第9話:配信アーカイブ#302

:もうそろそろボス部屋だな

:ようやくミクちゃんの両親が助かるようになるのか

:ここのボスってどんな奴だっけ?

:正直五層は実入りが少ない中間ダンジョンって認識でしかないからあんま覚えてないわ

:景色代わり映えしねぇから配信映えしねぇんだよな

:普通の探索も大概配信映えしねぇけど、五層は特にね

:裏道行ったら結構需要あるアイテム落ちてんだけどね

:香木とか皮膚炎治す樹液とか、あと武器の柄とかに使える丈夫な木材とかあるんだけどね

:ただ正道も裏道もとにかく配信映えしない。同じ景色ばっか続く

:正道で手に入るのが本当売れるもんが無い

:幼虫は需要ありそうだぞ

;一部のゲテモノ好きにな!!


「うーん……僕も正直覚えてないんだよねぇ。まあ顔見たら思い出すと思うけど」


:大丈夫かこいつ

:まあAだしなんとかするでしょ

:久しぶりってだけで初見って訳じゃないしな

:結構ブランク残ってそうだが


「あははっ、どうだろうね」


;どうだろうねって…ミクちゃんからしたら絶対助けて案件なんですがそれは

:まあ良くも悪くも他人ではあるから…

:Aからしたら自他ともにどうでもいい命ではあるし

:おっここかぁ次のボス部屋は

:でっかい年輪が闘技場みてぇにあるのね

:四方囲ってる木の皮みてぇな壁は燃えやすいから注意だぞ(四敗)

:今回は最初からボスが鎮座しているタイプなのね

:一敗で懲りろ定期

:中央にいる黒い丸い人型のが階層ボスか

:黒いデッサン人形みてぇだな


「……やっばい」


:おい動き出してるぞあのバカデカゴーレム!!

:うわあ手の指が細かい触手になってるぅ!!

:指一本一本がイソギンチャクみてぇで気持ち悪っ!!

:なんでこいつ鞄なんか背負ってるんだ?魔物のくせに

:運び手と呼ばれる魔物ですね。触手のように伸びてるのは蔓の一種で、内部から排出される樹液でべっとりとしてます。あれに捉えられて死体も回収されず行方不明になる冒険者も多いとか。あまり納品されないので触手と樹液の方納品してくれたら個人的に嬉しく思います\10,000魔獣素材研究所

:たまにこのダンジョンに関する手記や風俗をうかがい知れる情報の描かれた紙を落とすことあるから、それ見逃さないようにしてほしい\10,000迷宮考察研究所


「そうしたいんだけどねえ……戦い方覚えてない」


:えぇ…

:うっそだろお前

:そんなことあるぅ?

:ブランクがあるとしか思えん


「しょうがないでしょここ最近三層に籠ってたんだから!! っとと」


:とか言いながらホーミングミサイルめいた触手攻撃を普通に避けるのがAである。

:初見でも撃破率7割だからなこいつなんなの

:よくあの動きにカメラ追いつけてるなー

:Aの動きモデルにゲーム作ったら目が追い付かなくなりそう

:納品用アイテムポーチに憑いてる撮影霊?のお陰で配信出来てるらしいけど、その裏事情知らなかったら壊さないか心配になるわな

:なんで横からの触手攻撃躱すんだよ!?

:幽霊さんいつもおつかれさまです


「……後々の為に慣れておくかなー」


:本当軽い足取りで避けるよね。漫画の連続殴りみたいな触手攻撃を

:未来視できても避けられる気がしないわ

:霊王の大腿骨を背中側に持つことで当たり判定減らしてるからこうも避けられる

:素手でも無理だわ


「飽きた」


:あっ武器ナイフに持ち替えた

:ばっさばっさ斬っていくやん枝を

:避けるのだけならかすり傷大量に負うだろうが出来ると思うが…なんで切り払うことできるん?

:絶対チートスキル持ってるってこいつ!!

:なんか…前身してね…?

:切って進むとかアニメじゃねえんだよ

:おい待て普通踏み込みに行くか!?

:鷹の眼のみでこれやってます

:すげぇあっという間に短く切りそろえやがった!

:後はこれで叩けばいいってだけか

:普通うろ覚え大部分忘れでこんなんできんよ


「あとなんの攻撃してきたっけ」


:霊王の大腿骨で殴りながら考えることちゃう

:一方的に殴りながら「なんの攻撃してきたっけ」って言われた時の絶望感とプライドへの傷つき半端ないだろうな

:まあ所詮は魔物だから…

:運び手が距離離しても関係なく距離詰めるよねA

:未来見えてんかって動きだけど本当にスキル鷹の眼のみなんかこいつ

:未来視なら発動のタイムラグあるぞ


「うん、慣れてきたね。この調子で一気に撃破したいところ」


:階層ボス相手にソロですっげぇ舐めた口きいてる・・・

:もう運び手君のプライドはボロボロですよ!!

:なんでこの人こんな戦えるんだソロで

:階層ボスの面目丸つぶれだな

:魔物のプライドなんていくら折ってもいいもんですからね

:待って確かこいつってある程度攻撃受けたら体に亀裂が入って


「うおっとぉ!?」


:棘ぇ!!

:すっげぇ殺意しか感じない棘!びょーんって生えて来た!!

:すっげぇ全身棘だらけ…ヤマアラシかな?

:サボテン突っ込ませた後の人間ってこんな感じだよな

:なんで即座に反応して避けて棘ゴーレム蹴って距離を取るなんて正解の選択肢取れるんだこいつ

:すっげぇ密集度に長さの棘なんだけどこれどうやれば勝てるの!?

:定石としては魔法や弓による中~遠距離攻撃で、ダメージが通りやすくなってるのでパーティーなら戦いやすい相手なんだけど……

:さらっとサボテンに突っ込ませたって言ってるのなんなの怖い

:Aってなんか直接攻撃できる手段持ってたっけ?


「あー……そうだったそうだった。そういやこいつ対策の為のこれだったな」


:中~遠距離と近~中距離は全然違うからね?

:まさかそのワイヤーナイフ、こいつ対策だったの!?それが!?

:そのワイヤーの長さだと棘の当たるスレスレのところまで近づかないと当たらなくない?


「つまり当たるって事じゃん?」


:つまりじゃねえんよ

:もうちょい余裕持たせろや長さに


「よっ、ほっ……自切しながらの攻撃ってことは、もうちょいだね」


:おいすごい勢いで回転してるんだが!?

:飛んできた!棘!!飛んできたよ!?

:全身の内側から生やした棘を遠心力を利用して射出する。運び手が追い詰められた際の最終手段ですね。二時間ほど攻撃させるだけでも倒せる状態ではありますが、まあ大体その前に避けきれず死にます

:Aなら耐久できそうなのが怖いところ


「いやあ流石にちょっと疲れるからねえ……」


:「流石に」「ちょっと疲れる」

:そんな余裕な口聞ける相手やないです。。。


「なる早で殺させてもらうよー」


:なんでこの人すいすい避けて近づけるんだ!?

:うおっ近すぎ…当たる当たるって!!

:ねえあれどう見ても手掠ってない?指掠ってない!?

;ギリギリを超えたギリギリの距離でナイフ投げて抜いてを繰り返してやがる

:なんでこの人こんな距離まで接近できんですかこわっ

:すげぇな血がまるでスプリンクラーだ


「後はもう作業で殺せるねー」


:なんかもう一方的で敵が可哀想に見えてきた

:実際可哀想

:ダンジョン製作者からしたらふざけんなって存在だな本当、Aって、、、

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