武者震いした。
「輝き、成長する。いい響きだよな」
そして、豪は獰猛に笑う。バッサバッサ敵を切り裂いて世界1位を独走する未来へと思いを馳せる。また顔が崩れ出し、豪はパンッと軽く両頬を叩いた。
「まあ、落ち着け。俺。さて他のステータスを得た人たちはどうなってるかな?」
余韻に浸りつつ、豪はスマホのツブヤイターを開く。すると、海浜幕張以外にもダンジョンが現れた事が話題になっていた。
「世界中にダンジョン発生、全都道府県に発生、ね。潜った人も結構いるじゃないか!」
その中でもバズっている投稿は、モンスターを撮影した写真と共に投稿されたものであった。
『これ、ゴブリンですよね?ファンタジーの王道キタ――(゚∀゚)――!!#埼玉#大宮#ダンジョン』
「ゴブリン?」
和風暖簾の玄関先で撮られたらしいアイコンで、料亭旅館『
『我が旅館の近くで謎の構造物出現!?ネットでダンジョンゲートと言われるそれにすぐ特攻できた狂者の一人は料亭旅館「風雅」の若女将二階堂双葉です。それでは実況を開始致します!旅館の売名バッチコーイです!#埼玉#大宮#ダンジョン』
その投稿には自撮り写真付きで、スライムを背景に、ハツラツとした丸く大きな瞳で茶の髪を大きなお団子に結っている女性が明るく笑う写真があった。女性はリュックを持ち、片手に木刀を携えていた。
『若女将の獲物は木刀です。銃刀法的に安全なものを選びました!スライムを倒したらな、な、なんとステータス、グリーンスライムの魔石、ヒールポーションⅠをドロップしました!魔石とポーションは触れたらゲームみたいに説明画面が出ました!#埼玉#大宮#ダンジョン』
『この調子で倒しまくりますよ!レベルが2に上がりました』
『スライムからスキルオーブ『風の攻撃』をドロップ!説明文は以下の通りです。
『使用者の内なるイメージを具現化した風の攻撃魔法を放てる』風の攻撃を使ったら矢が放てるようになりました#ファンタジー#魔法#ダンジョン』
『フィールドボスというのを倒してレベルが3に上がりました!ボスはウィンドエメラルドスライムという名でした!矢と木刀でボコボコにして倒しましたが、動きがかなり速かったです。倒したら宝箱が出現しました。じゃーん!!#埼玉#大宮#ダンジョン』
『中身はキュアポーションⅠ、疾風の羽飾りでした。キュアポーションは魔力を10%回復、疾風の羽飾りは速度10早くしてくれるそうです#埼玉#大宮#ダンジョン』
『これ、ゴブリンですよね?ファンタジーの王道キタ――(゚∀゚)――!!#埼玉#大宮#ダンジョン』
『ゴブリンは矢で難なく倒せるようです!木刀だと厳しいかもですが、行けるところまで行きたいと思います!#埼玉#大宮#ダンジョン』
『緊急事態です!『あなたのSNS発信にダンジョン神ミノスが大変よろこんでいます。スキル:風の祝福、水の癒しを授けます』という画面が出て、スキルをゲットしました!私の投稿がバズったからでしょうか!?神様がいるんですか!?#埼玉#大宮#ダンジョン』
『風の祝福は状態異常を回復する魔法でした。状態異常というと眠りとか毒とか出てくるんですかね?#埼玉#大宮#ダンジョン』
『水の癒しは治癒魔法でした。説明文は以下の通りです。『傷や怪我、疲労を癒す魔法を放てる。生命力を回復する』試しに使ったら、ささくれが治りました!そしてヒーラーという職になりました!ファンタジーでは定番の回復職ですね!#埼玉#大宮#ダンジョン』
『ゴブリンはやっぱり木刀では倒せませんでした。うっかり攻撃を食らうととても痛いです。青あざになってしまう所ですが…水の癒しを使えばあら不思議!痛みはなくなりました!#埼玉#大宮#ダンジョン』
『魔力が尽きそうなので一旦帰ります。後で手に入れた物の一覧写真を投稿しますね。参考になると思いますので私のステータスも載せます。どうぞ料亭旅館「風雅」をよろしくお願いします!以上、若女将からでした!#埼玉#大宮#ダンジョン』
「インプレッションがどれも1億を超えてる!?凄まじいな」
豪はその後に投稿されたドロップ一覧の写真を拡大する。写真にはステータスウィンドウ、緑の魔石が一掴分ほど、ヒールポーションが30個、キュアポーションが2個、疾風の羽飾りがあった。
ステータス
名前:二階堂 水葉 レベル3
世界ランク:10
職業:ヒーラー
属性:水、風
生命力 35
魔力 1/30
筋力 26
耐久 24
器用 28
速度 30
スキル 魔力操作 風の攻撃 風の祝福 水の癒し
「ステータスは写真に撮れて他人にも見えるのか。2属性持ちでレベルは3。数値は全体的に見れば俺と変わらないように見えるが、世界ランクは10位、か。写真を撮る余裕があって生還ということはスライムに続いてゴブリンもそんなに強くはないのか?」
ふむ、と豪は考える。
リプを読んでみると、賞賛と混乱の渦で、インプレゾンビも沢山ついていた。
「木刀だとゴブリンを倒せるほどの威力は出せないから帰ったという事は、ゴブリンは少なくとも刃物がいるレベルなんだろう。水の癒しは魔力を回復しないようだし、帰ったというのは妥当な判断かもな」
豪はアカウントの上部にスクロールを戻してフォローする、をタップする。
「とりあえずフォローしとこう。発生してすぐ、迷いなく潜りに行ったという事はこの人は今後も潜るだろうし、情報発信もしてくれるだろ」
しかし言い終えて、豪の顔は渋い。
投稿を見てチリチリとした焦りが生まれ始めていた。
「若女将みたいにダンジョンに潜る人はどんどん増えていくだろう。そうしたら、俺のアドバンテージはすぐ追いつかれてしまうかもしれない。若女将は既に俺と同レベルなんだよな」
豪は深く息を吸って吐く。
「俺は特別でありたい。底辺だった俺に宿った全属性魔法の適性、魔剣メガロ、職業魔剣士。それら世界ランク1位のアドバンテージがあれば俺は特別になれるか?」
豪はちらりと壁に立てかけてあるメガロに視線を移した。
「ミノスが言ったように本当に1年で経済圏が確立されるんだとしたら、ダンジョンに潜ることで俺は社会的にも上位の特別な人間になれるかもしれない。いや、なってやる!若女将にも負けねえ!」
豪は決意を新たにした。
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