第2話 選択

夜明け。

空は灰色で、世界は静まり返っていた。

死んだ街の中、しゅんとももは歩き続ける。


「昨日の女……まだ許してないからね」

ももは小さくつぶやいた。

しゅんは黙ったままリュックを背負い直す。


俺が間違えたのか?

いや、あの時はあれしかなかった——はずだ。


後ろを振り返れば、あの時助けられなかったメガネ男がゾンビに食われている姿が見える気がした。

頭を振って、幻影を追い払う。



人間との遭遇


昼すぎ。

二人は廃墟となったコンビニを見つける。

「食料、残ってるかな……」

ももが中をのぞくと、棚にはわずかな缶詰と水。


その瞬間、背後から声。


「おい、何してやがる」


振り返ると、数人の男たち。

バット、鉄パイプ、チェーン。

ガラの悪い連中が、にやにやと笑っていた。


「そいつは俺らのモンだ。置いてけ」


ももがしゅんの袖を握る。

しゅんは前に出た。


「……嫌だって言ったら?」


男たちは笑う。

「いい度胸だな、ニート筋肉野郎!」


次の瞬間、しゅんは動いていた。


バットがうなる前に、拳が男の顔面にめり込む。

もう一人がチェーンを振り上げるが、しゅんはそれを腕で受け止め、そのまま投げ飛ばした。


「あれ……俺、無敵かも」


しゅんの心臓は早鐘のように鳴る。

恐怖より、アドレナリン。

戦いの快感が体を満たしていく。


数分後、男たちは地面に転がり、逃げ去った。



「……兄ちゃん、今の……人、だよ?」

ももが震えながら言う。


しゅんは息を整え、拳を見つめた。

「俺らがやられてたら、死んでた」


ももは黙り込む。

少しの間、兄を見つめ、それから小さくうなずいた。



もし男性を助けていたら(別ルート)


—どこか別の路地裏で。

ゾンビの山を蹴散らし、メガネの男が笑っている。


「やっぱ最高だよな、この状況!ゲームと同じだ!」

男は銃を分解し、慣れた手つきで弾を込める。


(もしこっちを選んでいたら、今頃しゅんたちは最強の仲間を手に入れていただろう——)



夜の焚き火


ももが少しだけ笑った。

「兄ちゃん、ほんと変わったね」


「そうか?」

しゅんは焚き火を見つめながら答える。


「前はゲームして寝てるだけだったのに、今は……ちょっと頼りになる」

ももは缶詰を分けてくれる。


二人の距離が、少しだけ縮まった夜だった。



次の日。

遠くのビルの屋上に、避難所の旗が見えた。


「やっと見つけた……!」


だがそのビルは、ゾンビの群れに囲まれていた。

そしてビルの入り口付近で、また悲鳴が聞こえる——


「選べ。次は誰を助ける?」


しゅんは息を吐き、バットを握りしめた。

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