濃霧

気が触れる。熱い鉛が私の体に触れる、右脇腹を殴打する。勢い余ったそれは体の内側まで入り込み私として溶け出す。溶けていくそれを生命が拒絶するように純血が流れる。その様はありふれた美しさで特別な感情を持ち合わせない。只、悲しみだけのものだ。

遠のいた意識も、故郷も、勝利も全てが溶け合ってなおも拒絶する私の体は、とうの昔に鉛の塊だったのだろう、まっすぐ飛んで行き衝突し、溶け合い、潰れる。

何ら変わったことのないものを人生と決めつけ生きていた。血が止まらない

涙は出ない。されども血は流る。僕の命が忘れたものを取り戻すように、ゆっくりと、ゆっくりと、血が流れていく。その様はやはりありふれたもので、僕には理解できなくて、ただ泣き始める事しかできない。

その様は生まれたての赤子のようなもので、すべてと溶け合ってなおも私はずっと泣いていて、それを鉛と呼ぶにはあまりにも人間で、私は泣く事しかできない。

血が止まらない、腹からから流れていった血が靴を濡らす。服はとうに赤茶色で

僕はただずっと座っている、溶けた銃を抱え込んで涙と血を流しながら。

そんな僕を、世界が全てから隠すように、戦場に濃霧を。

ずっと見ていた皆がいなくなり、戦争が終わり、飛行機が空を飛び周り、電波が空を舞い、花が咲き、新たに木が芽吹く。木漏れ日の中、自然と溶け合い僕は見ていた。

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