第5話『砂漠の花と巨乳』〜The Bloom Trap〜


 板胸砂漠を歩き始めて数時間。


 容赦ない日差しと平らな地形に、仲間たちは汗を流しながらも進み続けていた。


「はぁ~……喉カラカラ~! パイタロウちゃ~ん♡ お水ちょうだい♡」


 ミルクはデレデレとパイタロウに寄り添い、巨乳を押しつけながら甘える。


「ほら、少しずつ飲め。砂漠じゃ水は貴重だからな」


「ありがと~♡ やっぱパイタロウちゃん優しい~♡」


 彼女は嬉しそうに笑い、また一歩、二歩とテクテク歩いていく。


 その時だった。


「わぁ♡ 見て見て! お花咲いてるよ! すっごく綺麗~♡」


 砂漠の真ん中に、不自然に咲き誇る大輪の花。

 乾いた荒野に鮮やかな色はあまりに目立ちすぎる。


「ミルク、待て! 不用意に近づくな!」


 パイタロウが声をかけるが、ミルクはすでに花へ駆け寄っていた。


「だってぇ、こんな砂漠で咲いてるなんて珍しいじゃん♡ 触ってみよ~っと♡」


 その瞬間――花弁が裂け、うねる触手が飛び出した。

「きゃあああっ!?」


 ミルクの手首と足を絡め取り、巨乳にまで巻きついて締め付ける。


「や、やめてっ♡ おっぱいがぁっ……! つぶれちゃうぅっ♡」


 触手はいやらしくおっぱいを押しつぶし、吸盤が衣服をはじき飛ばそうとする。


「ミルク!」


 パイタロウが駆け寄ろうとするが、砂の下から花に似た怪物の本体が姿を現した。


 それは「フラット・デザートフラワー」。獲物を絡め取り、魔力を吸い尽くして板胸に変える恐ろしい魔物だ。


「イヤぁぁ!! パイタロウちゃ~ん助けてぇ♡」


「くっ……!」


 パイタロウが剣を振るうが、触手の数が多すぎる。


 その時、影の中から閃光が走った。


「“迅雷・影牙断”!」


 チェストが一瞬でミルクの背後に回り込み、触手を切り裂いた。


「“絶影牙・双閃斬”!」


 さらに二本の短剣が同時に閃き、ミルクを縛っていた触手をまとめて叩き斬る。


 ミルクの体が解放され、チェストが素早く抱きとめた。


「お前は本当に……トラブルばっか引き寄せるデカパイだな!手がやけるぜ、、」


 その言葉に、ミルクの頬が一気に真っ赤になる。


「な、な、なにそれぇぇ!? アンタ!!その言い草!ほんっとに失礼なんだから!!」


「事実だろ! お前のおっぱいが重すぎて、引き上げるのに苦労したんだよ!」


「な、なによそれぇぇ!! アンタ!! おっぱいは大きいほど偉いんだから! 助けにくいとか言うなぁぁ!!」


「デカけりゃいいってもんじゃねぇ! 無駄に揺れて足手まといなんだよ!」


「アンタ!! 口が悪いのも大概にしなさいよ!! ほんっとムカつくんだから!」


 再び二人は取っ組み合い寸前。


「もうやめなさい!!」


 雷鳴のような声が響き、マローネが杖を振り下ろした。 


「二人とも、いい加減にして。……今は敵がまだ残っているわよ」


 見ると、花の怪物はまだ健在。


「フラットの名のもとに……」


 触手を再び伸ばしてきた。


「俺が背後を取る!」 


「じゃ、アタシは前でおっぱいパワーぶつけてやるっ!」


 二人は口論しながらも同時に駆け出した。


 チェストは影に紛れ、背後から本体の茎を斬り裂く。


「“闇迅牙・背裂斬”!」


 鋭い一撃が根元を切り裂き、魔物が悲鳴を上げる。


 同時にミルクが聖なる光を解き放つ。


「おっぱいは世界の希望ぉぉ! 《パイパイ・バースト》!!」


 巨乳から迸る光が花を直撃し、爆炎が砂漠を揺らした。


 やがて魔物は枯れ果て、触手は砂の中に消えていった。


「ふぅ……やったな」


 パイタロウが剣を収める。


「はぁ……危なかったわね」


 マローネも肩で息をしながら頷いた。


「助けてくれたのはありがとだけど!!アンタ!! 」


 ミルクが顔を赤くしながらチェストを睨む。


「フン……事実を言ったまでだ」


「ほんっとに……っ!」


 砂漠の空気に、また二人の言い合いが響き渡る。


 だがパイタロウとマローネは、そんな二人を微笑ましく見つめていた。


NEXT →第6話「オアシスでひと休み」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る