懐かしの話

(SE 弁当箱、片付ける音)


「……」


「……」


「この遊園地、もう入れないんだなぁ」


「……」


「まぁそうだよな。父さんたちが若い頃も遊んだって言ってたくらいだし」


「……」


「あのゴーカート、いつも最後のカーブでギギって音がして怖かったな。すごく揺れるし」


「……」


「観覧車も……」


「観覧車……私、好きだった……」


「そ、そうか」


「山の上だから空の上にいるみたいだし、町がすごく小さく見えるし……あと、かかってる曲も好きで……」


「あ、あぁ、あれか、タンタンタンタン〜」


「……先輩、それ全然違うよ。それ、小学校のとき、掃除の時間にかかってたやつ」


「あれ、そうだったか?」


「そうだよ。タタタタタタタタタ〜だよ」


「あ!そうだそうだ!で、タララララララ〜だよな」


「そうそう。それ、後から有名なクラシック曲だって知ってびっくりした」


「そうなんだ!」


「うん……」


「あ、後で、タイトル教えてほしい、な」


「うん……」



「……」


「……」


「せ、先輩。そろそろ帰ろ……」


「お、おう」



(SE 車のエンジン音)


(SE ナナ、鼻歌)



「その曲……」


「これは、遊園地が閉園するときの曲」


「そっか……こっちも、有名な曲?」


「うん」



なんだか懐かしい気持ちと、少し淋しい気持ちになりながら、車は家に到着した。



膝の上の荷物を助手席に置きなおし、オレは車のドアを閉めた。


(SE 車のドア 閉まる音)



「今日は、ありがと……」


「う、うん……じゃ、先輩……また」


「え?あ、うん」



たぶん曲のタイトルの連絡のことだろうなと思いつつ、オレは玄関前で去っていく車を見送っていた。



(SE 車 走り去る)

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